食品の値上げが続いています。帝国データバンクの「食品主要195社価格改定動向調査」によると、2026年は1〜10月の判明分だけで累計9361品目の値上げが予定されています。物価の上昇は、年金が収入の中心となる世帯の家計にも影響します。

とくにひとりで暮らす70歳代にとっては、限られた収入のなかで貯蓄をどう守るかが気になるところ。まずは同世代がどれくらい貯蓄を持っているのかをみていきましょう。

今回は、おひとりさま70歳代の平均貯蓄額と中央値を確認したうえで、高齢者世帯で「生活が苦しい」と感じている割合についてもみていきます。

1. 【70歳代おひとりさま】平均貯蓄額・中央値はいくら?

金融経済教育推進機構(J-FLEC)が2025年に公表した「家計の金融行動に関する世論調査(2025年)」によると、おひとりさま70歳代の金融資産保有額は次のとおりです。

※金融資産保有額とは、預貯金だけでなく株式、投資信託、生命保険などを含んだ金額です。ただし、日常的に使う普通預金の残高は含まれていません。

1.1 70歳代(単身世帯)の貯蓄額(平均・中央値)

おひとりさま70歳代の貯蓄額1/1

おひとりさま70歳代の貯蓄額

出所:J-FLEC(金融経済教育推進機構)「家計の金融行動に関する世論調査(2025年)」をもとにLIMO編集部作成

  • 70歳代単身世帯:平均1489万円/中央値500万円

平均は1489万円ですが、貯蓄額を低い順に並べたときの真ん中にあたる中央値は500万円。平均は一部の貯蓄が多い世帯に引き上げられるため、より実感に近いのは中央値のほうといえます。

金融資産を持たない「貯蓄ゼロ」の世帯が20.4%、つまり約5世帯に1世帯。一方で「2000万円以上」ある世帯も25.4%(2000〜3000万円が7.9%、3000万円以上が17.5%)と、約4世帯に1世帯にのぼります。世帯ごとに金額の幅が広く、二極化のようすがうかがえます。

2. 高齢者世帯で「生活が苦しい」はどれくらい?

物価高が続くなか、実際に家計をどう感じているのでしょうか。厚生労働省「2024(令和6)年 国民生活基礎調査の概況」によると、生活意識が「苦しい」(「大変苦しい」と「やや苦しい」の合計)と答えた割合は次のとおりです。

  • 全世帯:58.9%(大変苦しい28.0%+やや苦しい30.9%)
  • 高齢者世帯:55.8%
  • 児童のいる世帯:64.3%

高齢者世帯(65歳以上の人のみで構成される世帯)では、55.8%が生活を「苦しい」と感じています。全世帯の58.9%よりはやや低いものの、半数を超える水準です。全世帯でみると、生活が「苦しい」と感じる割合は2023年の59.6%から2024年は58.9%とほぼ横ばいで、高い状態が続いています。

数字を不安に受け止めすぎる必要はありませんが、多くの世帯が家計に余裕を感じにくい状況であることはうかがえます。だからこそ、自分の家計を客観的に把握しておくことが大切です。

3. 物価高のなか、家計とどう向き合う?

貯蓄と生活意識のデータをふまえ、おひとりさま70歳代がこれからできることを2つの視点からみていきましょう。

3.1 「手取り」で家計を把握する

年金は、額面から介護保険料や税などが差し引かれて振り込まれます。家計を考えるときは、額面ではなく実際に手元に入る「手取り」を基準にすると、毎月使えるお金が正確につかめます。年金振込通知書などで手取りを確認し、毎月の支出と見比べてみましょう。

3.2 固定費と必要な支出にメリハリをつける

物価高のなかでは、すべてを切り詰めるより、固定費を点検して効果の大きいところから見直すのが現実的です。一方で、医療や食事など健康に関わる支出は無理に削らないことも大切。貯蓄に余裕がある場合も、必要なところには使いながら、メリハリのある家計を心がけたいところです。

4. まとめにかえて

今回みてきたとおり、おひとりさま70歳代の貯蓄は平均1489万円・中央値500万円。「貯蓄ゼロ」が約2割、「2000万円以上」が約25%と、世帯ごとに差が大きい状況です。高齢者世帯では55.8%が生活を「苦しい」と感じており、物価高のなかで家計の余裕を感じにくい世帯が少なくありません。

手取りの把握と固定費の見直し――まずはできることから手をつけたいですね。

参考資料

中本 智恵