6月も中旬に入り、雨の季節が本格化してきました。
将来の生活設計を考える際、ご自身の老齢年金には関心が高くても、「遺族年金」まで詳しく調べている方は少ないかもしれません。
しかし、パートナーや家族に万が一のことがあった場合、遺族年金は残された家族の生活を支える大切なセーフティネットとなります。
その遺族厚生年金が、2028年4月から大きく見直されることになりました。
「自分は対象になるのだろうか」「給付が減ってしまうのでは」と、不安に感じている方もいらっしゃるのではないでしょうか。
この記事では、2028年4月から施行される遺族厚生年金の見直しについて、その重要なポイントをわかりやすく解説します。
1. 遺族厚生年金とはどのような制度か?
遺族年金は、亡くなった方が保険料の納付といった要件を満たしていた場合に、残された遺族が受け取れる公的年金制度です。
会社員や公務員などが加入する厚生年金保険において、この遺族への給付は「遺族厚生年金」と呼ばれています。
「遺族年金と老齢年金は何が違うの?」と疑問に思う方もいるかもしれません。
簡単に説明すると、老齢年金は自分自身が高齢になったときに受け取るもので、遺族年金は大切な家族が亡くなった後に受け取るもの、と理解するとわかりやすいです。
2025年5月に提出され、6月13日に成立した年金制度改正法(正式名称:社会経済の変化を踏まえた年金制度の機能強化のための国民年金法等の一部を改正する等の法律)によって、この遺族厚生年金の受給期間や対象者が見直されることになりました。
2. 2028年4月からの遺族厚生年金見直し、対象となるのは?
2028年4月から施行される「遺族厚生年金」の見直しで、主な対象となるのは「18歳年度末までのこどもがいない方」です。
変更内容は男女で異なるため、それぞれについて見ていきましょう。
2.1 【女性】30歳代も5年間の有期給付へ
施行直後から5年間のみ支給される「有期給付」の新たな対象となるのは、2028年度末時点で40歳未満の女性です。
実は、20歳代の女性に関しては、これまでの制度でもすでに5年間の有期給付が適用されていました。
今回の見直しにより、30歳代の女性も新たに有期給付の対象に加えられます。
対象者数は、推計で年間約250人とされています。
2.2 【男性】新たに有期給付の対象が拡大
男性については、今回の見直しで給付内容が「拡充」されます。
これまで有期給付の対象外であった、18歳年度末までのこどもがいない60歳未満の男性が、新たに5年間の有期給付を受け取れるようになります。
推計によると、年間で約1万6000人もの男性が新たに対象となる見込みです。
これまで遺族厚生年金を受け取れなかった男性にとって、生活を立て直すための後押しとなる変更といえるでしょう。
3. 今回の制度見直しで影響を受けないケースとは?
制度が変わると聞くと、「自分の給付が急に減るのではないか」と心配になる方もいるでしょう。
しかし、以下のいずれかに該当する方は、今回の見直しによる影響を受けません。
- すでに遺族厚生年金を受給している方:現在、給付を受けている方の受給内容に変更はありません。
- 60歳以降に受給権が発生する方:受給する権利を得た時点で60歳以上の方は、今回の制度変更の対象にはなりません。
- 18歳年度末までのこどもを養育している方:子育て期間中は、現行制度と同じ扱いとなり、見直しの影響は受けません。
- 2028年度末時点で40歳以上になる女性:制度が施行される時点で40歳に達している女性も、対象から外れます。
「自分が該当するかどうかわからない」という場合は、施行までまだ時間がありますので、お近くの年金事務所へ相談してみるのも一つの方法です。
4. 有期給付への移行で給付内容は手厚くなる?
「5年間しか受け取れないのは不安だ」と感じる方もいるかもしれません。
しかし、今回の見直しでは給付期間が短くなる一方で、受け取る金額は増額されるという変更点もあります。
4.1 受給額は約1.3倍に増額される「有期給付加算」
5年間の有期給付の対象となった場合、従来の遺族厚生年金の額に新たに「有期給付加算」が上乗せされます。
これにより、受給期間中の年金額は、現在の遺族厚生年金の額と比較して約1.3倍になります。
大切な家族を亡くした後の生活再建に向けて、短期間に集中してサポートするという考え方です。
4.2 5年経過後も受給可能な「継続給付」の仕組み
5年間の有期給付が終了した後も、すべての方の給付が打ち切られるわけではありません。
障害状態にある方(障害年金受給権者)や、就労による収入が一定の水準以下の方は、引き続き増額された遺族厚生年金を受け取れる「継続給付」という仕組みが設けられます。
収入の目安として、単身の方であれば就労収入が月額約10万円(年間122万円以下)の場合、継続給付が全額支給されます。
また、夫と死別した妻が「寡婦」に該当するケースでは、年間204万円程度までが全額支給の対象です。
収入が増加すると年金額は段階的に調整されますが、月収が20万円から30万円を超えたあたりで継続給付は全額支給停止となる見込みです。
5. 子育て世帯への支援は拡充される方向へ
「子育て中の家庭への支援が削られてしまうのでは」という心配の声も聞かれるかもしれません。
しかし、こどものいる世帯への支援は今回の見直しによって削られることはなく、一部はむしろ拡充される内容となっています。
5.1 こどもが18歳年度末を迎えるまでは現行制度を維持
18歳年度末までのこどもがいる場合、そのこどもが18歳年度末になるまでは現在と同じ扱いが継続されます。
この期間は、今回の見直しの影響を全く受けません。
5.2 こどもが18歳になった後も5年間の支援が継続
こどもが18歳になった後も、そこからさらに5年間は有期給付および継続給付の対象となります。
子育てが一段落した後の生活の立て直しにも猶予期間が設けられている点は、心強いポイントといえるでしょう。
5.3 遺族基礎年金の子どもへの加算額も増額へ
さらに、遺族基礎年金における「こどもがいる場合の加算額」が増額されます。
これまで年間23万5000円だった加算額が、年間約28万2000円へと引き上げられる予定です(※2024年度の年額)。
子育て世帯に対する経済的な支援が、より充実した内容に変更されます。
6. まとめ:制度変更を理解し将来に備えよう
今回の遺族厚生年金の見直しは、「有期給付への移行」と「給付額の増額」を組み合わせることにより、より支援を必要とする人へ届きやすい制度へと再構築するものといえます。
すでに受給中の方や子育て中の方には不利益が生じないように配慮されており、子育て世帯への加算額は増額されることになりました。
施行は2028年4月とまだ先ですが、「自分やパートナーは対象になるのか」「万が一のときの備えは十分か」をこの機会に確認しておくことは、将来のライフプランを考える上で重要です。
制度の細かな条件は今後さらに周知が進むと考えられますが、まずは「このような変化がある」と知っておくだけでも、いざというときの備えの第一歩になるでしょう。
※当記事は再編集記事です。
6.1 【参考】遺族厚生年金の平均的な受給額
参考資料
- 日本年金機構「遺族年金ガイド 令和8年度版」
- 厚生労働省「遺族厚生年金の見直しについて」
- 厚生労働省「令和6年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」
- LIMO「2028年4月から施行予定「遺族厚生年金」の見直し、どんな人が影響を受ける?ポイントをわかりやすく解説」
マネー編集部年金班