2026年現在、政府が推進する「資産運用立国のアップグレード」に向けた議論が進み、公的年金にプラスする自助努力の手段としてNISAやiDeCo(イデコ)への関心が高まっています。

そうした中で、「自分は毎月いくらまでiDeCoの掛金を出せるのだろうか」とお調べの方もいらっしゃるのではないでしょうか。

自営業者や専業主婦(主夫)の方とは異なり、会社員(第2号被保険者)のiDeCoの限度額は、お勤め先の「企業年金(確定給付企業年金=DB、企業型確定拠出年金=DCなど)」の有無によって細かく定められています。

さらに、2024年12月の制度改定により、DBに加入している会社員の方などの上限額が拡充されるなど、環境の変化が見られます。

本記事では、厚生労働省の公的資料に基づき、現在の会社員のiDeCo上限額ルールを紐解きます。

あわせて、ご自身がどの制度に該当するのかを確認するための実務的なステップを整理して解説します。

1. この記事の3つのポイント

  •  会社員の限度額: 企業年金がない場合は月額2.3万円、企業型DC等の加入状況に応じて月額1.2万円〜最大2万円となる傾向がある。
  •  DB加入者の上限見直し: 確定給付企業年金(DB)等に加入している会社員の上限額は、他制度との合算枠(月額5.5万円)の範囲内で「最大月額2万円」まで設定可能となった。
  •  自社制度の確認方法: 人事・総務部への問い合わせや、就業規則、給与明細の記載を確認することで、ご自身の上限額を判定しやすくなる。
齊藤 慧

元・厚生労働省担当記者として社会保障制度を取材してきた視点からお伝えすると、日本の企業年金制度は多層的で複雑に設計されています。iDeCoを検討する際に「自身の会社はDBかDCか、あるいは制度がないのか」を確認する作業は、単にiDeCoの限度額を知るだけでなく、将来受給する「退職金・企業年金」の全体像を把握する契機にもなります。

上限額いっぱいまで拠出することだけに囚われるのではなく、まずはご自身の現在の保障体制を客観的に確認した上で、ライフプランに合わせた活用をご検討いただくのが現実的なアプローチと言えます。

※本記事は、編集部および執筆者が厚生労働省などが公表する公式資料を確認の上、執筆・検証しています。

2. 会社員のiDeCo上限額は「会社の年金制度」で決まる

会社員(国民年金の第2号被保険者)がiDeCoで積み立てられる毎月の掛金上限額は、一律ではありません。勤務先がどのような「退職給付制度(企業年金)」を導入しているかによって、主に3つのパターンに分類されます。

  • 企業年金がない会社員: 月額2万3000円(年額27万6000円)
  • 企業型確定拠出年金(企業型DC)のみ加入している会社員: 月額最大2万円(年額24万円) 
  • 確定給付企業年金(DB)等に加入している会社員: 月額1万2000円〜最大2万円(※他制度の掛金相当額による)

企業年金制度を持たない会社にお勤めの場合、公的年金に上乗せする私的年金枠を確保しやすいよう、iDeCoの非課税枠(上限額)が最も大きく設定されています。

3. 確定給付企業年金(DB)加入者の上限引き上げルール

確定拠出年金の拠出限度額の見直しに伴うDBの対応1/1

確定拠出年金の拠出限度額の見直しに伴うDBの対応

出所:厚生労働省「確定給付企業年金制度の主な改正」

かつて、確定給付企業年金(DB)に加入している会社員の方などのiDeCo掛金上限額は「月額1万2000円」に固定されていました。しかし、2024年12月施行の制度改定により、この上限額の計算方法が見直されました。

3.1 制度改定のポイント:最大2万円までの拡大

確定給付企業年金(DB)等に加入している会社員であっても、他制度(DB等の他制度掛金相当額)との合算枠(月額5万5000円)の範囲内であれば、iDeCoの掛金上限額を「月額1万2000円から最大2万円」まで設定できるケースが生じています。

例えば、会社のDBの掛金相当額が月額1万5000円程度と評価されている場合、全体枠である5万5000円まで十分なゆとりがあるため、iDeCoで月額2万円まで拠出できる可能性があります。

一方で、自社のDB制度の手厚さ(掛金相当額が大きい場合)によっては、上限額が従来通り月額1万2000円付近にとどまる場合もあります。

4. 実務のステップ:自社の企業年金(DB/DC)を確認する3つの方法

「ご自身がどのパターンに該当するか分からない」というケースは少なくありません。上限額を正確に把握するためには、以下の方法で勤務先の制度を確認するのがスムーズです。

  • 人事・総務担当部署へ確認する 最も確実な方法です。「iDeCoの加入(または金額変更)を検討しているため、自社の年金制度の種別と、自身の拠出限度額を確認したい」と照会することで、正確な案内を受けられます。
  • 就業規則や退職金規程を確認する 社内イントラネットなどで閲覧できる規程集において、「確定給付企業年金」「企業型確定拠出年金」といった記載があるかを確認します。
  • 給与明細の控除項目をチェックする 給与明細の控除欄に「企業年金掛金」「DC掛金」などの項目がある場合、何らかの制度に加入している目安となります。また、企業型DCに加入している場合は、運用管理機関から「お取引状況のお知らせ」等の通知が届いているかどうかも確認材料となります。