5. 企業型DCとiDeCoの併用および「マッチング拠出」との関係

企業型DC(企業型確定拠出年金)が導入されている会社にお勤めの場合、原則としてiDeCoとの併用(同時加入)が可能です。ただし、実務上留意したい点として「マッチング拠出」との兼ね合いが挙げられます。

5.1 マッチング拠出とは

企業型DCにおいて、会社が拠出する掛金に加えて、加入者本人が給与から掛金を上乗せして積み立てられる仕組みを「マッチング拠出」と呼びます。 留意点として、「企業型DCでマッチング拠出を利用している期間中は、原則としてiDeCoに加入して掛金を拠出することはできない(どちらか一方を選択するルール)」と規定されています。

マッチング拠出は口座管理手数料を会社側が負担するケースが多い一方、iDeCoは取扱機関や運用商品を個人で自由に選べるという特徴があります。ご自身の意向に合わせてどちらを活用するか比較検討してみるのも一つの選択肢です。

6. 掛金を設定する際の留意ポイント(資金の流動性)

ご自身の上限額が「月額2万円」や「2万3000円」と確認できた際、上限額いっぱいまで設定することを考える方もいらっしゃいますが、生活資金とのバランスを考慮することが大切です。

6.1 留意すべきポイント:原則60歳まで引き出し不可

iDeCoは老後資産の形成を目的とした制度であるため、原則として60歳に達するまで積立金を引き出すことができません。

毎月の生活資金にあまり余裕がない状態で限度額いっぱいに設定してしまうと、将来のライフイベント(住宅購入や教育費、急な出費など)への対応が難しくなる場面も想定されます。

iDeCoの掛金は、年1回(12月〜翌年11月の間で1回)変更することが可能です。そのため、最初は月額5000円などの少額から開始し、家計の収支や貯蓄の状況を見極めながら段階的に金額を調整していくという方法も考えられます。

7. まとめ

会社員のiDeCo掛金上限額と、自社の制度を確認するポイントは以下の通りです。

  1. 基本の上限額: 企業年金のない会社員は月額2万3000円、企業型DCのみの場合は月額2万円までとなる傾向がある。 
  2. DB加入者の上限ルール: 確定給付企業年金(DB)等に加入している場合、他制度との合算枠(月額5.5万円)の範囲内で月額1万2000円から最大2万円まで設定できるケースがある。
  3. 確認のステップ: どの制度に加入しているかは、人事・総務部への照会や、就業規則、給与明細から確認できる。
  4. マッチング拠出との関係: 企業型DCでマッチング拠出を選択している場合、原則としてiDeCoの併用はできない。
  5. 無理のない設定: 原則60歳まで資金がロックされるため、上限額の範囲内であっても生活に支障のない余剰資金での設定が推奨される。

ご自身の限度額を正しく把握することは、将来に向けた資産形成の土台作りにつながります。まずは勤務先の制度を客観的に確認し、ご自身のライフプランに合った活用方法を検討してみてはいかがでしょうか。

8. 執筆者コメント:制度の仕組みを理解し、客観的な事実に基づいた判断を

齊藤 慧

iDeCoの限度額ルールは「DB」「DC」「マッチング拠出」などの専門用語が多く、把握にハードルを感じられるかもしれません。しかし、これらはご自身の将来の資産形成に直接かかわる規定です。 公的データや各種統計を分析すると、制度の仕組みを正しく把握しているかどうかで備えの選択肢に違いが生じる傾向が見受けられます。「分からないから放置する」のではなく、まずは社内の窓口に「自身のiDeCo限度額はどうなるか」と確認してみるという小さな行動が、確実な家計管理の一歩になると考えています。

9. よくある質問

9.1 Q1. iDeCoの掛金額は、途中で変更することができますか?

A. 掛金額の変更は、原則として毎年1回(12月から翌年11月までの間で1回)行うことが可能です。毎月頻繁に変更することはできないため、あらかじめ無理のない金額で設定しておくことが推奨されます。

9.2 Q2. 自分がどの企業年金に加入しているか分からない場合、どうすればよいですか?

A. 勤務先の人事部や総務部など、労務・福利厚生を担当している窓口へ問い合わせるのが最も確実です。「iDeCoに加入(または金額変更)したいため、自社の年金制度の加入状況と自身の拠出限度額を確認したい」とお伝えいただくことで、正確な情報を把握しやすくなります。

9.3 Q3. 企業型DCでマッチング拠出を行っている場合、iDeCoも同時に利用できますか?

A. 原則として、企業型DCのマッチング拠出(加入者本人が掛金を上乗せする仕組み)と、iDeCoの掛金拠出を同時に利用することはできません。どちらか一方を選択して利用する規定となっています。

9.4 Q4. 転職によって会社の年金制度が変わった場合、手続きは必要ですか?

A. 転職等により勤務先が変わった場合、または勤務先の年金制度が変更された場合は、iDeCoの掛金上限額が変わる可能性があります。その際は、利用している運営管理機関(金融機関)へ「加入者登録事業所変更届」等の書類を提出する手続きが必要となります。手続きを行わない場合、引き落としが停止するケースもあるためご留意ください。

9.5 Q5. 会社員以外の加入区分での上限額はいくらですか?

A. 加入区分によって上限額が異なります。公務員(第2号被保険者)は原則月額1万2000円です。自営業者やフリーランス等の第1号被保険者は国民年金基金等との合算で月額6万8000円まで設定可能です。また、専業主婦・主夫等の第3号被保険者は月額2万3000円となっています。※2026年12月から引き上げ予定

参考資料

齊藤 慧