2026年も7月に入り、気がつけば今年も残り半分となりましたね。先月15日には今年度最初の年金支給日を迎え、国民年金が初めて月額7万円を突破したことが話題になりました。しかし、止まらない物価上昇を前に「年金だけで暮らすことは難しいかな」と不安を感じている方も多いのではないでしょうか。

かつて銀行員として多くのシニア世代の資産相談に乗ってきた筆者の経験からも、現役時代からの「正しい現状把握と準備」が老後の安心を大きく左右します。今回は最新の家計データをもとに、老後に必要なお金の実態と、今からできる現実的な対策を分かりやすくお伝えします。

1. 厚生年金、平均年金月額「男性16.9万円、女性11.1万円」国民年金のみ受給の場合は?

公的年金は、老後の生活を支える大切な収入源です。

厚生労働省の「令和6年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」によると、厚生年金保険(第1号)の平均受給額は次のとおりです。

  • 全体:15万289円
  • 男性:16万9967円
  • 女性:11万1413円

仮に夫婦ともに厚生年金保険(第1号)を受給する場合、月々約28万円の年金を受け取る計算となります。

1.1 国民年金のみの場合は約6万円

次に、国民年金のみを受給する場合についても確認してみましょう。

全体:5万9310円
男性:6万1595円
女性:5万7582円

年金制度の2階部分にあたる厚生年金がない場合、月々の年金額は6万円前後となります。たとえば、厚生年金に加入していた夫と国民年金のみに加入していた妻が平均額を受け取る場合、月々約23万円の受給額となり、夫婦ともに厚生年金を受け取る場合に比べて受給額が約5万円ほど少なくなります。

2. 65歳以上の無職世帯夫婦、月々の家計「約4万円」不足額が続く?

では、年金だけで老後の生活費をまかなうことは可能なのでしょうか。

総務省統計局の「家計調査報告(家計収支編)2025年平均結果の概要」によると、65歳以上の夫婦のみの無職世帯における家計収支は次のとおりです。

  • 可処分所得:22万1544円
  • 消費支出:26万3979円
  • 差額:▲4万2434円

65歳以上の夫婦のみの無職世帯における家計収支1/1

65歳以上の夫婦のみの無職世帯における家計収支

出所:総務省統計局「家計調査報告(家計収支編)2025年平均結果の概要」

毎月の可処分所得に対して消費支出が上回る結果となっており、毎月約4万円の赤字が生じています。この赤字は貯蓄から取り崩していくこととなるため、「取り崩しに耐えられるだけの資産があるかどうか」が重要となります。

では、具体的にどれくらいの資産があればよいのでしょうか。続いての章でシミュレーションしてみましょう。

3. 65歳以上の無職世帯夫婦、赤字を埋めるために必要な金額をシミュレーション

65歳から85歳までの20年間で毎月4万円を取り崩し続けるとすると、赤字を補填するために必要な資金は次のとおりです。

4万円×12ヶ月×20年=960万円

金融経済教育推進機構(J-FLEC)「家計の金融行動に関する世論調査2025年」によると、70歳代の平均金融資産保有額は2416万円、中央値は1178万円です。平均値・中央値ともに960万円を上回っており、生活費の不足分はひとまずまかなえる水準に見えます。

3.1 介護や自宅のリフォームなどまとまった出費への備えも必要

ただし、老後の支出は毎月の生活費だけではありません。

公益財団法人生命保険文化センターの「2024(令和6)年度 生命保険に関する全国実態調査」によると、介護にかかった費用は次のとおりです。

介護にかかった一時費用:115万円
月々の介護費用:6.7万円
介護を行った平均期間:48.7ヶ月

これを合計すると、115万円+6.7万円×48.7ヶ月=約441万円となります。

その他に、自宅のリフォームや車の買い替えなども考慮すると、老後の支出はさらに膨らむ可能性があります。老後資金は、こうした突発的な支出にも対応できる水準を目指しておくことが重要です。

4. 65歳以上の無職世帯夫婦、老後資金のために今からできること

安心してセカンドライフを迎えるためには、計画的に老後資金の準備に取り組むことが欠かせません。

まず、公的年金以外の収入源を作ることを考えてみましょう。

たとえば、iDeCoや個人年金保険は、毎月一定額を積み立てながら将来の受取額を増やすための仕組みです。今のうちから将来の収入源を作っておき、公的年金だけに頼らない仕組みづくりに取り組んでおくと安心です。

また、老後における支出の見通しについても考えてみましょう。「いつ頃まで仕事を続けるか」「自宅のリフォームや車の買い替えはいつ頃必要か」「介護が必要になった場合はどのような施設を希望するか」といった点を事前に考えておくと、必要な老後資金の目安が立てやすくなります。

5. 65歳以上の無職世帯夫婦、老後資金の準備は早めのスタートがカギ

人生100年時代といわれる現在、安心してセカンドライフを迎えるためには早いうちから老後資金の準備に取り組むことが重要です。

たとえば、65歳までに老後資金2000万円を貯めるとした場合、50歳からスタートすると毎月約11万円を貯めなければなりませんが、40歳からスタートすれば約6.7万円の積立額で達成できます。もし資産運用などで利回りを得るなら、さらに効率よく老後資金を準備することも可能です。

大切なのは「将来に対する漠然とした不安にどのように対処するか」ということです。まずは、具体的なライフプランを描き、「そのためにはいくらの老後資金があればよいか」を考えることから始めてみましょう。

参考資料

椿 慧理