3. 3つの事業構造と「AIに賭けるIPO」の本質

全体では赤字のSpaceXですが、その内訳を見ると事業ごとの明確な役割分担が見えてきます。S-1によれば、同社の事業は大きく「通信(Connectivity)」「宇宙(Space)」「AI」の3つのセグメントに分かれています。

セグメント別 売上と営業損益(2025年12月期)2/4

セグメント別 売上と営業損益(2025年12月期)

出所:SpaceX「Form S-1」(2026年5月20日提出)を基にイズミダイズム作成

売上高が最も大きいのは、衛星インターネットサービス「Starlink(スターリンク)」を中心とする通信事業で、113億ドルを稼ぎ出しています。次いで本業とも言える宇宙事業が40億ドル、そしてAI事業が32億ドルとなっています。

注目すべきは利益の状況です。この3つの事業の中で、営業黒字(44億ドル)を出しているのは通信事業のみです。

宇宙事業は6億ドルの赤字、そしてAI事業はなんと63億ドルもの巨額の営業赤字を出しています。

なお、AI事業にはイーロン・マスク氏が買収したSNSの「X(旧Twitter)」や、独自のAIモデル「Grok」などが統合されており、SNS単独ではなくAIセグメントとして位置づけられています。

さらに驚くべきは、資金の使い道である「設備投資」のバランスです。

設備投資額(2025年12月期)3/4

設備投資額(2025年12月期)

出所:SpaceX「Form S-1」(2026年5月20日提出)を基にイズミダイズム作成

「宇宙に一番お金かかるのかなと思うじゃん。宇宙も確かに38億ドルかかるんですけど、なんなら通信よりも少ない。この3セグメントの中で一番投資額が少ないのがなんと宇宙」

泉田氏が指摘するように、ロケット開発などでお金がかかりそうな宇宙事業の設備投資は38億ドルにとどまります。一方、最も売上が小さいAI事業に対しては、全体の過半数となる127億ドルもの設備投資が投下されているのです。

本業のキャッシュフローを示すAI事業の調整後EBITDA(利払い・税引き・償却前利益)はマイナス12億ドルとなっており、事業単体として多額の現金が流出している状態です(※企業全体での連結調整後EBITDAはプラスです)。

「SpaceXっていう名前で上場しようとしていると、イーロン・マスクは要はこれAIっていう風な領域なので、GAFAMと同じような形でこのAI領域にめちゃくちゃ投資してるっていうのが現状なんですね」

つまり、今回のIPOの本質は「宇宙開発企業への投資」ではなく、巨大テクノロジー企業(GAFAM)と同じ土俵で戦うための「AIに賭けるIPO」だと言えます。