2. 驚異の利益率51%を叩き出すビジネスモデルの裏側
キーエンスのビジネスモデルの強さは、財務データに如実に表れています。2026年3月期の通期決算(実績)を見ると、売上高は1兆1,693億円(前期比10.4%増)、本業の儲けを示す営業利益は5,958億円(同8.4%増)に達しています。
ここで注目すべきは、売上高に対する営業利益の割合を示す「営業利益率」です。キーエンスの営業利益率は51.0%という、一般的な製造業では考えられない異常な高水準を記録しています。
泉田氏は、この数字が持つ意味の重要性を強調します。
「営業利益率がなんで大事かっていうと、ビジネスモデルが分かるんですよ」
一般的な製造業であれば、営業利益率が15%〜30%もあれば「非常に優秀で、何か特殊な工夫をしている会社」と評価されます。それが50%を超えるということは、もはや「普通の製造業ではない」と考えるべきだというのです。
その理由を解き明かす鍵は、コスト構造にあります。同期の売上原価(製品を調達・製造するための直接的なコスト)は1,986億円で、売上高に対する原価率はわずか17%に過ぎません。
キーエンスは自社で大規模な工場を持たず、外部から調達した部品に圧倒的な「課題解決」という付加価値を乗せて販売しているため、これほど原価を低く抑えることができるのです。
一方で、従業員の給与などが含まれる「販売費及び一般管理費(販管費)」は、約3,750億円と原価を大きく上回っています。つまり、キーエンスは「モノ」を作るよりも、「人」がコンサルティングを行うことにお金をかけ、そこから莫大な利益を生み出していることになります。
「単なる製造業じゃなくて、コンサルティングの付加価値が乗ったビジネスモデルっていうのがここで分かるんですよね」
さらに、キーエンスの財務基盤は「鉄壁」と呼ぶにふさわしい状態です。企業の全財産である総資産3兆6,707億円のうち、返済義務のない自己資本(純資産)が3兆4,715億円を占めており、自己資本比率は94.6%に達しています。
しかも借入金はゼロの完全な無借金経営であり、現金や有価証券などの「すぐに現金化できる資産」を約3兆82億円も保有しています。
圧倒的な利益率で稼ぎ出し、そのキャッシュがどんどん社内に積み上がっていく。これがキーエンスの財務における最大の特徴です。
【動画で解説】なぜキーエンスは営業利益率51%を出せるのか?
著者
金融・経済YouTubeチャンネル「イズミダイズム」
「イズミダイズム」は、株式会社モニクルリサーチが運営する金融・経済YouTubeチャンネルです。フィデリティ投信や日本生命でポートフォリオマネージャーや証券アナリストとしての勤務経験のある元機関投資家の泉田良輔が、プロの視点で金融や経済に関する様々なニュースの解説や、資産形成に役立つトピックをお届けします。新NISAの開始やインフレを背景に、個人の資産運用への関心が高まる中、機関投資家と個人投資家の「視点の違い」や、経済ニュースの裏側にある「構造」をロジカルに解説します。(最新更新日:2026年1月30日)
監修者
株式会社モニクルリサーチ
代表取締役/日本証券アナリスト協会認定アナリスト(CMA)
株式会社モニクルリサーチ代表取締役。その他に株式会社モニクル取締役COO、株式会社モニクルフィナンシャル取締役COOも務める。LIMO&ファイナンス編集長。東京科学大学大学院非常勤講師。日本証券アナリスト協会認定アナリスト(CMA)。慶應義塾大学大学院システムデザイン・マネジメント研究科修了(同研究科最優秀賞受賞)
1. 経歴
2013年に株式会社ナビゲータープラットフォーム(現:株式会社モニクルリサーチ)を原田慎司(現同社取締役)らとともに共同創業。2013年に個人投資家向け金融経済メディア「Longine(ロンジン)」を立ち上げ、編集長に就任。Longineの立ち上げの経緯はBloombergにおいて「体力勝負アナリスト辞めます、元外資マン個人に長期投資指南」として掲載され大きな反響を呼ぶ。投資情報のサブスクモデルを確立する。その後、株初心者向けネットメディア「株1」、2015年にはくらしとお金の経済メディア「LIMO」の前身となる「投信1」を立ち上げる。2026年6月に専門家と実務家が情報発信をする金融経済ニュースサイト「LIMO&ファイナンス」を立ち上げ編集長に就任。
それ以前は、日本生命・国際投資部で外国株式ファンドマネージャー、フィデリティ投信・調査部や運用部にて10年に渡ってインターネット、電機(半導体・民生・産業エレクトロニクス)、機械(ロボットやセンサー企業中心)といったテクノロジーセクターの証券アナリストや中小型株ファンドのアシスタント・ポートフォリオ・マネージャー(最年少で就任)として従事。
2. 専門・研究領域
慶応義塾大学商学部卒業。国際金融及びコーポレート・ガバナンスを専攻。アジア通貨危機、昭和金融恐慌などの金融パニックのメカニズムを金融政策や金融機関への規制の観点から研究。それらの内容は「昭和金融恐慌からの教訓 平成恐慌になにをどう生かすべきか」(三田商学研究学生論文集)として発表。
3. 著書
・『機関投資家だけが知っている「予想」のいらない株式投資』(ダイヤモンド社)
・『テクノロジーがすべてを塗り変える産業地図』(クロスメディア・パブリッシング)
・『銀行はこれからどうなるのか』(クロスメディア・パブリッシング)
・『Google vs トヨタ 「自動運転車」は始まりにすぎない』(KADOKAWA)
・『日本の電機産業 何が勝敗を分けるのか』(日本経済新聞出版社)
4. 寄稿や講演他
「日経BizGate」での連載「泉田良輔の新・産業鳥瞰図」や「現代ビジネス」、「東洋経済オンライン」、「プレジデント」などへの寄稿や対談も多数。対談記事例としては「【未来予想】ブロックチェーン革命が、「半沢直樹」の世界に終わりを告げる」や「【未来予想】アマゾンとビットコインが、次世代の「銀行」になる理由」(いずれもNewsPicks)、「米独に遅れる日本の自動運転、自動車も電機の二の舞に?」(週刊ダイヤモンド)。海外ジャーナリストからインタビューされることも多く、Financial TimesやThe Economist、Bloombergにおいて自動車や金融業界についての国内外産業動向コメントも発信している。
講演会や動画での情報発信も盛んに行っており、NewsPicksのTHE UPDATE、日経ビジネススクール、慶應丸の内キャンパス、慶應義塾SDM、アカデミーヒルズなどでも講義を行う。またNewsPicksのNewSchoolではプロジェクトリーダーとして「本当に初心者のための資産運用」を開催。
最終更新日:2026年6月26日