「オルカン」をはじめとした全世界株式型の投資信託でNISAをスタートしたものの、円高が進むたびに評価額が目減りして不安になっている方もいるかもしれません。一方で、「そろそろNISAを始めたいけれど、今から始めても大丈夫なのか」と一歩を踏み出せずにいる方も多いのではないでしょうか。

164円台にのせるか?というレートで推移していたドル円は、日米当局による協調的な為替介入も観測され、2026年8月10日現在、157円台になっています。1日で6円ほど動く場面もありましたので、短期的な値動きに気持ちが揺れてしまうのは、決して不自然なことではありません。

そんな中、2026年8月7日、年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)が「2026年度第1四半期運用状況(速報)」を公表しました。私たちの公的年金の一部である年金積立金、約318兆円を運用するGPIFは、短期的な市場の変動に一つひとつ反応するのではなく、長期的な視点と資産の分散によって運用を続けています。

本記事では、GPIFの最新の運用実績を確認しながら、NISAでの積立投資シミュレーションを通じて、長期運用と資産分散の大切さを考えていきます。

この記事の3つのポイント

  •  GPIFは短期に惑わされず、長期運用で年率4.95%を達成
  •  株や債券への分散投資により、市場下落時の影響を和らげられる
  •  NISA積立は運用期間が長いほど運用益の割合が増える

 

GPIFの2026年度第1四半期運用状況、実際どうだった?

GPIFが2026年8月7日に公表した「2026年度第1四半期運用状況(速報)」によると、2026年6月末時点の運用資産額は317兆7,596億円でした。2026年度第1四半期(2026年4月~6月)の運用実績は次の通りです。

  • 期間収益率:+8.20%
  • 期間収益額:+24兆895億円(うち利子・配当収入1兆9,770億円)
  • 運用資産額(2026年6月末時点):317兆7,596億円

さらに、市場運用を開始した2001年度から2026年度第1四半期までの累積の実績は次の通りです。

  • 累積収益率(年率):+4.95%
  • 累積収益額:+221兆201億円(うち利子・配当収入63兆3,662億円)

四半期ごとの収益率を見ると、2025年度第1四半期は+16.47%と好調だった一方、直近の2026年度第1四半期は+8.20%と、四半期によって収益率には振れ幅があります。それでも、2001年度から積み上げてきた年率の累積収益率は+4.95%と、長期では安定的にプラスの実績を残しています。

市場運用開始後の四半期収益率と累積収益額(2001年度~2026年度第1四半期)1/5

GPIFの四半期収益率と累積収益額の推移

出所:GPIF「2026年度第1四半期運用状況(速報)」

全体の4分の1ずつ、国内外の株式と債券に分散

GPIFは「基本ポートフォリオ」として、国内株式・国内債券・外国株式・外国債券をそれぞれ25%ずつ保有することを基本方針としています。2026年6月末時点の実際の資産配分は次の通りです。

  • 国内債券:81兆9,976億円(25.59%)
  • 外国債券:78兆7,980億円(24.60%)
  • 国内株式:78兆4,321億円(24.48%)
  • 外国株式:81兆1,454億円(25.33%)

基本ポートフォリオからの実際のズレは、いずれも1%未満です。

運用資産額・構成割合(年金積立金全体、2026年6月末)2/5

GPIFの資産配分(基本ポートフォリオと実際の構成割合)

出所:GPIF「2026年度第1四半期運用状況(速報)」

2026年4月~6月のベンチマーク収益率を資産別に見ると、国内株式(TOPIX配当込み)は+14.40%、外国株式(MSCI ACWI)は+17.56%と大きく上昇した一方、国内債券(NOMURA-BPI)は▲1.15%とマイナスでした。

2026年度 第一四半期 ベンチマーク収益率3/5

2026年度 第一四半期 ベンチマーク収益率

出所:GPIF「2026年度第1四半期運用状況(速報)」

株式が好調な一方で債券が振るわない、あるいはその逆、という組み合わせは珍しくありません。特定の資産に集中せず、値動きの異なる複数の資産を組み合わせておくことで、どれか一つの資産が下落しても資産全体への影響を和らげられる、という分散投資の効果がここにも表れています。

短期の値動きに振られないための視点

NISAで運用している方の中には、円高が進んで評価額が目減りするたびに「このまま続けていいのか」と不安になる方もいるでしょう。しかし、GPIFの実績を振り返ると、2025年度第1四半期は+16.47%、2026年度第1四半期は+8.20%と、四半期ごとの収益率には大きな振れ幅があります。それでも、20年以上にわたる運用の結果として、年率+4.95%という実績を積み上げてきました。

短期的な相場や為替の変動は、長期で運用を続けるうえで誰にでも起こり得るものです。一度の下落や含み益の縮小だけで判断するのではなく、数年から数十年単位でどう資産を育てていくかという視点を持つことが、長期投資と向き合ううえでの一つの軸になります。

次のページでは、実際にNISAで積立投資を行った場合、どのくらいの資産を形成できるのか、シミュレーションで確認していきます。