1. 半導体製造を支える「裏方」アドバンテストの立ち位置
アドバンテストという企業名を聞いて、具体的にどのような製品を作っている会社なのか、すぐにイメージできる人は少ないかもしれません。
「そもそも何をやっている会社なのか」という疑問が投げかけられると、元機関投資家の泉田氏はこの企業のユニークな立ち位置について解説を始めました。
1.1 チップを作るのではなく「品質を守る」テスター事業
泉田氏によると、アドバンテストはスマートフォンやパソコン、近年ではAI(人工知能)サーバーなどに使われる半導体チップそのものを製造しているわけではありません。同社の主力事業は、製造された半導体が設計書通りに正しく動くかどうか、電気信号を送って確認する「テストシステム(検査装置)」の開発と販売です。
「チップ本体を作っているのではなく、それの性能をチェックし、テストする機械を作っている会社なんですね」
泉田氏はこのように語り、同社が半導体製造における「品質管理」という極めて重要なプロセスを担っていることを強調します。
特に現在、NVIDIAなどが設計するAI向けの高単価なチップは非常に高価であり、万が一不具合のある製品が世に出回れば大きな損害に繋がります。
そのため、複雑化する半導体の性能を精緻にチェックするテスターの需要は、AIの普及とともに爆発的に拡大しているのです。
1.2 売上の中心は「SoC」とアジア市場
では、具体的にどのような検査装置が売れているのでしょうか。泉田氏は同社の決算資料を基に、売上の内訳を紐解きます。
FY2025(2026年3月期)の売上収益1兆1,286億円のうち、実に約90%を占めるのが「テストシステム」事業です。さらにその内訳を見ると、スマートフォンやAIなどに使われる複雑な集積回路である「SoC(System on Chip)」向けのテストシステムが7,674億円と、メモリ向け(1,715億円)を大きく上回っています。
泉田氏は、SoCの方がメモリよりも構造が複雑であり、より高度で細かいテストが求められるため、単価や売上規模も大きくなると分析しています。
また、これらの製品が「どこに売られているのか」という地域別の売上構成も、同社の強さを理解する上で欠かせない要素です。
FY2025の決算説明会資料によれば、最大の出荷先は台湾(約5,695億円)であり、次いで韓国(約1,803億円)と続きます。これは、世界最大のファウンドリ企業であるTSMC(台湾)や韓国サムスン電子向けに、同社のテスターが大量に納入されていることを示しています。
決算短信ベースでもアジア圏全体(台湾・中国・韓国等)がFY2025売上1兆1,286億円のうち約1兆358億円を占めており、巨大な半導体工場が集積するアジアが、アドバンテストにとって圧倒的な主力市場となっていることが明確に読み取れます。
【動画で解説】アドバンテストがTSMCやサムスンに選ばれ続ける理由とは?
著者
金融・経済YouTubeチャンネル「イズミダイズム」
「イズミダイズム」は、株式会社モニクルリサーチが運営する金融・経済YouTubeチャンネルです。フィデリティ投信や日本生命でポートフォリオマネージャーや証券アナリストとしての勤務経験のある元機関投資家の泉田良輔が、プロの視点で金融や経済に関する様々なニュースの解説や、資産形成に役立つトピックをお届けします。新NISAの開始やインフレを背景に、個人の資産運用への関心が高まる中、機関投資家と個人投資家の「視点の違い」や、経済ニュースの裏側にある「構造」をロジカルに解説します。(最新更新日:2026年1月30日)
監修者
株式会社モニクルリサーチ
代表取締役/日本証券アナリスト協会認定アナリスト(CMA)
株式会社モニクルリサーチ代表取締役。その他に株式会社モニクル取締役COO、株式会社モニクルフィナンシャル取締役COOも務める。LIMO&ファイナンス編集長。東京科学大学大学院非常勤講師。日本証券アナリスト協会認定アナリスト(CMA)。慶應義塾大学大学院システムデザイン・マネジメント研究科修了(同研究科最優秀賞受賞)
1. 経歴
2013年に株式会社ナビゲータープラットフォーム(現:株式会社モニクルリサーチ)を原田慎司(現同社取締役)らとともに共同創業。2013年に個人投資家向け金融経済メディア「Longine(ロンジン)」を立ち上げ、編集長に就任。Longineの立ち上げの経緯はBloombergにおいて「体力勝負アナリスト辞めます、元外資マン個人に長期投資指南」として掲載され大きな反響を呼ぶ。投資情報のサブスクモデルを確立する。その後、株初心者向けネットメディア「株1」、2015年にはくらしとお金の経済メディア「LIMO」の前身となる「投信1」を立ち上げる。2026年6月に専門家と実務家が情報発信をする金融経済ニュースサイト「LIMO&ファイナンス」を立ち上げ編集長に就任。
それ以前は、日本生命・国際投資部で外国株式ファンドマネージャー、フィデリティ投信・調査部や運用部にて10年に渡ってインターネット、電機(半導体・民生・産業エレクトロニクス)、機械(ロボットやセンサー企業中心)といったテクノロジーセクターの証券アナリストや中小型株ファンドのアシスタント・ポートフォリオ・マネージャー(最年少で就任)として従事。
2. 専門・研究領域
慶応義塾大学商学部卒業。国際金融及びコーポレート・ガバナンスを専攻。アジア通貨危機、昭和金融恐慌などの金融パニックのメカニズムを金融政策や金融機関への規制の観点から研究。それらの内容は「昭和金融恐慌からの教訓 平成恐慌になにをどう生かすべきか」(三田商学研究学生論文集)として発表。
3. 著書
・『機関投資家だけが知っている「予想」のいらない株式投資』(ダイヤモンド社)
・『テクノロジーがすべてを塗り変える産業地図』(クロスメディア・パブリッシング)
・『銀行はこれからどうなるのか』(クロスメディア・パブリッシング)
・『Google vs トヨタ 「自動運転車」は始まりにすぎない』(KADOKAWA)
・『日本の電機産業 何が勝敗を分けるのか』(日本経済新聞出版社)
4. 寄稿や講演他
「日経BizGate」での連載「泉田良輔の新・産業鳥瞰図」や「現代ビジネス」、「東洋経済オンライン」、「プレジデント」などへの寄稿や対談も多数。対談記事例としては「【未来予想】ブロックチェーン革命が、「半沢直樹」の世界に終わりを告げる」や「【未来予想】アマゾンとビットコインが、次世代の「銀行」になる理由」(いずれもNewsPicks)、「米独に遅れる日本の自動運転、自動車も電機の二の舞に?」(週刊ダイヤモンド)。海外ジャーナリストからインタビューされることも多く、Financial TimesやThe Economist、Bloombergにおいて自動車や金融業界についての国内外産業動向コメントも発信している。
講演会や動画での情報発信も盛んに行っており、NewsPicksのTHE UPDATE、日経ビジネススクール、慶應丸の内キャンパス、慶應義塾SDM、アカデミーヒルズなどでも講義を行う。またNewsPicksのNewSchoolではプロジェクトリーダーとして「本当に初心者のための資産運用」を開催。
最終更新日:2026年6月26日