「バイオハザード」や「モンスターハンター」など、世界的に人気のゲームIP(知的財産)を多数抱えるカプコン。
多くの人は同社を単なる「ゲーム会社」と認識していますが、決算書を開くと「繰延収益」や「ゲームソフト仕掛品」といった見慣れない勘定科目が並んでおり、そのビジネスモデルの実態は意外と知られていません。
一体なぜ、長年にわたって高い収益性を維持し、自己資本比率80%超という強固な財務体質を築き上げることができているのでしょうか。この秘密について、元機関投資家の泉田良輔氏がカプコンの事業構造と財務体質を分析し、業績好調の本当の理由を解説します。
この記事のポイント
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カプコンはゲームだけでなく、アミューズメント機器も高収益で、施設運営も安定して利益を出している -
販売本数で新作の約8倍に達する「過去作」が売上を積み上げるミルフィーユ型の事業構造を持つ -
開発規模は「ゲームソフト仕掛品」、将来の売上は「繰延収益」から読み取れる -
パッケージ販売からダウンロード提供へのビジネスモデルの変化が会計に表れている
自己資本比率80%超のキャッシュリッチ企業でありながら、ROE約20%の高効率経営を維持している
「ゲーム会社」にとどまらない高収益な事業構造
カプコンが発表した2027年3月期第1四半期の決算は、売上高が704億10百万円(前年同期比54.7%増)、営業利益が410億54百万円(同66.9%増)と、大幅な増収増益を記録しました。泉田氏はこの業績を支える事業構造に注目します。
3つのセグメントがすべて高利益率
カプコンの事業は、大きく「デジタルコンテンツ」「アミューズメント施設」「アミューズメント機器」の3つの報告セグメントに分かれています。
当第1四半期の売上の大部分(約78%)を占めるのは、家庭用ゲームソフトなどの「デジタルコンテンツ」事業です。この部門は売上高546億48百万円に対し、営業利益が375億97百万円と、営業利益率68.8%という高い収益性を確保しています。
しかし、カプコンの強みはゲームソフトだけではありません。泉田氏は、ゲームセンターの運営を行う「アミューズメント施設」や、パチスロ機などを展開する「アミューズメント機器」も手がけている点に言及します。当第1四半期の実績では、アミューズメント施設が売上高67億62百万円(営業利益8億99百万円、利益率13.3%)、アミューズメント機器が売上高70億97百万円(営業利益40億45百万円、利益率57.0%)となっています。
デジタルコンテンツとアミューズメント機器がいずれも高い収益性を持っており、施設運営もしっかりと利益を出していることが、カプコンの強固な収益基盤を形成しています。
カプコンのセグメント別業績(2027年3月期 第1四半期・単位:億円)1/3
出所:カプコン「2027年3月期 第1四半期決算短信」「2027年3月期 第1四半期決算概況」を基にイズミダイズム作成(単位:億円)
過去のIPが利益を生む「ミルフィーユ構造」
デジタルコンテンツ事業の好調さを紐解く鍵は、「どのタイトルが売れているのか」にあります。
当第1四半期のタイトル別販売本数を見ると、1位は2026年4月に発売された完全新規IP『プラグマタ』で251万本を記録しました。しかし、トップ10のうち実に7本が「バイオハザード」関連作品で占められています。
注目すべきは、それらの発売時期です。『バイオハザード RE:2』は2019年1月、『デビル メイ クライ 5』は2019年3月、『バイオハザード 7 レジデント イービル』に至っては2017年1月の発売であり、10年近く前の作品が今も上位にランクインしています。移植版などを含む累計販売本数を見ると、『バイオハザード RE:4』が1,604万本、『バイオハザード RE:2』が約2,000万本という規模に達しています。
実際、当第1四半期の販売本数を見ると、新作の255万本に対して、過去に発売された「リピート作」の販売本数は2,126万本と、約8倍もの規模になっています。泉田氏はこの構造を次のように分析します。
「しっかり新作も当然出してるんだけど、過去出したもののその積み上げっていうのもしっかりできている会社っていう風に、これ見るとお分かりいただけるかなと思います」
新作をヒットさせつつ、過去の名作が様々なハードウェア向けに移植され、長期間にわたって売れ続ける。タイトル一覧を見た泉田氏は、キャラクターIPを何周年といった企画で長く展開するサンリオの姿と重なる、と評しました。
こうしたIPの積み重ねが企業の評価につながる構造については、泉田氏は別の場面で次のように表現しています。
「そのシリーズで、どんどんどんどんこのミルフィーユ状に、IPを積み重ねて売上貯めていけるわけじゃないですか」
