6月も下旬に差し掛かり、梅雨空が続く日が増えてきました。

天候が不安定で外出できない時を活用し、将来の生活設計について考えてみるのもよいかもしれません。

これまでの遺族厚生年金は、一定の要件を満たせば長期間、場合によっては生涯にわたって受け取れる仕組みでした。

しかし、共働き世帯の増加や家族のあり方が変化する中で、制度に残る性別による扱いの違いが課題として浮上しています。

こうした社会情勢を背景に、政府は2025年5月に年金制度改正法案を国会へ提出し、その中に遺族厚生年金の見直しを盛り込みました。

その見直しの大きな柱の一つが、遺族厚生年金を「原則5年間の有期給付」とする新しい制度です。

この記事では、遺族厚生年金の「5年で打ち切り」がいつから開始されるのか、そして今後も継続して受給できるのはどのような人なのかを、整理して詳しく解説します。

1. 遺族年金の基本をおさらい。受給対象となるのはどのような人か

「遺族年金」とは、国民年金や厚生年金の加入者が亡くなった際に、その遺族が受け取れる公的年金制度のことです。

遺族年金は「遺族基礎年金」と「遺族厚生年金」の2つに大別されます。

故人の年金加入状況や遺族の条件に応じて、片方のみ、あるいは両方が支給される場合があります。

ただし、年金を受け取るには、保険料の納付要件のほか、遺族の年齢や生計を共にしていたかといった、所定の条件を満たす必要があります。

現行の遺族厚生年金制度では、性別によって受給するための要件が異なる点も知っておくべきポイントです。

なぜ遺族厚生年金には、性別による受給要件の違いが設けられているのでしょうか。

1.1 なぜ男女で違う?現在の遺族厚生年金の受給要件

先述の通り、現在の遺族厚生年金は、受給要件が男女で異なっています。

具体的にいうと、子どもがいない状況で配偶者に先立たれた場合、妻は30歳以上であれば期間の定めのない給付の対象となり、生涯にわたり遺族厚生年金を受給できます。

これに対して、子どもがいない夫の場合は55歳以上でなければ受給資格を得られず、年金が実際に支給されるのは60歳以降と定められています。

このような差異が生まれた背景には、制度が創設された当時、主に家計を支えていた夫が亡くなった後、残された家族の生活を守るという目的があったことが挙げられます。

遺族年金制度の受給要件について2/4

遺族年金制度の受給要件について

出所:厚生労働省「遺族年金制度等の見直しについて」

当時の社会では「夫は外で働き、妻は家庭を守る」という考え方が主流で、専業主婦のいる世帯が多数でした。

しかし、現代では共働き世帯が増え、家族の形も多様化しています。

そのため、これまでの制度と社会の実態との間に乖離が生じている点が問題視されています。

このような社会の変化に対応するため、遺族厚生年金制度は2028年4月から見直されることになりました。

2. 2028年4月から制度改正される見通し。遺族厚生年金が「5年で打ち切り」になる対象者とは

現行の遺族厚生年金制度は、配偶者を亡くした時点の年齢や性別によって、給付内容や受給条件が異なります。

このような性別による取り扱いの差を是正するため、2028年4月から遺族厚生年金制度が改正される見通しです。

改正後は、配偶者と死別した時点で60歳未満で子どもがいない場合、性別に関係なく遺族厚生年金は原則5年間の有期給付となります。

これが、一般的に「5年で打ち切り」といわれている内容です。

遺族厚生年金の見直しについて3/4

遺族厚生年金の見直しについて

出所:厚生労働省「遺族厚生年金の見直しについて」

この制度改正により、これまで問題視されてきた男女間の受給条件の格差は、大幅に解消されると期待されています。

ただし、改正の影響はすべての人に同じように及ぶわけではなく、「原則5年で給付が終わる人」と「引き続き受給できる人」に分かれることになります。

次の章では、遺族厚生年金を継続して受け取れる「ずっともらえる人」の条件について見ていきましょう。

3. 改正後も遺族厚生年金を継続して受け取れる人の条件

以下のいずれかの条件に該当する方は、今回の制度改正の対象外となります。

  • すでに遺族厚生年金を受け取っている方
  • 60歳になってから遺族厚生年金の受給権を得る方
  • 18歳の年度末を迎えるまでの子どもを育てている期間の方
  • 2028年度時点で40歳以上である女性

これらの条件に当てはまる方は、制度改正後もこれまで通りの扱いとなり、受給資格や支給要件が変わることはありません。

4. 「5年で打ち切り」の制度改正で影響を受けるのはどのような人か

制度改正によって年齢要件が段階的に変更され、配偶者を亡くした時点で60歳未満かつ子どもがいない場合、遺族厚生年金の支給は原則として5年間に限定される見込みです。

この変更に伴い、女性への給付に関しては、制度全体として改正の影響を受ける場面が増加すると予想されます。

一方で、従来は55歳未満では対象外だった男性も、今後は年齢に関わらず遺族厚生年金を受け取れるようになります。

遺族厚生年金の見直しについて4/4

遺族厚生年金の見直しについて

出所:厚生労働省「遺族厚生年金の見直しについて」

なお、制度改正は男女ともに2028年4月から適用されますが、女性への影響が急激にならないよう、約20年かけて段階的に見直しが進められる計画です。

これらの点を考慮すると、2028年度の時点で妻が40歳未満の世帯は、将来的に遺族厚生年金の受給条件が大きく変わる可能性があり、制度改正の影響をより受けやすいといえるでしょう。

5. 遺族厚生年金の制度改正に向けて、今からできる備え

この記事では、遺族厚生年金の「5年で打ち切り」がいつから適用されるのか、そして改正後も継続して受給できる人の条件について説明しました。

遺族厚生年金は2028年4月から制度が変更される予定で、60歳未満で子どもがいない状態で配偶者を亡くした場合、原則として5年間の有期給付に変わります。

その一方で、すでに受給中の人や60歳以上で受給権を得る人などは、今回の改正による影響はありません。

制度が実際に適用されるまでには時間的な猶予があるため、この期間に準備を進めておくことが大切です。

例えば、就労して厚生年金に加入し、自分自身の年金額を増やすことで、将来の生活の土台を固めることができます。

また、NISAやiDeCoなどの税制優遇制度を利用した資産形成や、生命保険といった民間の保障内容を見直すなど、ご自身のライフスタイルや家計状況に合わせた備えを検討することも重要です。

制度の変更点を正確に把握し、公的年金だけに頼らない対策を立てておくことが、将来の安心感を高めることにつながります。

※当記事は再編集記事です。

参考資料

安達 さやか