公的年金の年金額は、賃金や物価の動きを反映して年度ごとに見直されます。2026年度は、前年度から国民年金(基礎年金)が 1.9%、厚生年金(報酬比例部分)が2.0%の引上げとなります。この改定率は、すでに6月に支給される「4月・5月分の年金」から適用されます。
「年金が増えるのは嬉しいけれど、その分、すぐに住民税などの税負担も増えてしまうのでは?」と不安に思う方もいるでしょう。
実は、2026年6月頃に届く「2026年度(令和8年度)の住民税納税通知書」は、前年(2025年)の所得をもとに計算されています。そのため、今回の年金増額分が税額に影響するのは、さらに翌年の2027年6月以降となります。今回は、年金受給世代が知っておきたい「住民税」の仕組みや、今年の通知書のチェックポイントについて分かりやすく解説します。
1. そもそも「住民税」の仕組みとは?「均等割」・「所得割」の2層構造
住民税は、住んでいる都道府県や市区町村に支払う地方税です。地方自治体の重要な財源であり、公共サービスやインフラ整備に使われます。
1.1 住民税の基本:「均等割」と「所得割」の2層構造
個人住民税は、均等割と所得割の2つの部分から成り立っています。
- 均等割: 所得に関係なく一律に課税される部分
- 所得割: 所得に応じて税額が決まる部分
1.2 公的年金からの天引き(特別徴収)
受給している公的年金から年6回の年金支給時に、住民税があらかじめ天引き(特別徴収)されます。納税者の方々には納税通知書により税額などをお知らせします。
納税通知書の発送日は自治体によりますが、一般的に毎年6月初旬~中旬頃届くところが多いです。
2. 6月に自宅に届く「住民税納税通知書」チェックすべき3つのポイント!
送られてくる納税通知書を見る際は、以下のポイントをチェックしましょう。
- 「年税額」の欄を見る
→1年間の個人住民税の合計額と、年金から天引きされる内訳金額が一目で確認できます。 - 通知書の下部で金額スケジュールを確認
→通知書の下部には、4月・6月・8月の「仮徴収」や、10月・12月・翌年2月の「本徴収」といった、年金から差し引かれる月ごとの具体的な金額スケジュールが印字されています。 - 所得金額等・所得控除額を確認
→「所得金額等」や「所得控除額」の欄を確認すれば、前年の公的年金収入からどのように所得が計算され、どんな控除が適用されたのかという税額の根拠まで詳しく分かります 。
3. 【世帯別】年金収入「いくらまでなら住民税はかからない?」ボーダーラインをみる
均等割・所得割のどちらも課税されない状態を「住民税非課税」と言います。「住民税非課税世帯」は、世帯全員が住民税非課税となる世帯を指します。
では、住民税が非課税となる要件を詳しく見てみましょう。以下のいずれかに該当した場合、住民税が非課税となります。
- 生活保護を受けている
- 障害者、未成年者、寡婦(夫)、ひとり親で、前年の所得が135万円以下である
- 前年の所得が各市区町村の基準を下回る
1と2の要件は全ての市区町村で共通ですが、3の所得要件は市区町村ごとに異なる基準があります。
3.1 年金収入に対する市民税・県民税が非課税となる目安はいくら?【横浜市の例】
収入が「公的年金のみ」の場合、いくらまでなら住民税がかからないか、神奈川県横浜市の例でみてみましょう。目安は以下の通りです。
配偶者のいない方(単身)
- 65歳以上: 155万円以下
- 65歳未満: 105万円以下
配偶者のいる方(本人の年金収入の目安)
- 65歳以上: 211万円以下
- 65歳未満: 171万3334円以下
※年金の収入のみあるものとして計算しています。また、配偶者のいる方については、配偶者に収入が無いものとして計算しています。
4. 65歳以上の約4割「住民税非課税世帯」その背景とは
厚生労働省の「令和6年国民生活基礎調査」の資料から、年齢層別に住民税が「課税される世帯」の割合を見てみましょう。

出所:厚生労働省「令和6年国民生活基礎調査」(第131表)をもとにLIMO編集部作成
※ 全世帯数には、非課税世帯及び課税の有無不詳の世帯を含む
※ 総数には、年齢不詳の世帯を含む
※ 住民税課税世帯には、住民税額不詳の世帯を含む
住民税が課税される世帯の割合は、30~50歳代では90%弱でしたが、60歳代で79.8%となります。その後65歳以上は61.1%(つまり、残りの約4割が非課税などの世帯)、75歳以上は54.4%となっています。年齢が高くなるにつれて、住民税が課税される世帯の割合は低くなっている(非課税世帯が増えている)ことが分かります。
現役を退いて年金生活に入ると現役時代に比べて収入が落ち着く傾向にありますが、それに加えて65歳以上の方には公的年金に対する所得控除が大きく、また遺族年金は課税対象とはなりません。
こうした背景から、現役時代に比べて総収入が落ち着く年金受給中のシニア世代は、現役世代よりも住民税非課税世帯に該当する割合が高くなる構造があると言えるでしょう。
5. まとめにかえて
今回は、厚生労働省の調査結果などをもとに、シニア世代の住民税の仕組みや通知書の見方について解説しました。2026年度の年金増額にともなう住民税への影響は2027年6月以降となるため、目先の負担増を過度に恐れる必要はありません。
毎年6月に届く「納税通知書」は、ご自身の控除や税額、非課税のボーダーラインを正しく把握するための重要な書類です。今回の年金改定を一つの契機として、まずは手元の通知書をしっかりチェックし、安心できるこれからの家計や生活設計に役立てていきましょう。
参考資料
- 総務省「個人住民税」
- 厚生労働省「令和6年国民生活基礎調査」(第131表)
- 日本年金機構「令和8年4月分からの年金額等について」
- 東京都武蔵野市「個人住民税 納税通知書の見方・ご自宅に納税通知書が届いたかた【普通徴収・公的年金からの特別徴収】」
- 神奈川県横浜市「年金収入に対する市民税・県民税が非課税となる目安はいくらですか?」
村岸 理美