6. なぜ医療費は増えやすい?負担が減りにくい制度上の特徴
6.1 一度増えると減りにくい医療費という支出
老後の支出の中でも、医療費には特有の傾向があります。
それは、一度増え始めると以前の水準には戻りにくいという点です。
趣味や交際費であれば、家計の状況に応じて調整することもできますが、医療費は体調や治療方針に左右されるため、自己判断だけでコントロールするのは難しい支出といえます。
厚生労働省の「令和5年度 国民医療費の概況」によると、2023年時点における65歳以上の1人あたり国民医療費は年間で79万7200円です。
75歳を超えるとさらに増え、1人あたりの医療費は年間約95万円にまで拡大します。
6.2 加齢に伴い受診する診療科が増える傾向
75歳を過ぎると、一つの病気だけでなく、複数の症状や慢性的な不調を抱える人が増えてきます。
その結果、内科に加えて整形外科や眼科、歯科など、受診する診療科が徐々に増えていくことも珍しくありません。
通院回数や薬代が増えることで、医療費は一時的な出費ではなく、毎月発生する継続的な支出へと変わっていきます。
6.3 治療後も継続する「定期的な医療費」の存在
治療が一段落した後も、再発防止や経過観察のための通院・検査が長期にわたって続くことがあります。
こうした医療費は突発的なものではなく、むしろ固定費のような性質を持ち、家計に継続的な負担をかけ続けます。
6.4 自己負担割合の差が将来の家計に与える影響
医療費の支払いが長期化するほど、窓口での自己負担割合の違いは無視できなくなります。
1割・2割・3割という差は1回ごとでは小さく感じても、数年単位で見れば支払総額に大きな違いを生み出します。
負担割合が高いほど医療費は生活費を圧迫しやすくなり、結果として貯蓄を取り崩すペースにも影響を及ぼします。
6.5 長期的な視点で考えるべき「見えにくい」家計への影響
医療費は、すぐには家計を圧迫しなくても、数年後にじわじわと影響を及ぼす支出です。
表面上は家計を維持できているように見えても、医療費の増加が続けば資産残高への影響は確実に大きくなります。
老後の家計を考える上では、現在の支出だけでなく、「医療費が増えた状態が続く可能性」を前提として、長期的な視点で備えることが重要です。
