2026年6月15日には、4月改定後の新しい年金額が初めて振り込まれます。

ただし、老後の暮らしを左右する要素は、受け取れる年金額だけではありません。健康、特に認知機能の維持も家計と生活の質に直結します。

そこで本記事では、厚生年金の月額分布と、65歳以上の約15%が該当するとされる軽度認知障害(MCI)について、厚生労働省の最新データを確認します。自分や家族の状況を見直す材料として、参考にしてみてください。

1. 年金改定額は増額でも実質目減り?厚生年金「月10万未満」は全体の約2割

1.1 2024年度(令和6年度)の概況に見る月額分布

厚生労働省「令和6年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」によると、2025年3月末時点の厚生年金(第1号)老齢年金受給権者は1608万5696人でした。

平均年金月額は15万0289円です。男性平均は16万9967円、女性平均は11万1413円で、男女差は月額約5万8000円あります。

この月額には国民年金(老齢基礎年金)部分も含まれており、いわゆる「国民年金+厚生年金」の合算額です。

1.2 月10万円未満は305万人、構成比は約19.0%

同概況の月額階級別データを1万円刻みで集計すると、月10万円未満の受給権者は305万3974人でした。

1608万5696人に対する構成比は約19.0%で、ほぼ5人にひとりが月10万円未満の水準です。

10万円未満の層には、繰上げ受給で減額された人、厚生年金の加入期間が短い人、女性の受給権者が多く含まれます。

女性平均が11万円台にとどまる背景には、出産や介護による就業中断、賃金カーブの違いがあります。一方で平均月額15万円台に達する受給者の多くは、男性かつ長期間にわたり厚生年金に加入していた層に集中しています。同じ「厚生年金受給者」でも、加入履歴の差が受給額に直結する構造です。

なお2026年度の年金額は前年度から1.9%引き上げられ、老齢基礎年金の満額は月7万608円となりました。新額が反映されるのは2026年6月15日支給分からです。

ただし、総務省統計局の消費者物価指数は2025年平均で前年比2.7%の上昇です。そのため、改定率1.9%は物価上昇に届かず、実質的な購買力は目減りしています。10万円未満の受給者にとって、実質負担はさらに重く感じられる場面が増えそうです。

2. 65歳以上の約15%が「軽度認知障害(MCI)」に該当

2.1 MCIは認知症の一歩手前の状態

軽度認知障害は英語でMild Cognitive Impairment、略してMCIと呼ばれます。厚生労働省の「あたまとからだを元気にする MCIハンドブック」は、MCIを「認知症の一歩手前の状態」と説明しています。

記憶力などの認知機能に低下が見られるものの、日常生活は自立して送れる段階を指します。

認知症は日常生活に支障をきたす段階ですが、MCIはまだその手前にあり、生活への影響は限定的です。早期に気づき適切に対応すれば、進行を緩やかにできる可能性があります。

2.2 年間で認知症に進む人、健康な状態に戻る人

同ハンドブックは、MCIの人がその後どのように変化するかも示しています。

1年あたり約5〜15%が認知症へ進行する一方、約16〜41%は健康な状態に戻るとされています。MCIは固定された状態ではなく、生活習慣の改善で良い方向に動かせる余地が残されている段階です。

物忘れが目立つ、同じ話を繰り返す、慣れた作業に時間がかかるといった変化は、気づきのサインになります。本人や家族がそうした変化に気づいた段階で、かかりつけ医や地域包括支援センターへ相談する流れが望まれます。

3. 年金と健康を心地よく支える3つのヒント

最後に、年金と健康を心地よく支える3つのヒントについて紹介します。

3.1 1. ライフスタイルに合わせた「働く期間の少しずつの延長」

老後の生活費にゆとりを持たせる方法として、「無理のない範囲で働く期間を伸ばす」という選択肢があります。必ずしもフルタイムである必要はなく、60歳以降も自分の体力や生活リズムに合わせて細く長く厚生年金に加入し続けることで、将来の受給額を底上げできます。

近年は法改正により、短時間労働(パート・アルバイトなど)でも厚生年金に加入しやすくなる環境が整いつつあるため、より多様な働き方が選びやすくなっています。

3.2 2. 自分のタイミングで選べる「繰下げ受給」

年金の受け取りを、原則である65歳よりも少し遅らせる「繰下げ受給」という仕組みもあります。受給を遅らせた期間に応じて年金額が「1カ月あたり0.7%」増額され、その増えた金額が生涯続きます。必ずしも最長(75歳・84.0%増)まで待つ必要はなく、1カ月単位で自由に調整できるため、ご自身の貯蓄や健康状態に合わせて「そろそろ受け取ろう」と柔軟に決められます。

3.3 3. 日常の中で心地よく続ける「健康習慣(MCI予防)」

心と体の健康、そして認知機能(MCI予防)を維持することは、充実した毎日を送るための大切な土台です。ガチガチにルールを決める必要はありません。以下のような「できることから、少しずつ」生活に取り入れてみるのがおすすめです。

  • 心地よい運動: 無理のない範囲での散歩や軽い有酸素運動
  • 美味しい食事: 野菜や魚を少し多めに意識した、バランスの良い食事
  • 楽しいつながり: 趣味の継続や、友人・地域の人との気軽なおしゃべり
  • 日々のケア: 聞こえづらさを感じたら早めに対応する、血圧や睡眠の質を整える

家計の備えと健康の備えは、決して別々の課題ではなく、お互いを支え合う関係にあります。「〜しなければならない」と焦る必要はありません。ご自身の体調と相談しながら、できる選択をマイペースに組み合わせていきましょう。

4. 受給額と認知機能を見える化して老後の計画を整えよう

厚生年金受給権者の約19.0%、5人にひとりが月10万円未満という実態は、平均月額15万0289円という数字だけでは見えない格差を示しています。

65歳以上の約15%が該当するMCIも、生活への影響が小さい段階で気づければ、進行を緩やかにする打ち手が残ります。

まずは「ねんきんネット」で自分の年金見込額を確認し、家計面の不足を把握してください。50歳以上ならねんきん定期便にも見込額が記載されています。

健康面では、最寄りの地域包括支援センターでMCIや認知症のチェックを受けられます。加入期間の延長や繰下げ受給で月額を底上げしつつ、運動・食事・社会参加で認知機能の維持に取り組んでみてはいかがでしょうか。

参考資料