本日、2026年6月15日(月曜日)は、新年度の増額改定が反映された新しい年金額が口座に振り込まれる最初の支給日です。物価高が家計の負担となるなか、引き上げられた入金額を確認して、ほっと胸をなでおろしている方も多いのではないでしょうか。

しかし、高齢期の暮らしを支える防衛策は、ベースとなる老齢年金本体だけではありません。特定のライフステージや家族構成、あるいは働き方や住環境の条件を満たすことで、数十万円単位の一時金や毎月の上乗せが得られる「シニア向けの公的給付・助成金」がいくつも用意されています。

これらのお金を受け取るうえで最大の落とし穴となるのが、国や自治体が自動的に振り込んでくれるわけではなく、「本人が自ら窓口へ申請手続きをしない限り、1円も支給されない」という厳格なルールの存在です。せっかくの権利を眠らせたままリタイア生活を送るのは、実にもったいないと言わざるを得ません。

本記事では、60代以降の節目で見落としがちな「5つの重要給付」を網羅して分かりやすく解説。さらに、公的支援で収入を底上げしながら、日々の支出をスマートに削る家計防衛のコツをお届けします。

1. 申請主義の世界では「申請しなければゼロ」が原則

日本の社会保障制度の多くは「申請主義」で運営されています。役所や年金機構が勝手に振り込んでくれるわけではなく、本人が手続きを行って初めて支給が始まる仕組みです。

申請期限を過ぎると遡及できないケースもあるため、「知らなかった」では済まされないのが現実です。つまり、損をしないためには、自発的に情報収集する姿勢が求められます。

2. ①再就職手当

65歳未満で離職し、雇用保険の基本手当を受け取る資格がある人が対象です。所定給付日数の3分の1以上を残した状態で安定した職に就くなどの条件を満たすと、残日数に応じた一時金が一括支給されます。

計算式は「残日数×基本手当日額×給付率」で、就職が早いほど給付率が高く、最大70%まで上がります。

3. ②高年齢雇用継続給付

60歳以上65歳未満の被保険者で、60歳時点の賃金と比べて75%未満に収入が落ちた場合などの条件を満たす場合に支給される給付です。

現役時代より低い賃金で雇用が継続されている方に、減収分の一部を国が補填する制度と考えると理解しやすいでしょう。

支給上限は現在の賃金の10%が原則で、昨今は制度の廃止も検討されています。対象になる可能性がある場合は、制度が続いているうちに確認しておくことが重要です。

4. ③介護保険の住宅改修費

高齢になったとき、「まだ元気だから」とリフォームを先送りにする方がいるかもしれません。しかし、要支援・要介護認定を受けた後に自宅で安全に暮らすためには、手すりの設置や段差解消などを早めに検討することが重要です。

介護保険の住宅改修費3/4

介護保険の住宅改修費

出所:厚生労働省「介護保険における住宅改修」

要支援1・2または要介護1〜5の認定を受けていれば、バリアフリー改修工事について支給限度基準額20万円まで申請でき、自己負担割合に応じてその7〜9割が住宅改修費として支給されます。

対象となる工事は手すりの設置、段差解消、滑り止め床材への交換、引き戸への取り換え、洋式便器への交換などです。工事前に市区町村へ申請するのが原則のため、着工前にケアマネジャーや自治体へ確認しましょう。

5. ④年金生活者支援給付金

老齢・障害・遺族年金を受け取る低所得者に対して、年金に上乗せで毎月支給される給付です。2026年度の月額は老齢・遺族が5620円(基準額)、障害1級が7025円、障害2級が5620円(前年比+3.2%)です。

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年金生活者支援給付金

出所:厚生労働省「年金生活者支援給付金特設サイト」

対象は「同一世帯全員が市区町村民税非課税」かつ「前年の公的年金等の収入と所得の合計が一定額以下」の方です。

6. ⑤加給年金

厚生年金の加入期間が20年以上ある人は、加給年金を受け取れる可能性があります。65歳で老齢厚生年金を受け取り始めた時点で、生計を維持している65歳未満の配偶者や18歳到達年度末までの子などがいる場合に加算される給付です。2026年度は、配偶者加給年金額が特別加算を含めて年額42万3700円となるケースがあります。

なお、配偶者が65歳に達した場合など年齢制限に該当しなくなると、加給年金は終了します。また、配偶者に一定の老齢厚生年金や障害年金を受ける権利がある場合は、支給停止となることがあります。もらえる期間には限りがあるため、いつまで受給できるかを逆算して生活設計に組み込んでおくことが大切です。

7. 給付で収入を底上げしながら「支出の無駄」を削る

公的給付を確保することと同じくらい重要なのが、支出のコントロールです。普段の生活における家計管理の基本は「不要なものを買わないこと」です。

日常の買い物でつい手が伸びる余計なもの、価値をあまり感じていないサービスの継続費用、衝動的な購入。こうした支出を一つひとつ見直すだけで、月に数千円〜1万円以上の節約になるケースは珍しくありません。

「無駄な支出を減らす」と「価値を感じない支出を見極める」の2軸で家計を整えることが、公的給付の効果を最大限に活かす土台になります。

公的給付で収入の底上げをしながら支出の無駄を削ることで、家計の健全度は上がります。「収入を増やす努力」と「支出を減らす習慣」の両輪が、安定した老後生活の基本です。

8. まとめ:年金支給日を生活防衛の契機に。確実な「手続き」と「支出の見直し」で強い家計の土台を作ろう

本日ご紹介した5つの公的給付や助成金の仕組みからは、これからのセカンドライフを豊かに生き抜くための重要なヒントが見えてきます。

多くの人が「定年になれば役所が面倒を見てくれる」と考えがちですが、実際には管轄が年金事務所、ハローワーク、そしてケアマネジャーや市区町村の介護保険窓口など、複雑に分かれた制度を自分の意思で一つずつ手繰り寄せなければなりません。

物価高の波が収まらない現代において、国の施策をただ受動的に待つだけでは、現役時代に築いた大切な預貯金の目減りを防ぐことは不可能です。

だからこそ、新年度の年金が振り込まれた今月15日を機に、ご自身の年齢や家族構成、これからの就労・住環境に照らし合わせ、該当する給付がないかを総点検してみてください。

さらに、記事後半で触れた通り、公的給付で収入の土台を固めると同時に、スマホのプラン見直しや不要なサブスクリプションの解約など「支出の無駄」を削る両面作戦を実行すれば、家計の防衛力は高まります。

届いた封筒や案内書類を放置せず、自ら動いて獲得したお金と賢い節約術こそが、これからのインフレ時代を安心して歩んでいくための盾となるでしょう。

参考資料

柴田 充輝