長引く物価高の影響により、年金生活への不安を抱えている人も多いのではないでしょうか。
「退職後も働く」という選択肢を持つシニアも多い中、2025年6月には「年収106万円の壁」の撤廃が決定しました。
今回は、「厚生年金+国民年金」で月15万円(年180万円)を超える人の割合のほか、「年収106万円の壁」の撤廃がシニアに及ぼす影響についてもやさしく解説します。
1. 日本の公的年金は「国民年金+厚生年金」の2階建て
日本の公的年金は、原則として日本に住むすべての人が対象となる「国民年金」と、会社員や公務員などの給与所得者が対象となる「厚生年金」の2階建て構造です。
〈1階部分:国民年金〉
- 日本国内に住む20歳以上〜60歳未満のすべての人が加入
- 保険料は定額
- 年金受給額は保険料納付済期間により決定
〈2階部分:厚生年金〉
- 会社員・公務員などの給与所得者が加入
- 保険料は定率
- 年金受給額は現役時代の収入や加入期間などにより決定
自営業者や専業主婦は国民年金のみを、会社員や公務員は国民年金と厚生年金の両方を受け取ることになります。
2. 【2026年度最新】国民年金「+1.9%」、厚生年金「+2.0%」の増額へ
公的年金の支給金額は、物価や賃金の変動に応じて毎年見直されています。
2026年度の年金額は、国民年金で前年度比「+1.9%」、厚生年金で前年度比「+2.0%」の増額となりました。
- 国民年金の月額(満額・1人分):7万608円(前年度比+1300円)
- 厚生年金の月額(標準的な夫婦世帯・2人分):23万7279円(前年度比+4495円)
※厚生年金の月額は、会社員や公務員として平均的な収入(平均標準報酬45万5000円)で40年間就業した夫の「厚生年金+国民年金(満額)」と、厚生年金の加入歴がない妻の「国民年金(満額)」の合計額
改定による増額は、2026年4月分(6月支給分)から反映されます。
3. 「厚生年金+国民年金」月15万円(年間180万円)以上受給している人は何割?
では、実際にシニアが受給している年金額はどの程度なのでしょうか。
ここからは、現役時代に会社員や公務員として働いていた「厚生年金+国民年金」の受給者について、月15万円(年間180万円)以上受給している人の割合を見ていきましょう。
3.1 「厚生年金+国民年金」受給額ごとの人数分布
厚生年金受給権者の平均年金月額は「15万289円」であり、月15万円という金額は標準的な水準です。
- 年金受給額が月15万円以上の人の割合:49.8%
年金月額が15万円以上の人は厚生年金受給権者の49.8%であり、約半数にあたります。
ただし、国民年金のみの受給者がいることを考慮すると、年金受給者全体に占める割合はさらに低くなります。
4. 【年収106万円の壁】が見直される?制度概要と変更点をやさしく解説
2025年6月に成立した「年金制度改正法」では、働き方の多様化への対応や、現在・将来の年金受給者の生活安定などを目指した改正が盛り込まれました。
その中の1つとして、「年収106万円の壁」の撤廃が挙げられます。
4.1 「年収106万円の壁」は短時間労働者の社会保険に関する基準
そもそも「年収106万円の壁」とは、パートタイマーなどの短時間労働者が社会保険(厚生年金・健康保険)に加入する要件の1つです。
社会保険に加入すると、厚生年金保険の給付や健康保険法上の傷病手当などの保障が上乗せされます。
しかし、収入金額によっては保険料負担によって手取り収入が大きく減少する可能性もあり、いわゆる「働き控え」の原因にもなっています。
4.2 見直しによって何が変わる?
では、今回の見直しにより、具体的にどのような点が変わるのでしょうか。
2026年6月現在、短時間労働者が社会保険に加入するための要件は以下の4つです。
- 従業員51人以上の企業であること(企業規模要件)
- 給与が月額8万8000円以上であること(賃金要件)
- 週の労働時間が20時間以上であること
- 学生ではないこと
今回の改正により、上記要件のうち「企業規模要件」と「賃金要件」の撤廃が決定しています。
- 賃金要件(年収106万円の壁):3年以内に廃止
- 企業規模要件:10年かけて段階的に対象を拡大
要件が緩和されることで、今後はより多くの短時間労働者が社会保険に加入できます。
4.3 働くシニアへの影響は?
社会保険(厚生年金・健康保険)に加入するメリットとして挙げられるのは、将来受け取る年金額が増える・病気やけがで休んだ場合の保障が受けられるといった点です。
一方で、これまで年収106万円未満に調整して社会保険料の負担を避けていた人は、週20時間以上働く場合、目先の手取り収入が減ってしまうのも事実です。
なお、今回の改正により社会保険の加入拡大の対象となった短時間労働者で、一定の要件を満たす人には、保険料負担を3年間軽減する特例措置が設けられています。
特例により保険料の負担が軽減されても、将来の年金額が減ることはありません。
5. おわりに
「厚生年金+国民年金」の受給額が月15万円以上の人は、厚生年金受給権者の約5割でした。
年金のみでの生活が難しい場合、貯蓄を切り崩す・働いて収入を得るといった対策が考えられます。
「年収106万円の壁」が廃止された後は、労働時間が週20時間以上であれば、収入金額にかかわらず社会保険への加入・保険料の支払いが必要です。ただし、改正後もすべての人が加入対象になるわけではなく、以下のような例外があります。
- 学生の適用除外: 大学や高校などに通う「学生」は、引き続きこの加入義務の対象外となります。
- 非適用事業所での就労: 常時5人未満の個人事業所など、そもそも社会保険の適用事業所(法定個人事業所や法人以外)で働く場合は、週20時間以上であっても加入対象とはなりません。
この改正を機に、ご自身の「毎月の手取り収入」と「将来の保障」の最適なバランスについて、改めて考えてみてはいかがでしょうか。




