NISAの普及や株式分割を背景に、これまで投資単位が大きかった大型株にも個人投資家の関心が広がっています。なかでも、鉄鋼最大手の 日本製鉄 は、脱炭素対応や海外事業の拡大、配当方針などから注目を集める存在です。
本記事では、日本製鉄の事業内容をはじめ、GX・脱炭素で期待される理由、株式分割後の投資単位、業績や株主還元について解説します。
※記事中で記載の株価は全て終値となっています。
※決算情報・業績等は執筆時点での情報にもとづいています。
※株式分割の影響は全て遡及修正して株価を調整しています。
1. 日本製鉄(5401)世界トップクラス鉄鋼メーカー「2025年USスチールとパートナーシップ」
日本製鉄 は、日本最大手かつ世界トップクラスの鉄鋼メーカーで、世界15カ国以上に製造拠点を展開しています。鉄鋼を中心に、エンジニアリングや化学、IT関連事業も手がけ、自動車や建設、インフラなど幅広い産業を支えています。近年は、脱炭素に向けた製造工程の見直しや海外事業の拡大を進めている点も注目されています。
特に大きな動きとして、2025年6月には米国の大手鉄鋼メーカーであるUSスチールとのパートナーシップが成立しました。日本製鉄は、国内市場だけでなく海外市場でも成長機会を広げています。
1.1 《国策テーマ》2050年カーボンニュートラルへ!GX・脱炭素で注目される理由
日本製鉄を語るうえで、近年外せないテーマが「GX(グリーントランスフォーメーション)」と「脱炭素」です。
鉄鋼業は、自動車や建設、インフラ、エネルギー設備などに欠かせない素材を供給する重要産業である一方で、製造過程で多くのCO2を排出する産業でもあります。
そのため、2050年カーボンニュートラルの実現に向けて、鉄鋼業の脱炭素化は国としても重要な課題に位置づけられています。
こうしたなか、日本製鉄は「カーボンニュートラルビジョン2050」を掲げ、製鉄プロセスの転換に取り組んでいます。
具体的には、高炉から電炉への転換、水素の活用、CO2の回収・利用・貯留などを進め、鉄をつくる過程で発生するCO2の削減を目指しています。
また、日本製鉄の取り組みは、自社の排出削減にとどまりません。高機能な鋼材を供給することで、自動車の軽量化、電力設備の効率化、水素インフラの整備などにも関わっています。
つまり、日本製鉄は「鉄をつくる会社」であると同時に、社会全体の脱炭素を支える素材メーカーとしての役割も担っているといえるでしょう。
投資家目線では、GXや脱炭素は単なる環境対応ではなく、中長期の成長テーマにもなります。
政府による支援、グリーン鉄の需要拡大、国内外の脱炭素投資が進めば、日本製鉄の技術力や供給力が評価される場面も増える可能性があります。
2. 日本製鉄(5401)5万円台で国策銘柄が買える?「1株→5株」株式分割!昨日の終値は?
日本製鉄は、2025年10月1日に1株を5株とする株式分割を実施しました。
株式分割とは、1株を複数の株式に分けることです。理論上、分割そのものによって企業価値が変わるわけではありませんが、1株あたりの株価が下がるため、個人投資家にとっては最低投資金額が下がる効果があります。
日本製鉄も、株式分割の目的について「投資単位当たりの金額を引き下げることにより、より投資しやすい環境を整え、投資家層のさらなる拡大を図る」と説明しています。
実際に、同社株は分割前であれば100株の購入に30万円前後が必要でしたが、分割後は6万円前後から投資を検討しやすくなりました。
では、足元の株価はいくらなのでしょうか。
日本製鉄の2026年5月20日の終値は、546.9円でした。100株単位で考えると、単純計算で約5万4690円から投資できる水準です(手数料等を含まず)。
3. 日本製鉄(5401)業績はどう見る?USスチール買収後の成長シナリオ
日本製鉄の今後を考えるうえで、大きな焦点となるのが、米国の大手鉄鋼メーカー「USスチール」の買収です。
この買収により、同社は日本国内だけでなく、米国市場での事業基盤を大きく広げることになります。
鉄鋼需要は国や地域によって動きが異なるため、海外事業の拡大は中長期の収益力を高めるうえで重要なテーマです。
2026年5月13日に発表された2026年3月期の決算では、売上収益が10兆632億円(前期比+15.7%)、連結事業利益が5141億円(▲24.8%)、親会社の所有者に帰属する当期利益が171億円(▲95.1%)となりました。
売上規模は大きいものの、当期利益は大きく落ち込んでいます。この背景には、鉄鋼市況の悪化や一過性の損失、事業再編に伴う費用などがあります。
ただし、日本製鉄は、在庫評価差などを除いた「実力ベース」の連結事業利益について、2026年3月期は6504億円だったと説明しています。
中国の経済減速や過剰生産に伴う安価な鋼材輸出の増加など、厳しい事業環境が続くなかでも、国内製鉄所のコスト改善や構造改革によって一定の収益力を確保した形です。
4. 日本製鉄(5401)配当はどうなる?2027年3月期「年間24円」を予定
日本製鉄は、株主還元にも注目が集まりやすい銘柄です。
同社は利益配分の基本方針として、業績に応じた配当を行う考えを示しており、連結配当性向は年間30%程度を目安としています。
また、2026年度から2030年度までの中長期経営計画では、現行の配当方針を継続しつつ、1株あたり年間24円を下限配当として導入しました。
2026年5月13日に発表された決算短信によると、2026年度の年間配当予想は1株あたり24円です。中間配当12円、期末配当12円を予定しており、株式分割後の水準で年間24円となります。
4.1 日本製鉄の株主優待は「大迫力の体験型」!権利確定月は3月・9月
日本製鉄には、株主向けの優待制度も用意されています。
- 優待内容:製鉄所の工場見学会への招待
- 対象株主:3月末・9月末時点で5000株以上保有
- 案内回数:年2回
- 実施時期:3~4月頃、10~11月頃
- 権利確定月:3月末・9月末
日本製鉄の株主優待は、買い物券や食品などを受け取るタイプではなく、同社の事業に触れられる「体験型」の内容です。
製鉄所の見学を通じて、鉄鋼製品がどのようにつくられ、社会のさまざまな分野で使われているのかを知る機会になります。
ただし、優待を受けるには5000株以上の保有が必要です。株式分割によって100株単位では投資しやすくなりましたが、優待目的で投資する場合は必要株数が多くなる点に注意しましょう。
日本製鉄は、配当と優待の両方を確認したい銘柄ですが、株主優待だけを目的にするよりも、鉄鋼市況、業績見通し、USスチール買収後の成長性、配当方針などを総合的に見ながら判断したいところです。
5. まとめにかえて
日本製鉄は、日本を代表する鉄鋼メーカーであり、自動車、建設、鉄道、エネルギー設備など、幅広い産業を支える企業です。
鉄鋼業は景気や資源価格の影響を受けやすい一方で、産業競争力や経済安全保障にも関わる重要な分野といえます。
近年は、GXや脱炭素への対応も大きなテーマです。日本製鉄は、製鉄プロセスの見直しや水素活用、CO2削減に向けた取り組みを進めており、社会全体の脱炭素を支える素材メーカーとしても注目されています。
ただし、足元では鉄鋼市況の悪化や一過性の損失などにより利益が大きく落ち込んでおり、今後の収益回復や買収効果の進捗を確認する必要があります。
株式分割により100株単位では投資しやすくなりましたが、投資を検討する際は、配当方針や優待内容だけでなく、業績動向、鉄鋼市況、脱炭素投資、海外事業の成長性を総合的に見て判断しましょう。
免責事項
本記事は情報提供を目的としたものであり、特定の株式の売買を推奨するものではありません。
投資判断は、最新の決算資料や市場動向をご確認のうえ、ご自身の責任で行ってください。
株主優待の内容や条件は変更される場合があります。詳細は必ず公式サイトでご確認ください。
参考資料
- 日本製鉄株式会社「会社概要」
- 日本製鉄株式会社「日本製鉄とUSスチールのパートナーシップ成立のお知らせ」
- 資源エネルギー庁「鉄鋼業で進むGX―「グリーン鉄」普及へ政府も支援」
- 日本製鉄株式会社「日本製鉄カーボンニュートラルビジョン2050」
- 日本製鉄株式会社「日本製鉄のGX取組み状況」
- 日本製鉄株式会社「株主還元・配当」
- 日本製鉄株式会社「株主優待」
加藤 聖人