物価高が続く中で家計管理に頭を悩ませる方もいるかもしれません。筆者はFPですが、これまでの家計相談の中では、キャッシングやカードローンを利用する方から「少額だから大丈夫と思っていたが返済が苦しい」というお話を伺うこともあります。
2026年7月7日、本日総務省で発表された「家計調査(二人以上の世帯)2026年5月分」によると、1世帯当たりの実収入は53万4893円(実質0.9%増)と増加した一方で、消費支出は32万345円(名目1.3%増・実質0.4%減)となり、実質的な消費は減少しています。名目の支出は増えているものの実質的な消費量は抑えられており、各家庭で支出の優先順位づけが求められる状況です。
今回は、2026年7月3日に金融庁から公表された「貸金業利用者に関する調査・研究」の結果をもとに、借入れの実態や多重債務を防ぐための注意点について解説します。
1. 【18〜70歳代の借入れ実態】約半数が「生活費の補填」に利用。
金融庁「貸金業利用者に関する調査・研究」は貸金業利用者の実態や意識を把握し今後の施策に活用するためのインターネット調査であり、18~70歳代の男女が対象となっています。本調査からは、日々の生活費の補填など、身近な理由から借入れを行う利用者の実態や、返済が長期化する状況がより詳細に浮き彫りになっています。
消費者金融とクレジットカード会社のキャッシング・カードローンで、主に以下のような目的が挙げられています。
《消費者金融の利用目的》
- 生活費(光熱水費を含む)の支払いのため(53.7%)
- クレジットカード、ネットショッピングにおける後払い決済等の利用代金を支払うため(42.1%)
- 住居費(家賃や住宅ローン)の支払いのため(35.9%)
《クレジットカード会社のキャッシング・カードローンの利用目的》
- 生活費(光熱水費を含む)の支払いのため(46.2%)
- クレジットカード、ネットショッピングにおける後払い決済等の利用代金を支払うため(46.2%)
- 趣味や娯楽(レジャーや課金等)への支出のため(29.1%)
主な利用目的は、日々の生活を維持するための資金補填が上位を占めています。
2. 【18〜70歳代の借入れ実態】1回の平均借入額「1万円以上5万円未満」が最多
調査では、どの借入先においても1回の平均借入額は「1万円以上5万円未満」が最多です。
2.1 借入残高「50万円以上」が4割超
しかし、現在の借入残高を見ると「50万円以上」を抱える人が4割を超えており、少額利用の積み重ねが残高を押し上げている様子がうかがえます。また、返済期間が「1年以上」に及ぶケースが8割を超えており、返済の長期化が課題となっています。
3. 【FPが解説】借入れ前に確認したい毎月の返済額と契約内容
多重債務とは、借金返済のために他社から借り入れる行為を繰り返し、利息によって借金が雪だるま式に増え続け、個人での解決が困難となり、専門家を介した債務整理や裁判所による自己破産手続きが必要になることが多い状態を指します。多重債務等を避けるためには、以下の点に注意が必要です。
- 本当に借入れが必要か
- 無理なく確実な返済が可能か
- 契約内容を理解できているか
まずは家計を見直し、本当に借入れ以外の方法がないかを検討することが大切です。どうしても必要な場合は、借りる前に必ず毎月の返済額をシミュレーションし、無理のない計画を立てましょう。また、契約前には金利や手数料を必ず確認し、契約書を大切に保管しましょう。
3.1 新たな借入れを自ら制限。生活を守るための「貸付自粛制度」とは
浪費やギャンブルだけでなく、生活費の補填などでついつい借り過ぎてしまい、生活に支障が生じるおそれがある場合、日本貸金業協会等へ申告することで信用情報機関に自粛情報を登録し、新たな借入れを制限できる制度があります。申告日から3か月間は撤回できないため、冷静に生活を立て直す手段として活用されています。
3.2 【相談件数2.4万件超】リボ払いで気づかぬうちに借金が膨らむ若年層の事例と専門機関への相談窓口
国民生活センターに寄せられた多重債務に関する相談件数は、2024年度実績で2万4538件に上っており、依然として高い水準で推移しています。
リボ払いの仕組みを十分に理解しないまま利用額が膨らんでしまった若年層の事例なども目立っており、契約内容の理解と早期の相談が重要です。
4. まとめにかえて
今回は、金融庁の調査結果をもとに、少額の借入れから多重債務に陥るリスクについて解説しました。1回1万円から5万円という少額であっても、補填として繰り返すうちに残高が膨らんでしまう現実があります。
もし現在、返済が苦しく「どこでもいいから借りたい」と焦る気持ちがある場合でも、無登録業者(いわゆるヤミ金融)を利用することは大変危険ですので、どんなに焦っていても利用は避けてください。また、借金の悩みは一人で抱え込まず、財務局の窓口、消費生活センター、弁護士会などの専門機関へ早めに相談することが、平穏な日常を取り戻すための確実な第一歩です。ご不安な方は一人で悩まず、まずは専門家へ連絡をとることをおすすめします。
本記事は2026年7月現在の情報に基づいています。個別の借金問題については、最寄りの法テラスや弁護士会などへご相談ください。
参考資料
- 総務省統計局「家計調査(二人以上の世帯)2026年(令和8年)5月分 (2026年7月7日公表)」
- 金融庁「「貸金業利用者に関する調査・研究」調査結果の公表について」
- 金融庁「貸金業利用者に関する調査・研究」
- 一般社団法人全国銀行協会「貸付自粛制度のご案内リーフレット」
- 独立行政法人国民生活センター「多重債務」
- 独立行政法人国民生活センター「PIO-NET(全国消費生活情報ネットワークシステム)」
村岸 理美