5. 大型IPOに投資する際の注意点
では、個人投資家はこの「世紀のIPO」にどう向き合えばよいのでしょうか。
泉田氏は、AI競争においてSpaceXがGoogle、Anthropic、OpenAIといった先行プレイヤーに勝てるかどうかは「未知数」であると指摘します。
機関投資家の場合、顧客に対して投資の根拠を説明する「説明責任」があるため、期待先行で赤字の企業には高値で手を出しづらい事情があります。
一方で、個人投資家は「イーロン・マスクが好きだから」といった「推し活」的な感覚で飛び乗りやすい傾向があるため、注意が必要です。
ただし、SpaceXが単なる夢物語を語るだけの企業ではない点も、泉田氏は評価しています。
「全く何もないですよじゃないのよ。もう飛ばせますみたいなStarlinkあります、あとはちゃんと足りないものを準備して持っていくだけですみたいな話になってるから、全く架空かというとそうではないので、そこがやっぱり絶妙だなと思いますね」
すでにStarlinkという通信事業で113億ドルの売上と黒字という「実体ある土台」を築いており、その上にAIや宇宙データセンターという壮大なテーマを乗せている点が、投資家を惹きつける巧妙な構造になっています。
また、上場初日に慌てて買う必要はないとも泉田氏は語ります。過去のGoogleやFacebook(現Meta)の上場時も、最初から現在のような高評価だったわけではなく、事業の成功が確認されるにつれて株価が上昇していきました。
「上場した後にちゃんと新しいビジネスがつながるか、あとはやっぱり買収がうまくできるかみたいなところがポイントになってくるので、全然拾うチャンスあるから別に初日に買えなくてもねとは個人的には思ってる」
6. まとめ:期待と実態を見極める
SpaceXのIPOは、不可能を可能にしてきたイーロン・マスク氏への絶大な期待と、まだ実体のない宇宙データセンター構想という「夢」が入り交じった、テーマ投資の究極系とも言える案件です。
調達した約11兆円の資金がAI事業に投下され、それが本当に革新的なサービスを生み出して利益につながるのか。それとも、壮大な計画が頓挫して巨額の赤字だけが残るのか。上場後も四半期ごとの決算を通じて、その進捗を厳しく見極めていく必要があります。
投資はあくまで自己責任です。ビッグネームだからと初日に飛びつくのではなく、事業の推移を確認しながら「様子見」から入るのも、投資家として賢明な選択肢の一つと言えるでしょう。
参考資料
- Space Exploration Technologies Corp.「Form S-1」(2026年5月20日 SEC提出): https://www.sec.gov/Archives/edgar/data/1181412/000162828026036936/spaceexplorationtechnologi.htm
- 米連邦通信委員会(FCC)「SpaceX 軌道データセンター(Orbital Data Center)衛星システム申請」(ICFS File No. SAT-LOA-20260108-00016、DA 26-113、2026年2月受理)
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著者
金融・経済YouTubeチャンネル「イズミダイズム」
「イズミダイズム」は、株式会社モニクルリサーチが運営する金融・経済YouTubeチャンネルです。フィデリティ投信や日本生命でポートフォリオマネージャーや証券アナリストとしての勤務経験のある元機関投資家の泉田良輔が、プロの視点で金融や経済に関する様々なニュースの解説や、資産形成に役立つトピックをお届けします。新NISAの開始やインフレを背景に、個人の資産運用への関心が高まる中、機関投資家と個人投資家の「視点の違い」や、経済ニュースの裏側にある「構造」をロジカルに解説します。(最新更新日:2026年1月30日)
監修者
株式会社モニクルリサーチ
代表取締役/日本証券アナリスト協会認定アナリスト(CMA)
株式会社モニクルリサーチ代表取締役。その他に株式会社モニクル取締役COO、株式会社モニクルフィナンシャル取締役COOも務める。東京科学大学大学院非常勤講師。日本証券アナリスト協会認定アナリスト(CMA)。慶應義塾大学大学院システムデザイン・マネジメント研究科修了(同研究科最優秀賞受賞)
1. 経歴
2013年に株式会社ナビゲータープラットフォーム(現:株式会社モニクルリサーチ)を原田慎司(現同社取締役)らとともに共同創業。2013年に個人投資家向け金融経済メディア「Longine(ロンジン)」を立ち上げ、編集長に就任。Longineの立ち上げの経緯はBloombergにおいて「体力勝負アナリスト辞めます、元外資マン個人に長期投資指南」として掲載され大きな反響を呼ぶ。投資情報のサブスクモデルを確立する。その後、株初心者向けネットメディア「株1」、2015年にはくらしとお金の経済メディア「LIMO」の前身となる「投信1」を立ち上げる。
それ以前は、日本生命・国際投資部で外国株式ファンドマネージャー、フィデリティ投信・調査部や運用部にて10年に渡ってインターネット、電機(半導体・民生・産業エレクトロニクス)、機械(ロボットやセンサー企業中心)といったテクノロジーセクターの証券アナリストや中小型株ファンドのアシスタント・ポートフォリオ・マネージャー(最年少で就任)として従事。
2. 専門・研究領域
慶応義塾大学商学部卒業。国際金融及びコーポレート・ガバナンスを専攻。アジア通貨危機、昭和金融恐慌などの金融パニックのメカニズムを金融政策や金融機関への規制の観点から研究。それらの内容は「昭和金融恐慌からの教訓 平成恐慌になにをどう生かすべきか」(三田商学研究学生論文集)として発表。
3. 著書
・『機関投資家だけが知っている「予想」のいらない株式投資』(ダイヤモンド社)
・『テクノロジーがすべてを塗り変える産業地図』(クロスメディア・パブリッシング)
・『銀行はこれからどうなるのか』(クロスメディア・パブリッシング)
・『Google vs トヨタ 「自動運転車」は始まりにすぎない』(KADOKAWA)
・『日本の電機産業 何が勝敗を分けるのか』(日本経済新聞出版社)
4. 寄稿や講演他
「日経BizGate」での連載「泉田良輔の新・産業鳥瞰図」や「現代ビジネス」、「東洋経済オンライン」、「プレジデント」などへの寄稿や対談も多数。対談記事例としては「【未来予想】ブロックチェーン革命が、「半沢直樹」の世界に終わりを告げる」や「【未来予想】アマゾンとビットコインが、次世代の「銀行」になる理由」(いずれもNewsPicks)、「米独に遅れる日本の自動運転、自動車も電機の二の舞に?」(週刊ダイヤモンド)。海外ジャーナリストからインタビューされることも多く、Financial TimesやThe Economist、Bloombergにおいて自動車や金融業界についての国内外産業動向コメントも発信している。
講演会や動画での情報発信も盛んに行っており、NewsPicksのTHE UPDATE、日経ビジネススクール、慶應丸の内キャンパス、慶應義塾SDM、アカデミーヒルズなどでも講義を行う。またNewsPicksのNewSchoolではプロジェクトリーダーとして「本当に初心者のための資産運用」を開催。
最終更新日:2026年2月21日