7. 監修者コメント:「20万円」という基準を、ご自身の家計に当てはめて考える
老後の年金に関する記事を読んでいると「月20万円」という数字が一つの安心ラインのように語られがちです。ただ、実際に必要な生活費は、住居費(持ち家か賃貸か、ローンが残っているか)や医療・介護費の見込みによって世帯ごとにまったく違います。20万円という基準は分かりやすい目安ではありますが、ご自身の家計にそのまま当てはめてよい数字ではない、という点はまず押さえておいていただきたいです。
繰下げ受給についても、「増額率の大きさ」に注目する方が多いですが、重要だったのは、繰り下げている間の生活費をどう確保するか、そして繰下げ中に本人が亡くなった場合、その期間の年金は原則として遡って受け取れない(未支給分の扱いになる)という点への理解です。増額率だけでなく、ご自身や配偶者の健康状態、貯蓄の余力を踏まえたうえで判断することをおすすめします。
厚生年金で月20万円以上受け取れる人が18.8%にとどまるというデータは、裏を返せば「多くの方が公的年金だけでは目標額に届かない」という現実を示しています。現役時代のうちからiDeCoや新NISAなどで年金以外の資産形成を進めておくこと、そして退職が近づいたら「ねんきん定期便」で自分の見込額を具体的な数字として把握しておくことが、老後の家計不安を減らす一番の近道だと感じています。
8. 【シミュレーション】老後資金1000万円は何年で尽きる?
総務省統計局「家計調査報告 家計収支編 2025年(令和7年)平均結果の概要」によると、65歳以上の単身無職世帯における平均的な家計収支は、実収入が月額13万1456円であるのに対し、消費支出は月額14万8445円となっており、毎月の差額(赤字)は約2万9980円です。
この毎月の赤字額を貯蓄から取り崩して補うと仮定すると、1000万円の貯蓄は次のように計算できます。
- 毎月の取り崩し額:約3万円(実際の赤字額は2万9980円)
- 1000万円÷3万円=約333カ月
- 333カ月÷12=約27年9カ月
単純計算では、1000万円の貯蓄があれば、65歳から取り崩しを始めた場合、92歳前後までは資金が持つ計算になります。平均寿命を踏まえると、多くの方にとって一定の安心材料にはなりそうです。
ただし、この試算はあくまで平均的な支出額をもとにした単純計算であり、実際にはインフレによる物価上昇、医療費や介護費の増加、住宅の修繕費といった突発的な支出は考慮されていません。また、貯蓄を取り崩すだけでなく、一部を運用に回すことで資産の目減りするペースを緩やかにできる可能性もあります。「1000万円あれば何年もつか」という数字だけでなく、ご自身の毎月の赤字額がいくらになりそうかを、家計簿やねんきん定期便をもとに一度計算してみることをおすすめします。
9. 自分の年金受給見込みを把握しよう
本記事では、国民年金と厚生年金の仕組みや平均年金月額、厚生年金の受給額分布について解説しました。
厚生年金は加入期間や現役時代の収入によって受給額が変わるため、受給者ごとの差も大きくなります。
厚生年金の平均年金月額は15万289円ですが、この金額をすべての受給者が受け取っているわけではなく、受給額分布を見ると、月額20万円以上の人は18.8%で、約8割は20万円未満です。
平均額だけで老後の収入を判断せず、ねんきん定期便などで自分の受給見込みを確認し、想定する生活費と照らし合わせて準備を進めていきましょう。
参考資料
- 厚生労働省年金局「令和6年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」
- 日本年金機構「公的年金制度の種類と加入する制度」
- 日本年金機構「国民年金保険料」
- 日本年金機構「短時間労働者に対する健康保険・厚生年金保険の適用の拡大」
- 日本年金機構「厚生年金保険の保険料」
- 厚生労働省「令和8年度の年金額改定についてお知らせします」
- 日本年金機構「年金の繰下げ受給」
- LIMO「【2026年最新・年金早見表】厚生年金・国民年金はいくらもらえる?平均受給額一覧と手取りのリアル!社会保険料・税金が引かれる「天引き」まで徹底解説」
- LIMO「【国民年金+厚生年金】月15万円(年180万円)以上もらう人は何%?平均受給額を一覧で確認!私的年金の見直しで押さえておきたいポイント 日本の公的年金制度の仕組みをおさらい!ライフイベント別の年金手続き(転職・退職・住所変更・死亡)も」
橋本 優理
