4. 後期高齢者医療制度の注意点:「世帯単位の判定」がもたらす影響とは
後期高齢者医療制度では、窓口負担割合を判定する際、個人の収入だけでなく、同じ世帯にいる後期高齢者全員の所得を合算して判断する仕組みが採用されています。
そのため、「本人の収入が少ないから負担も軽いはず」とは限らない点に注意が必要です。
例えば、ご自身の年金収入がそれほど多くなくても、同居する配偶者などに一定以上の所得があれば、世帯全体で「現役並み所得者」と判定されるケースがあります。
この場合、医療機関での自己負担割合は3割になってしまいます。
判断基準で特に重要なのが、世帯内に課税所得145万円以上の後期高齢者がいるかどうかです。
該当者がいる世帯は、原則として現役並み所得者と見なされ、3割負担となる可能性が高まります。
特に、夫婦の一方に収入や年金が集中している世帯では、単身世帯に比べて世帯合算の基準額を超えやすい傾向が見られます。
個人の所得だけでなく、配偶者を含めた世帯全体の所得水準で負担割合が決まるという制度の仕組みを、事前に理解しておくことが大切です。
5. 高齢期の医療費負担に対する不安の現状と背景
高齢期の生活に関する実態は、統計データだけでなく、日々の暮らしの中でも感じられるようになっています。
実際に、生命保険文化センターの「生活保障に関する調査」2025(令和7)年度によると、「老後の生活に不安を感じる」と答えた人は83.2%に達しており、多くの人が将来への備えに課題意識を持っていることがわかります。
また、J-FLEC(金融経済教育推進機構)の「家計の金融行動に関する世論調査 2025年」によれば、70歳代の単身世帯のうち35.5%が「日々の生活費を賄うこと自体が困難」と回答しており、年金を中心とした生活の厳しさが数字で示されています。
では、こうした不安はどこから来るのでしょうか。
生活にゆとりが持てない理由として「高齢期の医療費負担の増加」を挙げる声も多く、二人以上世帯では30.0%にのぼります。
これは、およそ3世帯に1世帯が、将来の医療費増を家計のリスクとして捉えていることを示しています。
これらの結果からわかるのは、老後の不安が単なる生活費の不足だけでなく、医療費や介護費といった将来的に増加しやすい支出と深く関わっているという点です。
平均寿命が延びて老後の期間が長くなる中で、「どのくらいの支出が、どの程度の期間続くのか」という見通しが立てにくいことが、不安をさらに大きくしているといえるでしょう。
次に、このような不安の背景にある医療費の特性について、具体的に見ていきます。

