5.2 一人あたり約2300万円!?家計データに含まれない「介護費用」のリアル

2つ目は、家計調査の支出データには「介護関連費用」が基本的に含まれていない点です。

株式会社LIFULL senior(LIFULL 介護)が2026年6月に公表した試算によると、在宅介護を1年経て有料老人ホームに5年間入居した場合、介護にかかる費用は一人あたり「約2300万円(2295.6万円)」に達するとされています。

特別養護老人ホームなどの公的施設に入居できれば費用はある程度抑えられますが、民間施設を利用してトータル2000万円を超えるケースは決して珍しくありません。

同調査では、親世代の約6割が「介護費用を備えていない」、子世代の8割超が「親と介護費用について話し合ったことがない」と回答しています。

介護保険サービスを利用しても所得に応じて1〜3割の自己負担は発生するため、将来的な支出増をしっかり見込み、家族で話し合っておく必要があるでしょう。

5.3 所得で異なる後期高齢者医療制度の「窓口負担割合」

3つ目は、「医療費の窓口負担」に関する制度の仕組みです。75歳になると後期高齢者医療制度の対象となり、医療費の窓口負担は原則1割となります。

しかし、一定以上の所得がある世帯は「2割負担」、現役並み所得の世帯は「3割負担」が適用されるため、家計への影響を考慮しておくことが大切です。

6. 夫婦の老後資金は「おひとりさま期間」まで見据えることが大切

老後資金の計画を立てる際に気をつけておきたいのが「想定する期間の長さ」です。

厚生労働省の「令和6年簡易生命表」によれば、現在65歳の方の平均余命は男性で20年(85歳まで)、女性で24年(89歳まで)となっています。

さらに「90歳まで生きる確率」は男性で26%、女性で50%に達します。

ご夫婦の場合、どちらか一方が亡くなられた後も、残された配偶者が長期間「おひとりさま」として生活を続けるケースは一般的です。

そのため、80歳前後までを前提とした資金計画では不足する懸念があります。

また、配偶者が亡くなった後は、生活費が単純に半分になるわけではなく、家賃や光熱費などの「固定費」の負担割合が相対的に大きくなる傾向があります。

7. 「いくらあるか」ではなく「何年もつか」。資産寿命を延ばすための備え

長寿化と物価高が進むこんにち。老後のマネープランは、貯蓄の金額そのものだけでなく「手元の資産で何年間生活を支えられるか(=資産寿命)」という視点が大切になっていくでしょう。

資産寿命を延ばし、安心して老後を過ごすためには、就労や資産運用などによる資金源の確保とともに、社会保障制度を正しく理解し、活用する姿勢も求められるでしょう。

医療や介護の自己負担については既に触れましたが、1か月の支払いが上限を超えた場合には「高額療養費制度」や「高額介護サービス費」によって払い戻しを受けることができます。

また、一定要件を満たすと老齢年金に上乗せされる「老齢年金生活者支援給付金」や「加給年金」などの存在もぜひ知っておきましょう。

平均的なデータや表面的な数字にとらわれることなく、ご自身のライフスタイルや健康状態に合わせて、収入を補い、制度を活用し、資産を守るための総合的な計画を立てていくことが、これからの高齢期を豊かに過ごすための第一歩となるでしょう。

参考資料