1. 営業界隈で「謎の会社」と呼ばれるキーエンスの正体
キーエンスといえば、インターネット上や営業職の界隈において、分単位でスケジュールが管理される猛烈な働き方や、徹底したロールプレイング(営業の模擬練習)などが度々話題に上ります。
しかし、企業名やその営業スタイルの知名度に反して、「具体的にどうやって利益を出している会社なのか」を正確に理解している人は多くありません。
そもそもキーエンスとは何をしている会社なのかという疑問が投げかけられると、泉田氏は同社の本質を次のように定義しました。
「キーエンスは製造業って思われがちなんだけど、僕からすると『コンサルティング』会社なのよ」
キーエンスの主力商品は、工場の生産ラインなどで使われる「センサー」です。かつては人間の目視で確認していた作業を自動化し、機械に置き換えるための精密機器を扱っています。
しかし、彼らは単にセンサーという「モノ」を売っているわけではありません。
顧客である工場の生産ラインは、作っている製品によって千差万別です。キーエンスの営業担当者は、現場に足を運んで顧客の課題を深く抽出し、自社のセンサーをどう組み合わせればその課題を解決できるかを提案します。
泉田氏は、その提案がいかに顧客にとって合理的で魅力的なものであるかを、わかりやすい例で説明します。
「このセンサーを入れるだけで人1人分浮きますよ、みたいな提案をされると、やっぱ工場側からすると”それを入れるだけで1人採用しなくてもいいんだ”とか”物が増えた時も人を採用しなくていいんだ”っていう発想になるじゃない」
BtoB(企業間取引)の営業においては、義理や人情ではなく「費用対効果」がすべてです。センサーの導入費用が数十万円かかったとしても、それによって人件費が削減できたり、生産性が劇的に向上したりするのであれば、顧客は「安い投資だ」と判断します。
この費用対効果を論理的に説明し、現場の課題を解決する能力こそが、キーエンスの営業マンが徹底的にトレーニングされている理由なのです。
【動画で解説】なぜキーエンスは営業利益率51%を出せるのか?
近年、企業の課題解決を支援するコンサルティングといえば、アクセンチュアなどのIT系企業が注目されがちです。しかし、キーエンスにはITコンサルにはない独自の強みがあると泉田氏は指摘します。
「ハードウェアを持ってて、さらにコンサルティングができるんで、付加価値がより高い、他との差別化ができているっていうのがこの会社かなと思っている」
物理的なセンサー(ハードウェア)という確固たる解決手段を持ちながら、それを活用したコンサルティングを行う。これが、他社には真似できないキーエンスのビジネスモデルの正体なのです。
