3. 情報非開示の壁を越えるプロの「周辺取材」

これほど優良な企業でありながら、投資家にとってキーエンスは非常に分析が難しい銘柄でもあります。なぜなら、同社はIR(投資家向け広報)活動にあまり積極的ではないからです。

多くの企業が決算発表時に公表する「次期の業績予想」をキーエンスは出していません。

また、かつては決算説明会の資料すら存在せず、機関投資家が取材を申し込んでも、東京ではなく新大阪のオフィスまで足を運ばなければならないなど、閉鎖的な姿勢を貫いてきました。

インタビュワーから「情報が少ない会社を、プロの機関投資家はどうやって分析するのか」と問われると、泉田氏は自身の経験を振り返りながら「周辺取材」の重要性を明かしました。

会社から直接情報が出てこないなら、外堀から埋めていくしかありません。例えば、競合であるオムロンなどの他社に取材に行き「最近、キーエンスとの競合状況はどうですか?」と探りを入れたり、実際にセンサーを導入する設備投資側の企業(顧客)にヒアリングを行い、キーエンスの評価を聞き出したりするのです。

さらに、泉田氏が重宝していたのが「展示会」です。幕張メッセなどで開催される製造業向けの展示会に足を運び、キーエンスや競合他社のブースで直接営業マンや技術者と会話を交わすことで、技術の方向性や現場のリアルな熱量を感じ取っていたといいます。

「デジタルに集まるものって他の人も同じように集まるんだよ。だからあんまり付加価値つけにくいのよね。だけどデジタルになってないデータをどう集めるかっていうのもやっぱりアナリストの『インテリジェンス』ってすごい大事な要素で」

インターネット上で誰でも手に入る財務データだけをこねくり回すのではなく、足を使って一次情報を稼ぎ、誰も知らない事実をパズルのように組み合わせて企業の未来を予想する。

これこそが、プロの機関投資家が持つ調査能力(インテリジェンス)の真骨頂なのです。

機関投資家の「周辺取材」アプローチ3/3

機関投資家の「周辺取材」アプローチ

出所:イズミダイズム作成