2026年6月に内閣府の最新の「高齢社会白書」が公表され、シニア世代の資産状況について明らかになりました。現在、国内の金融資産の約6割は60歳以上の世代が保有する状況です。また、贈与税の納税額は前年比28.0%急増し 、相続税の課税割合も10.4%と過去最高を更新しました。
今回は、一般的な家庭でも地続きとなっている資産移転の現状と、財産を損失なく引き継ぐための合理的な選択肢について解説します。
1. 【資産4000万超が2割】シニア世代の貯蓄「中央値1658万円」全世帯の1.4倍!
日本の個人資産の多くは、現在シニア世代を中心に形成されています。内閣府の「高齢社会白書」や総務省の「家計調査」を基にした公的統計を見ると、世帯主が65歳以上の二人以上世帯における貯蓄現在高の中央値は1658万円にのぼり、全世帯の中央値(1189万円)の約1.4倍です。
1.1 国内の貯蓄「約6割」を保有する60歳以上世帯
さらに、4000万円以上の貯蓄を持つ世帯は20.0%を占めており、全世帯の13.9%と比べても高い水準にあります。これらは、少子高齢化という社会構造の変化に加え、現役時代からの長期的な資産形成の結果が数字として表れているものと言えます。
この資産をいかに目減りさせることなく次世代へ引き継ぐか。国税庁が発表した最新データからは、課税ルールの改正を背景に、多くの世帯が具体的な資産移転に動き出している実態が見えてきます。
2. 【贈与税額28.0%急増】110万円の基礎控除をどう活かす?税制改正で変わる「生前贈与」
国税庁が発表した「令和7年分 確定申告状況」によると、贈与税の申告人員は47万人(対前年比1.2%減)と微減したものの、申告納税額は5038億円と前年比28.0%も急増しました。
特に利用者の多い「暦年課税(年間110万円の基礎控除を利用する一般的な贈与)」では、1人当たりの納税額が前年の100万円から133万円へと大幅に上昇しています。生前贈与の加算期間(持ち戻し期間)が3年から7年に延長されるなどのルール改正を受け、早期にまとまった額を次世代へ移転させようとする世帯の合理的な行動変容が伺えます。
また、子や孫への「住宅取得等資金の非課税」の適用額も3779億円(前年比19.1%増)と大きく伸びており 、高齢層の資金が次世代の住宅取得を支える形で流動化している実態が統計からも実証されています。
3. 【10人に1人が相続税の対象】過去最高の相続税「総額3兆2446億円」の時代
一方で、生前に移転しなかった資産にかかる「相続税」の税負担も確実に高くなっています。国税庁「令和6年分 相続税の申告事績の概要」によると、亡くなった人のうち相続税の課税対象となった割合(課税割合)は過去最高の10.4%に達しました。
これは「10人に1人以上が相続税の対象となる時代」を迎えたことを意味し、税額の総額も3兆2446億円と過去最高を更新しています。
3.1 相続財産の⾦額の構成⽐の推移
相続財産の構成比を詳しく見ると、現金・預貯金等が34.9%、土地が30.2%を占めています。都市部に一戸建ての不動産を所有している、あるいは一定の預貯金を残しているという、日本の一般的な会社員家庭であっても、現役世代にとって相続税の負担は地続きの課題となっています。
4. まとめにかえて
今回は、高齢社会白書や国税庁の一次資料を基に、日本の相続・贈与におけるマクロな最新動向について解説しました。相続税の課税割合が過去最高の10.4%に達する中 、実家のお金の話を親に切り出すべきか悩む方も少なくありません。
しかし、金融経済教育推進機構(J-FLEC)が公表した「家計の金融行動に関する世論調査(2025年)」によると、70歳代・二人以上世帯の52.6%が「子供に財産を残したい」と考えていることが分かっています。その内訳を見ると、老後の世話や家業の有無に関わらず残したいという積極的な意向が34.2%を占める一方で、「子どもはいるが人生を楽しみたいので使い切りたい」という世帯も23.2%存在します。
このように親世代の考え方も多様化しているからこそ、事前の確認を怠ったために意図せぬ税負担という「損失」を被るリスクは避けたいところですね。
税制が変化した今、生前贈与を賢く活用すべきか、将来の相続に備えるべきか、まずは実家のご両親の意向を一度フラットに確認してみてはいかがでしょうか。「最近ニュースでよく見るから、うちも将来の選択肢を一度整理してみない?」という客観的な視点での対話が、お互いの希望を叶え、大切な資産を最も効率的に次世代へ繋ぐ確実な一歩となります。




