6月も下旬に差し掛かり、日差しが日に日に強くなるのを感じる頃となりました。
物価の上昇が続いている状況で、老後の生活設計や年金以外の収入源について考える方が増えています。
特に60歳や65歳以上のシニア世代にとって、公的な給付金は生活の大きな助けとなります。
しかし、これらの制度の多くは、自分から申請しなければ受け取れない仕組みです。
制度の存在を知らないままだと、本来受け取れるはずの給付金を見逃してしまうかもしれません。
この記事では、申請しないと受け取れない公的給付金を5つ取り上げ、詳しく解説します。
年金生活者支援給付金や加給年金、雇用保険関連の手当など、年金以外の収入を確保するための制度について、わかりやすくご紹介します。
※LIMOでは、個別の相談・お問い合わせにはお答えできません。
1. 意外と知られていない?申請が必要な公的給付金とは
老齢年金、障害年金、遺族年金などの公的年金は、生活を支える重要な基盤です。
しかし、受給資格を満たしていても、自動的に支給が開始されるわけではない点に注意が必要です。
年金の受け取りを開始するためには、ご自身で「年金請求書」を提出し、請求手続きを行う必要があります。
国や自治体が提供する給付金や補助金も同様に、原則として申請手続きが求められます。
もし申請期限を過ぎてしまったり、提出書類に不備があったりすると、給付額が減額されたり、受け取れなくなったりする可能性があります。
利用できる支援制度を有効に活用するため、まずはご自身が対象となる制度を正確に把握し、着実に手続きを完了させることが大切です。
2. 老齢年金に上乗せされる2つの給付金制度
シニア世代の生活と深く関わる公的年金には、本来の老齢給付を補うための制度がいくつか存在します。
ここではその中から、老齢年金を受給している方が一定の要件を満たした場合に、年金額に上乗せして支給される2種類の給付について見ていきましょう。
2.1 1. 年金生活者支援給付金とは
年金生活者支援給付金は、基礎年金を受給しており、かつ所得が一定基準以下の方が受け取れる給付金です。
この給付金は、老齢基礎年金、障害基礎年金、遺族基礎年金のそれぞれに設けられています。
本記事では、特にシニア世代の生活に関連の深い「老齢年金生活者支援給付金」に焦点を当てて解説します。
老齢年金生活者支援給付金の受給条件
- 65歳以上で老齢基礎年金を受給していること
- 同一世帯の全員が市町村民税非課税であること
- 前年の公的年金などの収入金額(※1)とその他の所得の合計が、昭和31年4月2日以降生まれの方は80万9000円以下、昭和31年4月1日以前生まれの方は80万6700円以下(※2)であること
※1 障害年金や遺族年金といった非課税収入は含まれません。
※2 昭和31年4月2日以降に生まれた方で80万9000円を超え90万9000円以下の方、昭和31年4月1日以前に生まれた方で80万6700円を超え90万6700円以下の方には、「補足的老齢年金生活者支援給付金」が支給されます。
老齢年金生活者支援給付金の基準額はどのくらい?
2026年度における老齢年金生活者支援給付金の基準額は、月額5620円です。
これはあくまで基準額であり、実際の支給額は保険料の納付状況などに応じて計算されます。
具体的な計算式は、以下の①と②の合計額となります。
- ①保険料納付済期間に基づく額(月額) = 5620円 × 保険料納付済期間 / 被保険者月数480カ月
- ②保険料免除期間に基づく額(月額) = 1万1768円 × 保険料免除期間 / 被保険者月数480カ月
2.2 2. 加給年金とは
加給年金は、「年金の家族手当」ともいえる制度です。
老齢厚生年金を受給している方が、年下の配偶者や子どもを扶養している場合に、一定の条件を満たすと年金に上乗せして支給されます。
加給年金の受給条件
- 厚生年金の加入期間が20年(※)以上ある方:65歳に達した時点(または定額部分の支給開始年齢に達した時点)
- 65歳到達後(もしくは定額部分支給開始年齢に到達した後)に被保険者期間が20年(※)以上となった方:在職定時改定時、退職改定時(または70歳到達時)
※共済組合などの加入期間を除いた厚生年金の被保険者期間が、40歳(女性と坑内員・船員は35歳)以降で15年から19年の方も対象となる場合があります。
上記のいずれかの時点で、「65歳未満の配偶者」または「18歳に達する年度の末日までの子ども、もしくは1級・2級の障害がある20歳未満の子ども」がいる場合に、年金に加算して支給されます。
ただし、配偶者が被保険者期間20年以上の老齢厚生年金や退職共済年金を受け取る権利がある場合、または障害年金などを受給している場合は、配偶者加給年金は支給停止となります。
2026年度の加給年金額について
2026年度の加給年金の年額は、以下の通りです。
- 配偶者:24万3800円
- 子ども(1人目・2人目):各24万3800円
- 子ども(3人目以降):各8万1300円
さらに、老齢厚生年金受給者の生年月日に応じて、配偶者加給年金額に3万6000円から17万9900円の特別加算が上乗せされます。
加給年金は、対象の配偶者が65歳になると支給が終了します。
しかし、その配偶者が老齢基礎年金を受け取る資格があり、一定の要件を満たす場合には、配偶者の老齢基礎年金に「振替加算」が行われます。
3. 働くシニア世代向け!雇用保険に関連する3つの給付金
60歳以降も働き続けるシニアは増加傾向にありますが、60歳を境に収入が大幅に減少するケースも少なくありません(※)。
また、若い世代と比べて再就職活動が思うように進まないという現実もあります。
このようなシニア世代の就労を支援するのが雇用保険制度です。
ここでは、知っておきたい3つの給付金・手当について、受給条件や金額の目安を解説します。
※国税庁「令和6年分 民間給与実態統計調査」によると、年齢階層別の平均給与は50歳代後半男性で735万円、女性で356万円ですが、60歳代前半では男性604万円・女性294万円、60歳代後半では男性472万円・女性240万円となっています。
3.1 1. 65歳未満が対象「再就職手当」
再就職手当は、早期の再就職を促すための制度です。
失業してから再就職または事業を開始するまでの期間が短いほど、多くの手当が支給される仕組みになっています。
再就職手当の受給条件
- 対象者:雇用保険の受給資格者で、基本手当の受給資格がある方
- 支給要件:雇用保険の被保険者として再就職するか、事業主となって被保険者を雇用する場合で、基本手当の支給残日数が所定給付日数の3分の1以上あり、その他一定の要件を満たす場合に支給されます。
再就職手当の給付率
- 手当の額:就職する前日までの失業認定を受けた後の基本手当の支給残日数に応じて、給付率が変動します(1円未満は切り捨て)。
- 所定給付日数の3分の1以上の支給日数を残して就職した場合:「支給残日数の60%」
- 所定給付日数の3分の2以上の支給日数を残して就職した場合:「支給残日数の70%」
再就職手当を受け取って再就職し、その職場で6カ月以上雇用されたものの、6カ月間の賃金が前の職場より低下した場合には、追加で「就業促進定着手当」を受けられる可能性があります。
3.2 2. 60歳~65歳未満が対象「高年齢雇用継続給付」
高年齢雇用継続給付は、60歳以降も同じ会社で働き続けるものの、給与が大幅に下がってしまった方を経済的に支援する給付金です。
高年齢雇用継続給付の受給条件
- 対象者:雇用保険の被保険者期間が5年以上ある、60歳以上65歳未満の雇用保険被保険者
- 支給条件:賃金が60歳時点の75%未満になった状態で働き続ける場合
高年齢雇用継続給付の支給率
- 支給額:最高で賃金額の10%(※)に相当する額
※2025年3月31日以前に支給要件を満たした方は15%
老齢年金を受け取りながら厚生年金に加入し、「高年齢雇用継続給付」を受給する場合、在職による年金の支給停止に加えて、最大で標準報酬月額の4%(※)相当額が支給停止となるため注意が必要です。
※2025年3月31日以前に支給要件を満たした方は6%
3.3 3. 65歳以上が対象「高年齢求職者給付金」
65歳以上で退職または失業した場合、通常の失業手当(基本手当)の代わりに受け取れるのが高年齢求職者給付金です。
高年齢求職者給付金の受給条件
- 対象者:高年齢被保険者(65歳以上の雇用保険加入者)で失業した方
- 支給要件:以下のすべての要件を満たす必要があります。
- 離職日以前1年間に、被保険者期間が通算して6カ月以上あること
- 失業の状態にあること(就職の意思と能力があり、積極的に求職活動を行っているにもかかわらず就職できない状態)
高年齢求職者給付金の給付額はどのくらい?
- 支給額
- 被保険者であった期間が1年未満の場合:基本手当30日分に相当する額
- 被保険者であった期間が1年以上の場合:基本手当50日分に相当する額
65歳未満の方が受け取る失業手当は4週間に1度、認定を受けて分割で支給されますが、高年齢求職者給付金は一括で支給される点が大きな特徴です。
4. 2025年年金制度改正における遺族厚生年金の変更点
2025年6月に成立した「年金制度改正法」の主な目的の一つは、働き方や家族構成の多様化に対応した年金制度を構築することです。
この改正では、いわゆる「106万円の壁」の撤廃に関連する社会保険の適用拡大に加え、遺族年金制度の見直しも行われました。
4.1 遺族厚生年金における男女差の是正
現行の遺族厚生年金制度には、受給者の性別によって以下のような違いが存在しました。
現行の遺族厚生年金の制度概要
- 女性
- 30歳未満で死別した場合:5年間の有期給付
- 30歳以上で死別した場合:無期給付
- 男性
- 55歳未満で死別した場合:給付なし
- 55歳以上で死別した場合:60歳から無期給付
このような男女間の格差を解消するための見直しが、2028年4月から施行される予定です。
2028年4月から施行される新制度
「原則5年間の有期給付」の対象となるための要件が、男女共通でより詳細に規定されました。
- 女性:施行直後(2028年4月)に原則5年間の有期給付の対象となるのは、「18歳年度末までの子どもがいない、2028年度末時点で40歳未満の方」です。(※すでに遺族厚生年金を受給中の方や、2028年度に40歳以上になる女性は影響を受けません。)
- 男性:新たに5年間の有期給付を受けられるようになるのは、「18歳年度末までの子どもがいない60歳未満の方」です。
- 子どもがいる場合:18歳年度末までの子どもがいる場合は、子どもが18歳年度末になるまでは現行制度と変わらず、見直しの影響はありません。子どもが18歳になった後、さらに5年間は増額された有期給付および継続給付の対象となります。
4.2 有期給付と継続給付の拡充内容
特別な配慮が必要な場合の給付についても、金額や要件がより具体的になりました。
- 有期給付の増額:有期給付には新たに「有期給付加算」が上乗せされ、現在の遺族厚生年金の額の約1.3倍に増額されます。
- 継続給付(5年目以降の給付継続)の要件:5年間の有期給付が終了した後も、障害状態にある方や収入が不十分な方は、引き続き増額された遺族厚生年金を受給できます。単身の場合、就労収入が月額約10万円(年間122万円)以下の方は継続給付が全額支給され、月額20~30万円を超えると全額支給停止となる見込みです。
また、今回の改正では「遺族基礎年金」の見直しも行われました。
これまで同一生計の父または母がいて遺族基礎年金を受け取れなかった子どもも、2028年4月からは単独で「遺族基礎年金」を受給できるようになります。
5. まとめ
今回は、申請しなければ受け取れない公的な給付金について解説しました。
これらの制度は、対象者であっても「知らなかった」「手続きを忘れていた」といった理由で受給できていないケースが少なくありません。
該当する可能性がある方は、早めに申請手続きを進めることをおすすめします。
もし「手続きが複雑で難しそう」と感じる場合は、まず担当窓口に電話して必要書類を確認したり、職員の方に相談しながら進めたりするとよいでしょう。
一人で抱え込まずに専門家のサポートを受けることで、手続きの負担を大幅に軽減できます。
面倒だと諦めてしまう前に、ぜひ周囲の力も借りてみてはいかがでしょうか。
※当記事は再編集記事です。
参考資料
- 日本年金機構「初めて老齢年金を請求するとき」年金請求書(国民年金・厚生年金保険 老齢給付)様式第101号
- 厚生労働省「年金生活者支援給付金制度」
- 日本年金機構「老齢(補足的老齢)年金生活者支援給付金の概要」
- 日本年金機構「令和7年4月分からの年金額等について」
- 日本年金機構「か行 加給年金額」
- 日本年金機構「加給年金額と振替加算」
- 厚生労働省「令和8年度の年金額改定についてお知らせします」
- 厚生労働省「Q&A~高年齢雇用継続給付~」
- 厚生労働省「令和7年4月1日から高年齢雇用継続給付の支給率を変更します」
- 日本年金機構「年金と雇用保険の高年齢雇用継続給付との調整」
- 厚生労働省「再就職手当のご案内」
- 厚生労働省「離職されたみなさまへ<高年齢求職者給付金のご案内>」
- 国税庁「令和6年分 民間給与実態統計調査」
- 厚生労働省「遺族厚生年金の見直しについて」
- LIMO「【60歳・65歳以上向け】見逃していませんか?申請しないともらえない公的給付5選|年金以外の支援制度とは」
鶴田 綾