7月に入り、いよいよ夏本番が近づいてきました。
冷房などの光熱費が上がりやすいこの時期は、日々の家計のやりくりを改めて見直すタイミングでもあります。特に、6月に改定された新しい年金を受け取り、これからのリアルな収支バランスを確認しているシニア世代の方も多いのではないでしょうか。
長い老後の家計を守るアプローチは、大きく分けて2つしかありません。「入ってくるお金を増やすこと」と「出ていくお金を削ること」です。
収入面を考える際、多くの方が基本の年金と貯蓄にのみ注目しがちですが、国や雇用保険にはシニアの暮らしを金銭的にサポートする給付制度が数多く用意されています。
しかし、これらは受給要件を満たしていても「自ら申請しない限り1円も支給されない」というルールがあります。
本記事では、60歳以上のシニアが見落としがちな5つの公的給付の仕組みを整理します。
さらに、もう一つのアプローチである「支出を2〜3%削る」ための確実な節約の発想を紹介。もらう権利を確保しつつ、出ていくお金を賢く抑える両面から、家計防衛のヒントを解説します。
1. 60歳・65歳以上が対象になりやすい「公的給付5制度」
シニア世代が使える代表的な給付を、ひとつずつ見ていきます。要件や窓口はそれぞれ異なるため、自分が該当しそうな制度からチェックしてみてください。
1.1 再就職手当
再就職手当とは、雇用保険の基本手当の受給資格がある人が、給付日数を一定以上残して安定した職業に就いたときに受け取れる手当です。
支給額は「基本手当日額×支給残日数×支給率」で計算され、支給残日数が所定給付日数の3分の2以上なら支給率70%、3分の1以上なら60%です。60歳以上65歳未満で基本手当の受給資格がある人も、条件を満たせば対象になります。
早く就職が決まるほど、支給額が増える仕組みです。さらに、就労によって得られる収入も発生するため、早めの就職は「給付期間を消化しきる」ケースよりも経済的に有利です。
1.2 高年齢求職者給付金
高年齢求職者給付金とは、65歳以上の高年齢被保険者が離職し、失業の状態にあるときに受け取れる一時金です。受給には、離職前1年間に被保険者期間が通算6カ月以上あることが前提です。
そのうえで、被保険者であった期間が1年以上なら基本手当日額に相当する額の50日分、6カ月以上1年未満なら30日分が一括で支給されます。
受給には、ハローワークで求職申し込みと受給手続きを行わなければなりません。なお、この手当は年金と併給できます。
1.3 年金生活者支援給付金
所得の低い年金受給者に、年金へ上乗せして支給される給付金です。65歳以上で世帯全員が住民税非課税であることなどが要件になります。
2026年度の給付基準額は月額5620円で、新たに支給対象となる人には請求書(はがき型)が届くため、届いた場合は忘れずに提出してください。すでに受給している人は、原則として新たな手続きは不要です。
1.4 高額療養費制度
高額療養費制度とは、公的医療保険が適用される1カ月の医療費の窓口負担について、所得や年齢に応じた上限を超えた分が支給される制度です。入院時の食費や差額ベッド代などは、原則として対象外です。70歳以上には、外来だけの上限も設けられています。
この制度により、入院や手術で医療費がかさんでも、家計へのダメージを一定範囲に抑えられます。
事前に「限度額適用認定証」(またはマイナ保険証の連携)を用意しておけば、窓口での支払い自体を上限額までに抑えられます。手術や入院など高額になりそうなときは事前申請が便利です。
1.5 加給年金
加給年金とは、厚生年金保険の被保険者期間が20年以上ある人が、65歳到達時点などで生計を維持する配偶者や子がいる場合に、老齢厚生年金へ加算される給付です。
加算を受けるには届出が必要なため、年金請求時や該当後の手続きで対象となる配偶者・子を正しく申告しましょう。
令和8年4月以降、配偶者の加給年金額は年24万3800円で、受給権者の生年月日に応じた特別加算を含めると年27万9800〜42万3700円です。
配偶者が65歳になると加給年金は原則終了し、振替加算は配偶者の生年月日や厚生年金加入期間などの要件を満たす場合に、配偶者自身の老齢基礎年金に加算されます。
2. 【今日からできる】生活費を「2~3%」削る節約の発想
シニアの家計改善で意識したいのは、収入アップより節約です。収入を2~3%増やすのは難しくても、生活費を2~3%削る方法は、工夫次第で誰でも取り組めるからです。
理由は、収入と支出の「動かしやすさ」の違いにあります。年金額は自分の意思では変えられず、就労で収入を増やすにも体力や雇用先の事情に左右されます。一方、支出は自分の判断だけで今日から見直せます。
たとえば月の生活費が25万円の世帯なら、2~3%は約5000~7500円です。これを通信費や保険、サブスクの見直しで捻出できれば、年間では6万~9万円もの効果になります。
とくに効果が続くのは固定費の削減です。格安SIMへの乗り換えや使っていない定額サービスの解約は、一度手を付ければ節約効果がずっと続きます。食費を毎日切り詰めるより負担が軽く、確実な方法です。
まずは家計簿アプリなどで支出を「見える化」し、削りやすい固定費から着手してみてください。小さな積み重ねが、年金生活の安心感を着実に高めてくれます。
3. まとめにかえて
老齢年金以外にも、再就職手当や年金生活者支援給付金など、シニアが受け取れる公的給付は複数あります。共通するのは「申請しなければ受け取れない」という点です。
使える給付を取りこぼさず受け取り、あわせて生活費を2~3%削る。この「もらう」と「削る」の両面から、長い老後の家計を守っていきたいところです。
4. 【監修者のコメント】この記事の総括とこれからの実務上の注意点
日本の公的制度の多くは、ご自身で申請のアクションを起こさない限り、自動的に振り込まれることはありません。まずはご自身の状況が対象になっていないか、一度立ち止まって確認する習慣をつけてください。
また、もらえるお金を確保すると同時に、支出をスリム化する視点も不可欠です。給付金などをあてにして生活水準を上げるのではなく、日常の基本となる生活費は確実な年金手取りの枠内に収めておくこと。この堅実なバランス感覚こそが、先の見えないインフレ時代において、家計に揺るがない安心をもたらす防衛策となります。
参考資料
- 厚生労働省「再就職手当のご案内」
- 厚生労働省「離職されたみなさまへ<高年齢求職者給付金のご案内>」
- 厚生労働省「年金生活者支援給付金特設サイト」
- 厚生労働省「高額療養費制度を利用される皆さまへ」
- 日本年金機構「加給年金額と振替加算」
柴田 充輝