4. 「トヨタ強すぎる問題」と業界再編の行方
なぜ日産は、お膝元である日本市場での新車投入を絞り、海外市場に注力する戦略をとってきたのでしょうか。泉田氏は、その背景にある日本独自の構造的な課題を分析します。
日産やホンダといった日本の大手自動車メーカーにおいて、グローバル販売に占める日本市場の比率は約13%程度にとどまっています。
泉田氏は、この「日本比率の低さ」の理由を次のように推測します。
「なんでホンダと日産がこんなに日本での比率が薄いのかって考えた時に、やっぱトヨタ強すぎる問題があるんじゃないかなと。だから消去法的に国内で戦うことをやめて海外に行った結果が、今なんじゃないかなってちょっと思うんだよね」(泉田氏)
日本市場ではトヨタ自動車が圧倒的なシェアと強固な販売網を築き上げています。そのため、日産は国内での真正面からの競争を避け、勝機を見出せる海外市場(北米や中国など)を開拓する道を選んだという分析です。
実際、日産にとって米国市場は年間約90万台を販売する巨大な収益源となっています。
しかし、その海外市場でも競争は激化しています。特に中国市場では現地のEVメーカーが台頭し、北米市場でも競争環境は厳しさを増しています。
こうした中、日本の自動車業界では生き残りをかけた再編の動きが進んでいます。日産はホンダとの提携に向けた協議を進めており、注目を集めています。
かつては業績不振の日産が弱者の立場にあると見られていましたが、直近の決算ではホンダも厳しい数字を発表したことで、両社のパワーバランスに変化が生じている可能性もあります。
とはいえ、泉田氏はこのアライアンス(提携)の枠組み自体が、直ちに業績の劇的な改善につながるわけではないと冷ややかな見方を示します。
企業間の提携によるコスト削減や部品の共通化は重要ですが、それだけで消費者が買いたくなるような革新的な車が生まれるわけではありません。本質的な競争力の源泉は、あくまで各メーカーの企画力と開発力にあるということです。
【動画で解説】日産はなぜ巨額赤字に?立て直し戦略と商品展開を元機関投資家が徹底解説
5. まとめ:魅力ある車づくりが再建の第一歩
日産自動車は、2期連続の巨額赤字というどん底の状態から、2026年度に全地域での販売増と黒字化を目指す「V字回復計画」を打ち出しました。
しかし、前年度にすべての主要地域で販売を落としている現状を踏まえると、この計画の実現には高いハードルが存在します。
コスト削減や他社との提携といった経営効率化の取り組みも進められていますが、自動車メーカーとしての本質的な課題について、泉田氏は最後にこう締めくくりました。
「やっぱりやるべきは魅力のある車を作ること。そのために準備はできてるのかっていうところは、やっぱり繰り返し思っちゃったね」(泉田氏)
投資家が日産自動車の今後を見極める上で最も重要なのは、経営陣が掲げる数字の目標だけでなく、「消費者が本当に欲しいと思える車を、適切な市場に投入できているか」という商品戦略の実態です。
今年度投入される新型車が市場でどのような評価を受けるのか、その動向から目が離せません。
詳しくは、泉田氏が解説するYouTubeチャンネル「イズミダイズム」の動画をぜひご覧ください。
参考資料
- 日産自動車株式会社「2026年3月期 決算短信」(2026年5月13日)
- 日産自動車株式会社「2026年3月期 決算説明会資料」(2026年5月13日)
- 日産自動車株式会社「2026年3月期 決算説明会 発言記録」(2026年5月13日)
- 日産自動車株式会社「2026年3月期 参考資料」(2026年5月13日)
- 日産自動車株式会社「2026年3月期 BS・CFセグメント別補足」(2026年5月13日)
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Youtubeチャンネル「イズミダイズム」
著者
金融・経済YouTubeチャンネル「イズミダイズム」
「イズミダイズム」は、株式会社モニクルリサーチが運営する金融・経済YouTubeチャンネルです。フィデリティ投信や日本生命でポートフォリオマネージャーや証券アナリストとしての勤務経験のある元機関投資家の泉田良輔が、プロの視点で金融や経済に関する様々なニュースの解説や、資産形成に役立つトピックをお届けします。新NISAの開始やインフレを背景に、個人の資産運用への関心が高まる中、機関投資家と個人投資家の「視点の違い」や、経済ニュースの裏側にある「構造」をロジカルに解説します。(最新更新日:2026年1月30日)
監修者
株式会社モニクルリサーチ
代表取締役/日本証券アナリスト協会認定アナリスト(CMA)
株式会社モニクルリサーチ代表取締役。その他に株式会社モニクル取締役COO、株式会社モニクルフィナンシャル取締役COOも務める。東京科学大学大学院非常勤講師。日本証券アナリスト協会認定アナリスト(CMA)。慶應義塾大学大学院システムデザイン・マネジメント研究科修了(同研究科最優秀賞受賞)
1. 経歴
2013年に株式会社ナビゲータープラットフォーム(現:株式会社モニクルリサーチ)を原田慎司(現同社取締役)らとともに共同創業。2013年に個人投資家向け金融経済メディア「Longine(ロンジン)」を立ち上げ、編集長に就任。Longineの立ち上げの経緯はBloombergにおいて「体力勝負アナリスト辞めます、元外資マン個人に長期投資指南」として掲載され大きな反響を呼ぶ。投資情報のサブスクモデルを確立する。その後、株初心者向けネットメディア「株1」、2015年にはくらしとお金の経済メディア「LIMO」の前身となる「投信1」を立ち上げる。
それ以前は、日本生命・国際投資部で外国株式ファンドマネージャー、フィデリティ投信・調査部や運用部にて10年に渡ってインターネット、電機(半導体・民生・産業エレクトロニクス)、機械(ロボットやセンサー企業中心)といったテクノロジーセクターの証券アナリストや中小型株ファンドのアシスタント・ポートフォリオ・マネージャー(最年少で就任)として従事。
2. 専門・研究領域
慶応義塾大学商学部卒業。国際金融及びコーポレート・ガバナンスを専攻。アジア通貨危機、昭和金融恐慌などの金融パニックのメカニズムを金融政策や金融機関への規制の観点から研究。それらの内容は「昭和金融恐慌からの教訓 平成恐慌になにをどう生かすべきか」(三田商学研究学生論文集)として発表。
3. 著書
・『機関投資家だけが知っている「予想」のいらない株式投資』(ダイヤモンド社)
・『テクノロジーがすべてを塗り変える産業地図』(クロスメディア・パブリッシング)
・『銀行はこれからどうなるのか』(クロスメディア・パブリッシング)
・『Google vs トヨタ 「自動運転車」は始まりにすぎない』(KADOKAWA)
・『日本の電機産業 何が勝敗を分けるのか』(日本経済新聞出版社)
4. 寄稿や講演他
「日経BizGate」での連載「泉田良輔の新・産業鳥瞰図」や「現代ビジネス」、「東洋経済オンライン」、「プレジデント」などへの寄稿や対談も多数。対談記事例としては「【未来予想】ブロックチェーン革命が、「半沢直樹」の世界に終わりを告げる」や「【未来予想】アマゾンとビットコインが、次世代の「銀行」になる理由」(いずれもNewsPicks)、「米独に遅れる日本の自動運転、自動車も電機の二の舞に?」(週刊ダイヤモンド)。海外ジャーナリストからインタビューされることも多く、Financial TimesやThe Economist、Bloombergにおいて自動車や金融業界についての国内外産業動向コメントも発信している。
講演会や動画での情報発信も盛んに行っており、NewsPicksのTHE UPDATE、日経ビジネススクール、慶應丸の内キャンパス、慶應義塾SDM、アカデミーヒルズなどでも講義を行う。またNewsPicksのNewSchoolではプロジェクトリーダーとして「本当に初心者のための資産運用」を開催。
最終更新日:2026年2月21日