「年金だけでは正直、生活が苦しい」——そう感じているシニア世帯は、決して少数派ではありません。

厚生労働省の最新調査でも、高齢者世帯の半数以上が暮らしに「苦しさ」を感じていることが明らかになっています。

そんな中、知っておきたいのが年金に上乗せして支給される「年金生活者支援給付金」という制度です。

所得等の要件を満たせば、老齢・障害・遺族のいずれの年金を受給している方でも対象になり得るこの給付金は、申請しなければ受け取れません。

本記事では、シニア世帯のリアルな生活実感から、年金生活者支援給付金の対象者・受給額・請求手続きまでを、ファイナンシャルアドバイザーの視点で整理して解説します。

この記事の3つのポイント

  •  高齢者世帯の52.1%が生活を「苦しい」と回答
  •  年金生活者支援給付金は基準額月5620円から上乗せ
  •  9月に届く緑色の封筒は請求書、期限内提出を

高齢者世帯の半数以上が生活を「苦しい」と回答

厚生労働省「2025(令和7)年 国民生活基礎調査の概況」から、高齢者世帯(※)の生活意識に関する結果を見ていきます。

※高齢者世帯:65歳以上の者のみで構成するか、又はこれに18歳未満の者が加わった世帯

高齢者世帯の生活意識

  • 大変苦しい:21.0%
  • やや苦しい:31.1%
  • 普通:41.7%
  • ややゆとりがある:5.4%
  • 大変ゆとりがある:0.8%

この調査結果からは、シニア世帯の暮らし向きが、経済状況によって大きく3つの層に分かれている様子が見えてきます。

まず、半数以上(52.1%)が「大変苦しい」「やや苦しい」と回答し、日々の生活に経済的な厳しさを感じています。

その一方で、「ややゆとりがある」「大変ゆとりがある」と回答した世帯は合計してもわずか6.2%。経済的な余裕を実感できているシニア世帯はごく一握りのようです。

そして、これら両者の中間にあたるのが、41.7%を占める「普通」と回答した層です。この割合は「苦しい」層には及ばないものの、「ゆとりがある」層を大きく上回りました。

経済的な余裕があるとは言えないものの、堅実に暮らす一定数のシニア世帯が、厚い中間層を形成している様子もうかがえます。

鶴田綾
「大変苦しい」「やや苦しい」と回答した世帯が5割を超えるという結果は、年金だけでは生活が厳しいと感じる方が少なくないことを示しています。こうした状況を受けて公的にはさまざまな支援制度が用意されていますが、年金生活者支援給付金のように「知っていれば使える」制度は、意外と認知度が高くないのが実情です。

まずは自分が対象になり得るかどうかを確認し、当てはまる場合は忘れずに手続きを進めることが、日々の家計を少しでも楽にする第一歩になります。厚生年金や国民年金の受給額だけで生活を見積もるのではなく、こうした上乗せ制度の有無まで含めて老後の収支を考える習慣をつけておきたいところです。

年金に上乗せされる「年金生活者支援給付金」とは?いくらもらえる?

年金受給者の生活を支えることを目的に、2019年に年金生活者支援給付金制度が創設されました。

受給要件を満たした対象者には、2カ月に1回、公的年金の支給日にあわせて年金生活者支援給付金が支給されます。

年金生活者支援給付金には3種類があり、受給する基礎年金の種類に応じて「老齢年金生活者支援給付金」「障害年金生活者支援給付金」「遺族年金生活者支援給付金」にわかれます。

2026年度の給付金額は、2025年度に比べて3.2%引き上げられています。

  • 老齢年金生活者支援給付金(基準額):月額5620円
  • 障害年金生活者支援給付金:障害等級1級7025円・2級5620円
  • 遺族年金生活者支援給付金:月額5620円

それぞれの所得要件を満たす基礎年金受給者が、この給付金の対象となります。次章で具体的な支給要件を確認していきましょう。

年金生活者支援給付金をもらえるのはどんな人?【種類別】支給要件

基礎年金を受給している人のうち、年金等の収入や所得の合計額が一定基準以下となる場合、「年金生活者支援給付金」がもらえる可能性があります。

本章では「年金生活者支援給付金」の具体的な支給要件について、3種類にわけて見ていきましょう。

老齢年金生活者支援給付金の支給条件

老齢年金生活者支援給付金の支給要件3/7

支給要件

出典:日本年金機構「老齢(補足的老齢)年金生活者支援給付金の概要」

老齢年金生活者支援給付金の支給対象となるのは、下記の支給要件をすべて満たす方です。

  • 65歳以上の老齢基礎年金の受給者
  • 同一世帯の全員が市町村民税非課税
  • 前年の公的年金等の収入金額(※1)とその他の所得との合計額が昭和31年4月2日以後に生まれの方は80万9000円以下、昭和31年4月1日以前に生まれの方は80万6700円以下(※2)

※1 障害年金・遺族年金等の非課税収入は除く
※2 昭和31年4月2日以後に生まれた方で80万9000円を超え90万9000円以下である方、昭和31年4月1日以前に生まれた方で80万6700円を超え90万6700円以下である方には「補足的老齢年金生活者支援給付金」が支給される

障害年金生活者支援給付金の支給条件

障害基礎年金を受給されている方へ4/7

障害基礎年金を受給されている方へ

出典:厚生労働省「年金生活者支援給付金制度」

下記の支給要件をすべて満たす場合、障害年金生活者支援給付金の支給対象となります。

  • 障害基礎年金の受給者である
  • 前年の所得(※)が479万4000円以下である(扶養親族等の数に応じて増額される)

※ 障害年金等の非課税収入は除く

遺族年金生活者支援給付金の支給条件

遺族基礎年金を受給されている方へ5/7

遺族基礎年金を受給されている方へ

出典:厚生労働省「年金生活者支援給付金制度」

下記の支給要件をすべて満たす場合、遺族年金生活者支援給付金の支給対象となります。

  • 遺族基礎年金の受給者である
  • 前年の所得(※)が479万4000円以下である(扶養親族等の数に応じて増額される)

※ 遺族年金等の非課税収入は除く

鶴田綾
ここで注意しておきたいのが、遺族年金や障害年金を新たに受け取ることになった方(新規裁定者)のケースです。この場合、基礎年金の請求手続きを行うタイミングで、年金生活者支援給付金の申請もあわせて行うことになります。基礎年金の請求書とは別に案内が来るのを待つのではなく、年金請求と同時に必要な手続きが発生する点を覚えておきましょう。すでに老齢基礎年金を受給していて新たに対象となる方への案内(はがき型の請求書)とは、届くタイミングも手続きの流れも異なるため、自分がどちらのケースに当たるのかを事前に確認しておくと安心です。窓口や年金事務所に相談する際も、自分がどの給付金の対象になり得るのかを伝えるとスムーズに案内してもらえるでしょう。

ご自身やご家族がどの給付金の対象になり得るか確認できたら、次は実際の請求手続きの流れを見ていきましょう。