梅雨の季節を迎え、雨に濡れた紫陽花が美しい6月中旬となりました。

このような時期に、少し先の将来、特に老後の生活について思いを巡らせる方もいらっしゃるのではないでしょうか。

老後の生活を支える収入の柱となるのが公的年金ですが、「自分は一体いくらもらえるのか」「その金額で本当に生活できるのか」といった疑問は尽きないものです。

年金の受給額は、単に現役時代の年収だけで決まるわけではなく、加入していた制度や働き方によって大きく変動します。

特に、国民年金のみに加入していた場合と、厚生年金にも加入していた場合とでは、将来受け取る金額に大きな差が生まれます。

この記事では、日本の公的年金制度の基本的な仕組みを解説し、「平均年収400万円で38年間勤務」という具体的なモデルケースをもとに、将来の年金受給額の目安を試算します。

さらに、実際の年金受給者のデータや、年金の額面から天引きされる税金・社会保険料の影響にも触れながら、老後資金の現実的な水準について一緒に考えていきましょう。

1. あなたの年金タイプは?「国民年金」と「厚生年金」の基本的な違い

生涯の平均年収が400万円であったとしても、38年間の就業期間中に厚生年金へ加入していたかどうかで、老後に受け取る年金額は大きく変わります。

そこで、まずは公的年金の基本的な構造について理解を深めておきましょう。

日本の公的年金制度は、国民年金と厚生年金からなる「2階建て」の構造になっています。

1階部分が基礎となる国民年金(基礎年金)で、その上に2階部分として厚生年金が乗っているイメージです。

  • 第1号被保険者:自営業者、学生、無職の方など
  • 第2号被保険者:会社員、公務員
  • 第3号被保険者:第2号被保険者に扶養されている配偶者

国民年金は、日本国内に住む20歳以上60歳未満のすべての人が加入する制度です。

保険料は原則として一律なので、将来受け取る年金額に大きな差は生じにくい仕組みといえます。

一方、厚生年金は国民年金に上乗せして支給される制度で、主に会社員や公務員が加入対象となります。

保険料が収入に応じて変動するため、受給額も個人によって差が出やすいのが特徴です。

次の章では、国民年金と厚生年金の両方を受け取るケースを想定し、「平均年収400万円」「勤続38年」の条件で、老後の年金月額がいくらになるのかを具体的に見ていきます。

2. 【試算】平均年収400万円で38年勤務した場合の年金受給額(厚生年金+国民年金)

この章では、生涯の平均年収が400万円で、民間企業に38年間勤務したというモデルケースを使い、以下の前提条件で老後に受け取れる年金額の目安を計算します。

  • 2003年4月以降、厚生年金に38年間加入
  • 国民年金は20歳から60歳までの40年間のうち、学生期間の2年間は学生納付特例を利用(追納なし)し、保険料の納付期間は実質38年
  • 配偶者や扶養家族はいないものとする

2.1 厚生年金の受給額目安

厚生年金の受給額は、所定の計算式を用いて算出されます。

年金額=報酬比例部分+経過的加算+加給年金額

「経過的加算」とは、定額部分の額が老齢基礎年金の額より多い場合にその差額を補うもので、「加給年金」は生計を共にする配偶者や子がいる場合に支給される年金です(どちらも一定の要件を満たす必要があります)。

今回の試算では、年金額の核となる「報酬比例部分」に絞って計算するため、「経過的加算」と「加給年金額」は計算に含めません。

報酬比例部分は、以下の計算式で算出します。

報酬比例部分の計算式2/5

報酬比例部分の計算式

出所:日本年金機構「は行 報酬比例部分」

報酬比例部分=A+B

  • A(2003年3月までの加入期間):平均標準報酬月額×7.125/1000×2003年3月までの加入期間の月数
  • B(2003年4月以降の加入期間):平均標準報酬額×5.481/1000×2003年4月以降の加入期間の月数

「平均標準報酬月額」は、2003年3月以前の加入期間が対象で、各月の標準報酬月額の合計を加入月数で割って求めます。

それに対し「平均標準報酬額」は、2003年4月以降の加入期間を対象に、標準報酬月額と標準賞与額の合計をその期間の加入月数で割って算出するものです。

仮に、2003年4月以降に38年間厚生年金に加入し、生涯の平均年収が400万円だったとします。

この場合、賞与を含めた年収の12分の1である約33万3000円が、平均標準報酬額の目安と考えられます。

この条件で簡易的に計算すると、厚生年金の年額は約83万円になります。

2.2 国民年金の受給額目安

厚生年金に加入している会社員や公務員は「第2号被保険者」となり、将来は国民年金と厚生年金の両方を受け取ることになります。

ここでは、1階部分にあたる国民年金の受給額を見ていきましょう。

国民年金の受給額は、次の計算式で求められます。

満額の84万7300円に、「保険料を納めた月数 ÷ 加入可能月数」を掛けて算出します(※昭和31年4月2日以降に生まれた方が対象)。

もし、22歳から60歳までの38年間(456カ月)保険料を納付した場合、国民年金として受け取れる年額は「約80万円」です。

これらの試算を合計すると、「年収400万円」で「38年間」勤務したケースでは、国民年金と厚生年金を合わせた受給額は年額で約163万円、月額に換算すると約13万6000円という結果になります。

3. 実際の年金受給額はどのくらい?現在のシニア世代の状況

前の章では、「平均年収400万円」「勤続38年」というモデルケースで、受け取れる年金月額の目安を試算しました。

それでは、現在実際に年金を受給しているシニア世代は、どのくらいの金額を受け取っているのでしょうか。

厚生労働省年金局が公表した「令和6年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」によれば、国民年金を含む厚生年金受給者の状況は以下のようになっています。

国民年金を含む厚生年金の受給者数4/5

国民年金を含む厚生年金の受給者数

出所:厚生労働省年金局「令和6年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」

  • 10万円未満の割合:19.0%
  • 10万円以上の割合:81.0%
  • 15万円以上の割合:49.8%
  • 20万円以上の割合:18.8%
  • 20万円未満の割合:81.2%
  • 30万円以上の割合:0.12%

国民年金と厚生年金の両方を受け取っている人のうち、月額15万円以上を受給している割合は全体の約49.8%と、およそ半数を占めています。

一方で、今回の試算額である月額約13万円を下回る人も、分布データを見ると全体の約38.7%いることがわかります。

ただし、ここで示されている金額はすべて額面であり、実際に受け取る手取り額は税金や社会保険料が差し引かれるため、この点には注意が必要です。

4. 注意点:年金の額面から天引きされる税金・社会保険料はどれくらい?

これまでの章で「平均年収400万円で38年間勤務した場合」の年金額の目安を示しましたが、その金額はあくまで額面であり、全額を受け取れるわけではありません。

年金は現役時代の給与と同じように、税金や社会保険料が天引きされる仕組みになっており、実際に手元に残る金額は額面よりも少なくなります。

年金から天引きされる主な税金や社会保険料には、以下のようなものがあります。

  • 所得税
  • 住民税
  • 健康保険料(国民健康保険料・後期高齢者医療保険料)
  • 介護保険料

参考として、総務省「家計調査報告 家計収支編 2025年(令和7年)平均結果の概要」を基に、65歳以上の単身無職世帯の家計収支を見てみましょう。

65歳以上の単身無職世帯における収支状況5/5

65歳以上の単身無職世帯における収支状況

出所:総務省「家計調査報告 家計収支編 2025年(令和7年)平均結果の概要」

  • 実収入(額面の金額):13万1456円
  • 可処分所得(手取り収入):11万8465円
  • 消費支出:14万8445円
  • 非消費支出(税金・社会保険料):1万2990円

このデータでは、年金などによる実収入13万1456円に対し、税金や社会保険料として1万2990円が天引きされ、最終的な手取り額は11万8465円となっています。

天引きされる金額は、住んでいる地域や収入額、世帯構成などによって変わりますが、一般的には収入の10%から15%程度が差し引かれることが多いようです。

5. まとめ:年金額は制度・働き方・手取り額を総合的に理解しよう

この記事では、日本の公的年金制度の基本を整理し、「平均年収400万円・38年間勤務」というモデルケースで将来の年金額の目安を解説しました。

今回の試算では、国民年金と厚生年金を合わせた年金月額は約13万6000円という結果になりました。

しかし、実際の受給データを見ると、月額15万円以上を受け取っている人が約半数を占める一方で、13万円に満たない人も一定数おり、年金額には大きな個人差があることがわかります。

さらに重要なのは、年金は額面通りには支給されず、税金や社会保険料が天引きされるため、手取り額は額面より10%から15%程度少なくなるという点です。

これらのことを考えると、老後の資金計画を立てる上では、年金の額面だけでなく、制度の仕組みや実際の手取り額まで含めて総合的に把握することが大切といえるでしょう。

※当記事は再編集記事です。

参考資料

安達 さやか