6月15日は、偶数月に一度の公的年金支給日でした。
実は毎年6月に支給される年金は、その年度の改定額(物価や賃金変動の反映)が初めて適用される、特別な節目のタイミングでもあります。
夏のボーナス支給とも重なるこの時期、関連ニュースや口座残高をきっかけに、「自分は将来、いくら年金をもらえるのだろう?」と老後のお金について考え始めた方も多いのではないでしょうか。
長引く物価高の影響もあり、退職後の暮らしを想像するうえで最も気になるのが「年金のリアルな受給額」です。
厚生労働省の最新データによると、国民年金の平均月額は約5.9万円、厚生年金は約15万円となっていますが、受給額は現役時代の働き方によって大きく変わります。
そこで本記事では、「平均年収600万円」の会社員が「40年間」勤務した場合をモデルに、将来受け取れる年金額の目安をわかりやすくシミュレーションします。
さらに、最新の家計調査データをもとにした「リタイア後のリアルな生活収支」や、意外と見落としがちな「天引きされる税金・社会保険料」の注意点についても詳しく解説。
インフレ時代に備え、ゆとりある老後を迎えるためのマネープランの第一歩として、ぜひご活用ください。
1. この記事の3つのポイント
- 日本の平均給与は478万円(令和6年分)「平均年収600万円×40年勤務」の会社員の場合、年金目安は月額約18万円。
- 年金からは税金や社会保険料が天引きされるため、額面18万円でも手取りは15万〜16万円前後になる点に注意が必要。
- 65歳以上の単身無職世帯は毎月約3万円の赤字(2025年家計調査)。「ねんきん定期便」で受給額を把握し、新NISAなどでの早めの対策がカギ。
2. 日本人の平均年収はどれくらい?年代別の収入水準も確認
国税庁「令和6年分 民間給与実態統計調査」によると、2024年に1年を通じて勤務した給与所得者の平均給与は478万円でした。
日本全体で見ると、給与所得者の年収は400万円台後半がひとつの目安といえます。
しかし、年齢によって収入水準には大きな違いがあります。
2.1 年代ごとの平均年収はどう変わる?
同調査では、年齢階級別の平均給与も公表されています。
年収は20歳代から30歳代にかけて上昇し、その後も増加を続けながら55~59歳でピークを迎えます。
60歳以降は減少傾向となり、年齢を重ねるにつれて収入水準は低下していきます。
また、各年代で男女の年収差も見られ、とくに40歳代や50歳代では男性と女性の平均給与に大きな開きが生じています。
平均給与478万円という数値は、こうした年代別・男女別の違いを含めた全体の平均値です。
老後に受け取る年金額は、現役時代の収入や加入期間と深く関係しています。
そのため、平均年収が600万円前後となる40歳代~50歳代の人にとっては、将来の年金額が気になるテーマといえるでしょう。
次章では、年金の基本の仕組みをおさらいしつつ、平均年収600万円で40年間働いたケースを例に、受け取れる年金額の目安を見ていきます。
3. 【公的年金の基本を確認】老後に「厚生年金と国民年金」を受け取れる人とは?
年金額を試算する前に、公的年金制度の仕組みを簡単に整理しておきましょう。
日本の公的年金は、1階部分の「国民年金」と、会社員や公務員などが加入する2階部分の「厚生年金」で構成されています。
国民年金の加入者は、次の3種類に分類されます。
- 第1号被保険者:自営業、学生、無職など
- 第2号被保険者:会社員、公務員
- 第3号被保険者:第2号被保険者に扶養されている配偶者
つまり、厚生年金を受け取る対象となるのは、第2号被保険者として働いていた人です。
ここからは、年金の基本の仕組みを簡単におさらいしたうえで、「平均年収600万円で40年間働いたケース」を例に、将来受け取れる年金額の目安を試算していきます。
4. 【厚生年金と国民年金】年収600万円で40年間働いた場合の年金額を試算
ここでは、生涯平均年収600万円の会社員が40年間勤務したケースを想定します。
この場合、老後は国民年金と厚生年金の両方を受給できます。年金額を求めるために、まず国民年金部分を確認しましょう。
4.1 ステップ1:国民年金の受給額
まずは、老齢基礎年金(国民年金)の受給額を確認します。
国民年金は、保険料を納めた期間に応じて支給額が決まります。
国民年金額の計算式は以下のとおりです。
84万7296円 ×(保険料納付済み月数 ÷ 加入可能年数(12か月換算)) ※2026年度(令和8年度)の金額。昭和31年4月2日以後生まれの方が対象
保険料を40年間にわたり全額納付した場合、納付済み月数は480カ月となるため、計算式の割合は1になります。
そのため、受け取れる老齢基礎年金は満額の年額84万7296円となります。
続いて、厚生年金部分を見ていきましょう。
4.2 ステップ2:厚生年金の受給額
厚生年金は、主に報酬比例部分をもとに計算されます。
計算式は次のとおりです。
- 年金額=報酬比例部分(※)+経過的加算+加給年金額
※報酬比例部分の内訳
報酬比例部分=A+B
- A(2003年3月までの加入期間):平均標準報酬月額×7.125/1000×同期間の加入月数
- B(2003年4月以降の加入期間):平均標準報酬額×5.481/1000×同期間の加入月数
今回の試算では、年金額の中心となる報酬比例部分に着目し、経過的加算と加給年金額は含めません。
また、加入期間はすべて2003年4月以降と仮定するため、Bの計算式のみを使用します。
今回は簡易試算として、平均年収600万円を月額50万円相当の平均標準報酬額と仮定して計算します。
平均標準報酬額を50万円として計算すると、「50万円 × 5.481/1000 × 480カ月」となり、報酬比例部分は年額131万5440円となります。
4.3 年金月額はいくらになる?
上記で算出した国民年金84万7296円と、厚生年金131万5440円を合計すると、年間の受給額は216万2736円です。
これを12カ月で割ると、月額は18万228円となります。
したがって、生涯平均年収600万円で40年間勤務した会社員の場合、老後に受け取る年金額の目安は月額約18万円となります。
5. 【要注意】年金は額面通りにもらえない?天引きされる「税金・社会保険料」
前の章では、平均年収600万円モデルにおける将来の年金額を算出しましたが、実はこの試算額がそのまま口座に振り込まれるわけではありません。
現役時代の給与と同じように、年金からも「税金」や「社会保険料」が天引きされる仕組みになっています。そのため、実際に生活費として使えるお金(手取り額)は額面より目減りしてしまいます。
ここで、総務省の「家計調査報告 家計収支編 2025年(令和7年)平均結果の概要」から、65歳以上の単身無職世帯のリアルな家計収支を見てみましょう。
65歳以上 単身無職世帯の家計収支(2025年)
- 実収入(主に社会保障給付など): 13万1456円
- 非消費支出(税金・社会保険料など): 1万2990円
- 可処分所得(手取り収入): 11万8465円
- 消費支出(生活費): 14万8445円
- 毎月の赤字額(差額分): 2万9980円
データを見ると、実収入の約13.1万円から、税金や社会保険料として約1.3万円が引かれていることが分かります。
その結果、最終的な手取り(可処分所得)は約11.8万円になりますが、日々の消費支出(生活費)には約14.8万円かかるため、毎月約3万円の赤字を抱えているのが標準的なシニア世帯の実情です。
先ほど算出した「月額約18万円」という単身の年金モデルでも、仮に10〜15%ほどが税金や社会保険料として差し引かれた場合、実際の手取りは「15万〜16万円前後」に落ち着く可能性が高い点に留意しておきましょう。
※税金や社会保険料の控除割合は、お住まいの自治体や個人の状況によって異なります
6. 家計を直撃する「物価高」5年連続の食品値上げラッシュも
毎月の赤字に加え、年金生活者の家計に重くのしかかるのが昨今の「物価高」です。
帝国データバンクが発表したレポートによると、2026年4月の食品値上げは2798品目に達し、年内初の「値上げラッシュ」となりました。
さらに、今年の飲食料品の値上げは累計1万品目を突破し、調査開始から5年連続となるなど、生活費への影響は深刻です。
限られた年金収入の中でやり繰りするには、こうした継続的な物価上昇リスクも考慮しておく必要があります。
手取り額の目減りと物価高の「ダブルパンチ」に備え、余裕を持った資金計画を立てることがこれまで以上に求められているのです。
7. まとめにかえて
6月の公的年金支給日を過ぎ、夏のボーナスも話題に上る今の時期は、ご自身の長期的なマネープランを再確認するのにぴったりのタイミングです。
今回は「平均年収600万円×40年勤務」という条件で年金目安を計算してみましたが、実際の受給額は現役時代の働き方や給与額によって一人ひとり全く異なります。
さらに最新の統計データからも分かるように、年金の手取り額だけで生活費をすべて賄うのは難しく、預貯金を取り崩しながら暮らすスタイルが一般的となっています。
まずは「ねんきん定期便」や「ねんきんネット」で、ご自身のリアルな年金見込額を早めにチェックしてみましょう。
その上で、足りない生活費をどうカバーしていくか(就労期間を延ばす、新NISAやiDeCoで計画的に資産を増やすなど)、今のうちから具体的な対策を練っておくことが老後の安心につながります。