令和8年8月7日、厚生労働省年金局は「厚生年金保険・国民年金の令和7年度収支決算の概要」を公表しました。年金積立金は時価ベースで前年度より42兆5136億円増加し、過去最高となる302兆5893億円に達しています。
年金財政の運用状況が良好であることが伝えられる一方、実際に自分がいくら年金を受け取れるのかは、なかなかイメージしにくいという方も多いのではないでしょうか
日本の公的年金は、すべての人が加入する国民年金を1階部分とし、会社員や公務員などが加入する厚生年金を2階部分とする仕組みです。
ただし、実際の受給額は加入する制度や保険料の納付状況、厚生年金への加入期間、現役時代の収入などによって異なります。
また、平均年金月額だけでは、受給者一人ひとりの実態を十分に把握できるとは限りません。
本記事では、国民年金と厚生年金の基本を整理したうえで、それぞれの平均年金月額や平均額の見方、厚生年金の受給額分布を確認していきます。
なお、公的年金の仕組みや平均受給額、受給額分布に関する詳しい解説は下記の記事より一部を引用・参照しています。本文中の引用部分は引用ブロックで示しています。
1. この記事を読むとわかる3つのポイント
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公的年金は「国民年金+厚生年金」の2階建て構造で、平均受給額には男女で差がある -
厚生年金で月額20万円以上を受け取っている人は全体の18.8%にとどまる -
繰下げ受給を活用すると、月20万円未満の人でも20万円台に届くケースがある
2. 日本の公的年金は「国民年金と厚生年金」の2階建て
まずは、日本の公的年金制度の基本的な仕組みを確認しておきましょう。日本の公的年金制度は、すべての人が加入する「国民年金(基礎年金)」を土台とし、会社員や公務員などが「厚生年金」に加入する2階建ての仕組みです。
2.1 1階部分:国民年金(基礎年金)の基本をおさらい
- 誰が加入する?:原則として「国内在住の20歳以上から60歳未満」全員
- 保険料はいくら?:全員一律(2026年度月額 1万7920円)
- 老後の受給額はいくら?:全期間(480カ月)納付すれば満額(2026年度月額 7万608円)
- 被保険者区分は?:第1号~第3号の3区分
国民年金の被保険者区分
- 第1号被保険者:農業者・自営業者・学生・無職の人など
- 第2号被保険者:厚生年金の加入者
- 第3号被保険者:第2号被保険者に扶養されている配偶者
2.2 2階部分:厚生年金の基本をおさらい
- 誰が加入する?:会社員や公務員、またパート・アルバイトで特定適用事業所で働き一定要件を満たした方が、国民年金に上乗せで加入
- 保険料はいくら?:収入に応じて決まり、給与からの天引きで納付(保険料額は標準報酬月額(上限65万円)、標準賞与額(上限150万円)に保険料率をかけて計算)
- 老後の受給額はいくら?:加入期間や納めた保険料により個人差あり
- 被保険者区分は?:第1号~第4号の4区分
厚生年金の被保険者区分
- 第1号:第2号~第4号以外の、民間の事業所に使用される人
- 第2号:国家公務員共済組合の組合員
- 第3号:地方公務員共済組合の組合員
- 第4号:私立学校教職員共済制度の加入者
3. 公的年金の平均受給額はどれくらい?
厚生労働省年金局「令和6年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」をもとに、公的年金(厚生年金・国民年金)の平均年金月額と受給状況を見ていきましょう。
3.1 厚生年金の平均年金月額はいくら?
- 男女全体:15万289円
- 男性:16万9967円
- 女性:11万1413円
※厚生年金の月額には国民年金部分が含まれています。また、ここでは会社員など民間企業に勤務していた人が受け取る「厚生年金保険(第1号)」の年金額を掲載しています。
3.2 国民年金の平均年金月額はいくら?
- 男女全体:5万9310円
- 男性:6万1595円
- 女性:5万7582円
国民年金は保険料が一律であるため、受給額にも大きな差が生じにくく、平均月額は男性が6万円台、女性が5万円台となっています。
2026年度の老齢基礎年金の満額は月額7万608円であり、国民年金だけで年間240万円(月額20万円)を超える年金収入を得ることは現実的ではありません。
一方、厚生年金は国民年金に上乗せして支給される制度で、加入期間や現役時代の収入によって受給額が決まります。
そのため、人によって受け取れる年金額には大きな差があります。
平均年金月額は男女全体で15万289円ですが、男性は16万9967円、女性は11万1413円と男女差もみられます。
こうした平均額を踏まえると、公的年金だけで老後の生活費をまかなえるかどうかは受給額によって大きく異なります。
月15万円以上の年金を受け取る人がどのくらいいるかについてはこちらの記事でくわしく解説しています。あわせてご参考ください。
【国民年金+厚生年金】月15万円(年180万円)以上もらう人は何%?平均受給額を一覧で確認!私的年金の見直しで押さえておきたいポイント 日本の公的年金制度の仕組みをおさらい!ライフイベント別の年金手続き(転職・退職・住所変更・死亡)も
4. 平均年金額と受給額分布は「見方」が違う
公的年金に関するニュースでは、「平均年金月額」が注目されることが多い一方で、実際の受給状況を知るためには「受給額分布」にも目を向けることが大切です。
平均年金月額は、受給者全体の金額をもとに算出した代表的な数値ですが、一人ひとりの受給額が平均付近に集まっていることを意味するわけではありません。
たとえば、厚生年金の平均年金月額は15万289円ですが、実際には加入期間や現役時代の収入などによって受給額に大きな差があります。
そのため、平均額だけでは受給者全体の実態を把握することは難しいでしょう。
そこで参考になるのが受給額分布です。
受給額分布を見ることで、「月額20万円以上を受け取っている人はどのくらいいるのか」「10万円未満の人はどのくらいいるのか」といった受給者全体の傾向を把握できます。
平均年金月額と受給額分布は、それぞれ役割の異なるデータです。
公的年金の実態を理解するためには、平均額だけでなく、受給額分布もあわせて確認することが重要といえるでしょう。
5. 厚生年金「月額20万円以上」の人はどれくらい?
ここからは、厚生年金(国民年金部分を含む)の受給額分布を確認していきます。
5.1 厚生年金の受給額ごとの人数
- 1万円未満:4万3399人
- 1万円以上~2万円未満:1万4137人
- 2万円以上~3万円未満:3万5397人
- 3万円以上~4万円未満:6万8210人
- 4万円以上~5万円未満:7万6692人
- 5万円以上~6万円未満:10万8447人
- 6万円以上~7万円未満:31万5106人
- 7万円以上~8万円未満:57万8950人
- 8万円以上~9万円未満:80万2179人
- 9万円以上~10万円未満:101万1457人
- 10万円以上~11万円未満:111万2828人
- 11万円以上~12万円未満:107万1485人
- 12万円以上~13万円未満:97万9155人
- 13万円以上~14万円未満:92万3506人
- 14万円以上~15万円未満:92万9264人
- 15万円以上~16万円未満:96万5035人
- 16万円以上~17万円未満:100万1322人
- 17万円以上~18万円未満:103万1951人
- 18万円以上~19万円未満:102万6888人
- 19万円以上~20万円未満:96万2615人
- 20万円以上~21万円未満:85万3591人
- 21万円以上~22万円未満:70万4633人
- 22万円以上~23万円未満:52万3958人
- 23万円以上~24万円未満:35万4人
- 24万円以上~25万円未満:23万211人
- 25万円以上~26万円未満:15万796人
- 26万円以上~27万円未満:9万4667人
- 27万円以上~28万円未満:5万5083人
- 28万円以上~29万円未満:3万289人
- 29万円以上~30万円未満:1万5158人
- 30万円以上~:1万9283人
厚生年金(国民年金部分を含む)の受給者のうち、年金月額が20万円以上となっている人は18.8%です。
一方で、約8割の人は月額20万円未満となっており、公的年金だけで老後の生活費をまかなうことが難しいケースも少なくありません。
老後の生活設計では、公的年金に加えて、自助努力による資産形成も重要になるでしょう。
なお、この割合は厚生年金受給者のみを対象としたものです。
国民年金のみを受給している人まで含めると、「月額20万円以上」の割合はさらに低くなると考えられます。
6. 【シミュレーション】繰下げ受給で「月20万円」に届くケースを試算
分布データを見ると、17万円台から19万円台の受給者が最も多いボリュームゾーンとなっています。ここでは、月額16万円の厚生年金を受け取る人を例に、繰下げ受給によって受給額が20万円を超えるまでにどのくらいの期間が必要かを試算してみます。
繰下げ受給では、1カ月遅らせるごとに年金額が0.7%増額されます。月額16万円を基準とした場合、受給額が20万円を超えるために必要な増額率は25%(20万円÷16万円)です。
- 必要な増額率:約25.0%(25.0%÷0.7%=約36カ月分)
- 36カ月(3年)繰り下げた場合:68歳0カ月から受給開始、増額率25.2%
- 繰下げ後の受給額:月額約20万320円(16万円×1.252)
このように、月額16万円程度の方であれば、65歳から68歳まで3年間繰り下げるだけで、月20万円台に届く計算になります。
ただし、繰り下げている3年間は年金を受け取れないため、その間の生活費を貯蓄や就労収入でどう確保するかを事前に考えておく必要があります。また、加給年金の対象になっている場合は、繰下げ中はその分も受け取れなくなる点にも注意しましょう。




