3. 【泉田氏の独自視点】半導体製造は「焼き物」と「稲作」の文化
インタビュワーから、「なぜ日本をはじめとするアジアの企業が、半導体の製造や検査工程でこれほど強いのか」という本質的な疑問が投げられると、泉田氏は機関投資家としての長年の企業分析から導き出した、非常にユニークな「文化論」を展開します。
3.1 なぜアジア企業が半導体製造に強いのか
泉田氏は、半導体の製造プロセスが、実はアジアの伝統的な文化と深く結びついていると指摘します。
「半導体の製造って、焼き物の文化だと思うんですよ」
半導体の材料となるシリコンウェハは、土の中に含まれるケイ素の純度を高めたものであり、本質的には「粘土」と同じだと泉田氏は説明します。
このシリコンの板に、特殊な薬液を塗り、光を当てて削り(エッチング)、再び膜を形成するという作業を何度も繰り返して回路を作っていく工程は、土をこねて釉薬を塗り、何度も窯で焼き上げる「陶器の焼き物」のプロセスに酷似しているというのです。
さらに、半導体製造には大量の綺麗な水が不可欠です。
かつて九州が「シリコンアイランド」と呼ばれ、現在もTSMCが熊本に巨大工場を建設しているのは、豊富な地下水があるためです。水と土を使い、緻密な作業を繰り返す焼き物の文化は、中国、台湾、韓国、そして日本といったアジア圏で古くから発展してきました。
3.2 限られた面積から効率を最大化する「稲作」の思想
泉田氏の分析はこれにとどまりません。もう一つの重要な要素として「稲作」の文化を挙げます。
半導体は、直径300ミリという限られた面積のシリコンウェハから、いかに多くの良品チップを切り出せるか(歩留まり)が利益を大きく左右します。泉田氏はこの構造を、水田耕作に例えます。
「限られた土地からより多くの稲を収穫するのが、水田耕作している人の使命というか目的じゃない?」
日本のように農地が限られた環境では、狭い土地から最大限の収穫を得るための緻密な管理ノウハウが発達しました。この「面積あたりの生産効率を極限まで高める」という稲作の思想が、そのまま半導体の製造効率を高める執念へと繋がっていると泉田氏は分析します。
つまり、半導体製造という産業は「焼き物」と「稲作」というアジア特有の文化がクロスした領域であり、だからこそ台湾、韓国、日本の企業が製造や検査の現場で圧倒的な強さを発揮しているのだという、プロならではの深い洞察が語られました。
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著者
金融・経済YouTubeチャンネル「イズミダイズム」
「イズミダイズム」は、株式会社モニクルリサーチが運営する金融・経済YouTubeチャンネルです。フィデリティ投信や日本生命でポートフォリオマネージャーや証券アナリストとしての勤務経験のある元機関投資家の泉田良輔が、プロの視点で金融や経済に関する様々なニュースの解説や、資産形成に役立つトピックをお届けします。新NISAの開始やインフレを背景に、個人の資産運用への関心が高まる中、機関投資家と個人投資家の「視点の違い」や、経済ニュースの裏側にある「構造」をロジカルに解説します。(最新更新日:2026年1月30日)
監修者
株式会社モニクルリサーチ
代表取締役/日本証券アナリスト協会認定アナリスト(CMA)
株式会社モニクルリサーチ代表取締役。その他に株式会社モニクル取締役COO、株式会社モニクルフィナンシャル取締役COOも務める。LIMO&ファイナンス編集長。東京科学大学大学院非常勤講師。日本証券アナリスト協会認定アナリスト(CMA)。慶應義塾大学大学院システムデザイン・マネジメント研究科修了(同研究科最優秀賞受賞)
1. 経歴
2013年に株式会社ナビゲータープラットフォーム(現:株式会社モニクルリサーチ)を原田慎司(現同社取締役)らとともに共同創業。2013年に個人投資家向け金融経済メディア「Longine(ロンジン)」を立ち上げ、編集長に就任。Longineの立ち上げの経緯はBloombergにおいて「体力勝負アナリスト辞めます、元外資マン個人に長期投資指南」として掲載され大きな反響を呼ぶ。投資情報のサブスクモデルを確立する。その後、株初心者向けネットメディア「株1」、2015年にはくらしとお金の経済メディア「LIMO」の前身となる「投信1」を立ち上げる。2026年6月に専門家と実務家が情報発信をする金融経済ニュースサイト「LIMO&ファイナンス」を立ち上げ編集長に就任。
それ以前は、日本生命・国際投資部で外国株式ファンドマネージャー、フィデリティ投信・調査部や運用部にて10年に渡ってインターネット、電機(半導体・民生・産業エレクトロニクス)、機械(ロボットやセンサー企業中心)といったテクノロジーセクターの証券アナリストや中小型株ファンドのアシスタント・ポートフォリオ・マネージャー(最年少で就任)として従事。
2. 専門・研究領域
慶応義塾大学商学部卒業。国際金融及びコーポレート・ガバナンスを専攻。アジア通貨危機、昭和金融恐慌などの金融パニックのメカニズムを金融政策や金融機関への規制の観点から研究。それらの内容は「昭和金融恐慌からの教訓 平成恐慌になにをどう生かすべきか」(三田商学研究学生論文集)として発表。
3. 著書
・『機関投資家だけが知っている「予想」のいらない株式投資』(ダイヤモンド社)
・『テクノロジーがすべてを塗り変える産業地図』(クロスメディア・パブリッシング)
・『銀行はこれからどうなるのか』(クロスメディア・パブリッシング)
・『Google vs トヨタ 「自動運転車」は始まりにすぎない』(KADOKAWA)
・『日本の電機産業 何が勝敗を分けるのか』(日本経済新聞出版社)
4. 寄稿や講演他
「日経BizGate」での連載「泉田良輔の新・産業鳥瞰図」や「現代ビジネス」、「東洋経済オンライン」、「プレジデント」などへの寄稿や対談も多数。対談記事例としては「【未来予想】ブロックチェーン革命が、「半沢直樹」の世界に終わりを告げる」や「【未来予想】アマゾンとビットコインが、次世代の「銀行」になる理由」(いずれもNewsPicks)、「米独に遅れる日本の自動運転、自動車も電機の二の舞に?」(週刊ダイヤモンド)。海外ジャーナリストからインタビューされることも多く、Financial TimesやThe Economist、Bloombergにおいて自動車や金融業界についての国内外産業動向コメントも発信している。
講演会や動画での情報発信も盛んに行っており、NewsPicksのTHE UPDATE、日経ビジネススクール、慶應丸の内キャンパス、慶應義塾SDM、アカデミーヒルズなどでも講義を行う。またNewsPicksのNewSchoolではプロジェクトリーダーとして「本当に初心者のための資産運用」を開催。
最終更新日:2026年6月26日