年金事務所で相談を受けていると「毎月高い保険料を払っているのに、将来年金はもらえるの?」「払うだけ損ではないか?」という声をよく聞きます。少子高齢化が進む中、社会保険料を負担に感じている現役世代では、年金制度への不信感が広がっていると感じます。
本記事では、年金不信と社会保険料の負担感の正体について解説します。公的年金のコストパフォーマンスやメリットについても紹介しますので、年金制度の理解に役立ててください。
1. 【現役世代の本音】なぜ「年金は払うだけ損」と言われてしまうのか?
年金制度への不信感は、さまざまな要因が絡み合って生じています。「年金は払うだけ損」と感じてしまう主な3つの理由と、その背景にある誤解や課題について解説します。
1.1 理由①:将来の不安(年金額減少や年金財政破綻への不安
厚生年金保険料や健康保険料は給与から天引きされるため、毎月の手取り額への影響を実感しやすい状況です。社会保険料は給与の約15%程度を占めるなど、税金と比較しても負担感が大きいと感じる人も多いでしょう。
現在は保険料水準が固定されていますが、過去には段階的に引き上げられてきたこともあり、手取り収入が増えない中で負担ばかりが大きくなっていると感じる人もいます。
現在の生活が苦しいのに、何十年も先のために保険料を払い続けることが、心理的な負担感を大きくしています。公的年金の給付内容やメリットがよく理解されていないことも、「負担ばかりで損をしている」と感じる理由でしょう。
1.2 理由②:手取りの不満(社会保険料の負担感の大きさ)
厚生年金保険料や健康保険料は給与から天引きされるため、毎月の手取り額への影響を実感しやすい状況です。社会保険料は給与の約15%程度を占めるなど、税金と比較しても負担感が大きいと感じる人も多いでしょう。
現在は保険料水準が固定されていますが、過去には段階的に引き上げられてきたこともあり、手取り収入が増えない中で負担ばかりが大きくなっていると感じる人もいます。
現在の生活が苦しいのに、何十年も先のために高い保険料を払うことが、負担感を大きくしています。公的年金の給付内容やメリットがよく理解されていないことも、「負担ばかりで損をしている」と感じる理由でしょう。
1.3 理由③:複雑なしくみ(年金制度に対する不信感)
年金制度の賦課方式やマクロ経済スライド、基礎年金と厚生年金の二階建て構造など、仕組みが複雑で理解しづらい制度になっています。さらに、障害年金や遺族年金といった保険機能も十分に知られていないため、保険料負担ばかりが意識されがちです。
また、過去の「消えた年金問題」や個人情報漏洩問題などが話題となり、年金制度の運営に関しても不信感を感じている人もいます。負担と給付に関する全体像が見えないことが、漠然とした不安や不信を増幅させている面もあるでしょう。
ここまで、「年金は払うだけ損」と言われる理由とその背景について解説しました。次章では、老齢年金のコストパフォーマンスとメリットについて紹介します。
2. 「10年で元が取れる?」老齢年金のコストパフォーマンス!シミュレーション結果をみる
公的年金には障害年金や遺族年金などがありますが、老齢年金について保険料負担と年金給付に的を絞ってコストパフォーマンスをシミュレーションしてみましょう。国民年金に加入している人が負担する保険料と受給する老齢基礎年金は次の通りです。
- 国民年金保険料:月1万7920円(2026年度)
- 老齢基礎年金の満額:年84万7300円(2026年度)
20歳から60歳まで国民年金保険料を納付すると保険料の合計は約860万円です。65歳から10年強で支払った保険料分は回収でき、85歳まで受給すると支払った分の2倍の年金が受給できる計算です。早期に亡くなると受給額は少なくなりますが、長生きするほど多くの年金が受け取れます。
会社員など厚生年金加入者の負担と給付の割合は少し異なりますが、概ね10年程度年金を受給すると、支払った保険料と同額またはそれ以上の年金を受け取れることになります。
3. 老後だけじゃない!現役世代こそ知るべき「年金の3大メリット」
年金制度の価値は、老齢年金のコストパフォーマンスだけではありません。知っておきたい3つのメリットを紹介します。
3.1 メリット①:「長生きリスク」に備える終身保障
老齢年金の最大のメリットは、一生涯支給され続ける「終身年金」である点です。長生きして老後資金が底をつく「長生きリスク」への備えとして有効であるからです。物価や賃金の変動に応じて給付水準も見直されるため、インフレ対策にもなります。
民間の個人年金保険の多くは10年・15年といった有期型であり、終身年金は保険料も高いため、人生100年時代と言われる中、終身保障は大きな安心材料となるでしょう。
3.2 メリット②:「障害年金」と「遺族年金」というリスク保障
公的年金の柱は、老齢年金と障害年金、遺族年金です。障害年金は、病気やケガで重い障害が残った場合に支給される年金で現役世代にとっては重要なセーフティネットです。遺族年金は、本人が亡くなった場合に配偶者や子どもなどに支給され、生命保険に近い役割を果たします。
老後保障だけでなく、障害や死亡に対する保障があることを考慮すると、公的年金のコストパフォーマンスは非常に高いと言っていいでしょう。
3.3 メリット③:国と企業による保険料負担
公的年金のコストパフォーマンスが高い理由は、本人が支払った保険料だけでなく国や企業が一定の費用を負担をしているからです。基礎年金の給付の費用は、その半分を国が負担しています。また、厚生年金保険料は、会社員と勤務先が折半して負担します。
さらに、自己負担した保険料の全額が社会保険料控除の対象となり、所得税や住民税が軽減されます。国と企業の負担によって保険料負担が軽減されるとともに、税制上のメリットもあるのです。
4. おわりに
「年金は払うだけ損」という感覚は、年金額減少や年金財政破綻への不安や、社会保険料の負担感の大きさなどから生じています。さらに、制度内容が複雑でよく理解されていないことが不安や不信を増幅させています。
しかし、公的年金のコストパフォーマンスは決して悪くはありません。また、障害や死亡に対する保障もあり、安心して生活するための役割を果たしています。年金制度とメリットを正しく理解することで、漠然とした年金不信はある程度解消するでしょう。
参考資料
- 厚生労働省「公的年金ってどんな制度?」
- 日本年金機構「国民年金保険料」
- 日本年金機構「老齢年金(受給要件・支給開始時期・年金額)」
- 日本年金機構「障害年金(受給要件・請求時期・年金額)」
- 日本年金機構「遺族年金(受給要件・対象者・年金額)」
西岡 秀泰