10月の給与明細で、社会保険料の天引き額が9月までと変わっている人もいるのではないでしょうか。その理由は、毎年9月分から社会保険料の基準となる「標準報酬月額」が見直されるためです。
多くの会社では、前月分の社会保険料を当月の給与から差し引いています。そのため、9月分から変わった保険料は、10月に支払われる給与から天引きされることになります。
この記事では、社会保険料が決まる「定時決定」の仕組みを確認したうえで、東京都の協会けんぽの場合に標準報酬月額ごとに毎月いくら天引きされるのかを整理します。あわせて、年の途中で保険料が変わる「随時改定」と、10月から順次改定される最低賃金と社会保険の加入要件の関係も見ていきます。
1. 【社会保険料】10月の給与で天引き額が変わるのは「定時決定」のため
会社員が加入する健康保険や厚生年金保険の保険料は、毎月の給与の額そのものではなく、「標準報酬月額」をもとに計算されます。標準報酬月額は、給与を一定の幅で区分した等級にあてはめて決まる金額です。
1.1 4月・5月・6月の報酬の平均で、9月分から1年間の保険料が決まる
日本年金機構によると、標準報酬月額は、毎年7月1日時点で働いている人について、4月・5月・6月に受けた報酬の平均額をもとに決め直されます。これを「定時決定」といいます。
定時決定で決まった標準報酬月額は、9月から翌年8月までの各月に適用されます。3か月の報酬は、いずれも支払基礎日数(給与計算の対象となる日数)が17日以上の月が対象です。
1.2 前月分の保険料を差し引くため、反映されるのは10月の給与から
事業主は、当月に支払う給与から前月分の保険料を差し引くことができ、日本年金機構は「5月の給料支払日には4月分の保険料を差し引く」という例を示しています。
この方法で天引きしている会社では、新しい標準報酬月額にもとづく9月分の保険料が、10月に支払われる給与から差し引かれます。10月の給与明細で天引き額が変わるのは、このためです。
1.3 基本給だけでなく、残業手当や通勤手当も含まれる
標準報酬月額の対象となる報酬には、基本給のほか、役付手当、家族手当、通勤手当、住宅手当、早出残業手当なども含まれます。税金を差し引く前の金額で計算されます。
そのため、4月から6月に残業が多かった人や、通勤手当が増えた人は、標準報酬月額が上がり、9月分からの保険料も上がることがあります。
2. 【社会保険料】東京都の協会けんぽなら、標準報酬月額30万円で天引きは月いくら?
では、実際に毎月いくら天引きされるのでしょうか。中小企業の会社員などが加入する協会けんぽの、東京都の保険料率で確認します。
2.1 健康保険料率は9.85%、厚生年金保険料率は18.3%を会社と折半
協会けんぽ東京支部の健康保険料率は、2026年3月分(4月納付分)から9.85%です。40歳から64歳までの人は、これに全国一律の介護保険料率1.62%が加わります。
厚生年金保険料率は18.3%です。日本年金機構によると、厚生年金保険料率は2017年9月を最後に引き上げが終わり、18.3%で固定されています。いずれの保険料も、会社と本人が半分ずつ負担します。
2.2 2026年4月分からは子ども・子育て支援金0.23%も加わった
2026年4月分(5月納付分)からは、健康保険料とあわせて「子ども・子育て支援金」が徴収されています。協会けんぽの支援金率は0.23%で、これも会社と本人で折半します。
標準報酬月額30万円の場合、本人負担は健康保険料1万4775円、子ども・子育て支援金345円、厚生年金保険料2万7450円で、合計4万2570円です。40歳から64歳の人は介護保険料2430円が加わり、合計4万5000円になります。
2.3 40〜64歳なら、本人負担は標準報酬月額の15%
東京都の協会けんぽの場合、40歳から64歳の人の保険料率を合計すると、健康保険料9.85%、介護保険料1.62%、子ども・子育て支援金0.23%、厚生年金保険料18.3%で30.0%です。本人負担はその半分なので、標準報酬月額の15%にあたります。
標準報酬月額20万円なら月3万円、40万円なら月6万円、50万円なら月7万5000円が天引きされる計算です。40歳未満の場合は、20万円で2万8380円、40万円で5万6760円、50万円で7万950円になります。
東京都の協会けんぽの保険料率で計算した、標準報酬月額ごとの本人負担です。3/5
出所:協会けんぽ「令和8年3月分(4月納付分)からの健康保険・厚生年金保険の保険料額表(東京支部)」をもとにLIMO編集部作成
健康保険料率は都道府県や加入している健康保険組合によって異なります。正確な天引き額は、給与明細や勤務先の健康保険の保険料額表で確かめてください。
3. 【社会保険料】年の途中でも変わる「随時改定」。昇給や時給アップの4か月目から
定時決定で決まった標準報酬月額は原則として1年間使われますが、年の途中で給与が大きく変わった場合には見直されます。これを「随時改定」といいます。
3.1 随時改定の3つの要件
日本年金機構によると、随時改定は次の3つの要件にすべて当てはまる場合に行われます。
- 昇給または降給などにより、固定的賃金に変動があった
- 変動月から3か月の報酬の平均で算出した標準報酬月額と、従前の標準報酬月額との間に2等級以上の差が生じた
- 3か月とも支払基礎日数が17日(特定適用事業所に勤務する短時間労働者は11日)以上ある
要件を満たすと、変動後の報酬を初めて受けた月から数えて4か月目の標準報酬月額から改定されます。
3.2 時給の引き上げも「固定的賃金の変動」にあたる
固定的賃金の変動の例として、日本年金機構は昇給・降給のほか、「日給や時間給の基礎単価の変更」や、住宅手当・役付手当などの固定的な手当の追加・変更を挙げています。
一方、残業手当だけが一時的に増えた場合は、固定的賃金が変わっていないため随時改定の対象になりません。また、固定的賃金は上がったものの残業手当が減って全体の平均が下がった場合なども、対象外とされています。
最低賃金の改定などで時給が上がった場合は、固定的賃金の変動にあたります。ただし、随時改定には2等級以上の差が必要なため、時給の引き上げだけで必ず改定されるわけではありません。