大型連休が明け、日常のペースを取り戻しつつある5月中旬。初夏の陽気でお出かけが楽しい季節となりましたが、その一方で家計をじわじわと圧迫し続けているのが「物価高」です。

総務省が2026年4月24日に公表した2025年度(令和7年度)平均の消費者物価指数は、総合指数で前年度比2.6%の上昇を記録しました。

特に、生鮮食品及びエネルギーを除く総合指数にいたっては3.0%もの上昇となっており、生活必需品の値上がりが家計の購買力を着実に削り取っている現状が浮き彫りとなっています。

こうした中、政府の新たな経済対策では「物価高対応子育て応援手当」に見られる次世代育成支援に重点が置かれ、これまでのような住民税非課税世帯への一律給付は見送られる傾向にあります。

支援の対象が限定的になったことで、将来への不安を募らせている方もいるでしょう。

しかし、国や自治体による支援は、一時的な現金給付だけに留まりません。

実は、税金や社会保険料の負担を軽減する「恒久的な優遇措置」が数多く用意されています。この記事では、見落としがちな5つの重要施策を厳選し、対象となる収入のボーダーラインを給与・年金別に分かりやすく解説します。

1. 【知っておきたい】現金給付だけじゃない!住民税非課税世帯向けの支援制度5選

所得が一定の基準を下回る世帯は「住民税非課税世帯」とされ、各種の支援制度の対象となります。

コロナ禍や近年の物価上昇への対応としても、住民税非課税世帯に向けた現金給付が実施されてきました。

なお、住民税非課税世帯に向けた支援は現金給付だけではありません。

生活を下支えする優遇措置にはどのようなものがあるのか、代表的な5つの例を確認していきましょう。

【一覧表】住民税非課税世帯への優遇措置2/7

【一覧表】住民税非課税世帯への優遇措置

出所:LIMO編集部作成

1.1 支援制度1:国民健康保険料(応益割)の減額措置

所得水準に応じて、保険料の均等割・平等割が「7割・5割・2割」のいずれかの割合で軽減されます。

1.2 支援制度2:介護保険料の負担軽減

対象となるのは、65歳以上の第1号被保険者です。

減額される具体的な金額は、居住している自治体によって異なります。

1.3 支援制度3:国民年金保険料の免除や納付猶予制度

経済状況に応じて、保険料の全額免除・一部免除、または納付猶予のいずれかの措置が適用されます。

1.4 支援制度4:子育て世帯向けの保育料無償化

3歳から5歳までの全世帯無償化に加え、非課税世帯は0歳から2歳も対象となるため、実質的に全期間の保育料が無料となります。

1.5 支援制度5:高等教育における修学支援新制度の活用

大学、短期大学、高等専門学校、専門学校での修学を支援するための制度です。

授業料や入学金の免除・減額に加え、返済不要の給付型奨学金を受けることができます。

このほかにも、各自治体が独自に実施している支援制度があります。

では、どのような世帯が住民税非課税世帯に該当するのか、次章で詳しく確認していきましょう。

2. 【住民税の基本もおさらい】そもそも「住民税非課税世帯」とは?

住民税非課税世帯の条件を把握するために、まずは住民税の基本的な仕組みを確認しておきましょう。

住民税とは、居住している都道府県や市区町村に納める税金で、地域の公共サービスやインフラ整備を支える大切な財源となっています。

住民税は「均等割」と「所得割」の2層構造3/7

個人住民税のしくみ

出所:総務省「個人住民税」

個人に課される住民税は、主に「均等割」と「所得割」の2つで構成されています。

  • 均等割:所得金額にかかわらず、一定の所得がある方に一律で課される部分
  • 所得割:前年の所得金額に応じて課税額が変動する部分

均等割と所得割の両方が課税されない状態を「住民税非課税」といいます。

また、「住民税非課税世帯」とは、世帯員全員が住民税非課税となっている世帯のことを指します。

なお、所得割のみが非課税となる場合もありますが、各種支援制度の対象となるかどうかは自治体ごとの判断によります。

そのため、居住している地域の基準を確認することが重要です。

3. 【3つの要件】住民税が非課税となる基準とは?

住民税が非課税となるのは、どのような条件に該当する場合なのでしょうか。

次の3つのうち、いずれか1つを満たすと住民税は非課税となります。

  1. 生活保護法による生活扶助を受けている
  2. 障害者、未成年者、寡婦またはひとり親で、前年の合計所得金額が135万円以下である
  3. 前年の合計所得金額が、各市区町村が定める基準額を下回る

1と2の条件は全国共通ですが、3の所得に関する基準は自治体ごとに定められているため、居住している地域によって内容が異なります。

4. 住民税が非課税になる「所得のボーダーライン」は?

住民税非課税の基準となる所得額について、ここでは兵庫県神戸市のケースを例に確認してみましょう。

住民税(市県民税)が課税されない所得額はいくらですか?4/7

住民税(市県民税)が課税されない所得額はいくらですか?

出所:神戸市「住民税(市県民税)が課税されない所得額はいくらですか?」

神戸市では、非課税となる所得の基準額を以下の計算式で定めています。

35万円 ×(本人 + 同一生計配偶者※ + 扶養親族数)+ 10万円 + 21万円

ただし、21万円が加算されるのは、同一生計配偶者または扶養親族がいる場合に限られます。

※同一生計配偶者とは、納税者と生計を共にする配偶者のうち、前年の合計所得金額が48万円以下の人を指します。

5. 住民税が非課税になる「年金・給与のボーダーライン」は?

住民税が非課税となるかどうかは、所得額だけでなく、世帯の構成や収入の種類によっても左右されます。

所得は収入から必要経費や各種控除を差し引いて算出されるため、神戸市の基準を具体的な「年収」に置き換えて見ていきましょう。

単身世帯の場合

合計所得金額が45万円以下の方が対象です。

  • 給与収入のみ:年収100万円以下
  • 65歳以上で年金収入のみ:年収155万円以下
  • 65歳未満で年金収入のみ:年収105万円以下

同一生計配偶者または扶養親族が1人いる場合

合計所得金額が101万円以下の方が対象です。

  • 給与収入のみ:年収156万円以下
  • 65歳以上で年金収入のみ:年収211万円以下
  • 65歳未満で年金収入のみ:年収171万3333円以下

このように、住民税が非課税となる基準は、収入の種類や家族構成によって大きく異なります。

たとえば単身世帯の場合、給与収入であれば年収100万円、65歳以上の人の年金収入であれば年収155万円が非課税となる目安です。

配偶者や扶養親族がいる場合は、この基準額がさらに引き上げられます。

とくに65歳以上の夫婦のみの世帯で収入が年金のみの場合は、年収211万円以下まで非課税の範囲が広がり、単身世帯よりも条件が緩和されることが分かります。

世帯の状況によって税負担は変わるため、自身のケースに照らして確認しておくことが大切です。

6. 高齢者層で「住民税非課税世帯」の割合が高くなる理由

厚生労働省が公表した「令和6年国民生活基礎調査」をもとに、住民税を納めている世帯の割合を年齢層別に確認してみましょう。

【一覧表】住民税課税世帯の年代別割合6/7

【一覧表】住民税課税世帯の年代別割合

出所:厚生労働省「令和6年国民生活基礎調査」(第131表)をもとにLIMO編集部作成

  • 29歳以下:63.0%
  • 30〜39歳:87.5%
  • 40~49歳:88.2%
  • 50~59歳:87.3%
  • 60~69歳:79.8%
  • 70~79歳:61.3%
  • 80歳以上:52.4%
  • 65歳以上(再掲):61.1%
  • 75歳以上(再掲):54.4%

※ 全世帯数には、非課税世帯及び課税の有無不詳の世帯を含みます。
※ 総数には、年齢不詳の世帯を含みます。
※ 住民税課税世帯には、住民税額不詳の世帯を含みます。

住民税を負担している世帯の割合は、30歳代から50歳代で約9割と最も高くなり、その後は年齢が上がるにつれて大きく低下していきます。

65歳以上では約6割、75歳以上では約5割強にまで下がります。

こうした背景には、年金生活に入ることで現役時代より収入が減少することに加え、税制上の優遇措置が影響しています。

とくに65歳以上では「公的年金等控除」が手厚く適用されるほか、遺族年金が非課税所得として扱われるため、高齢者層は住民税非課税世帯に該当しやすい傾向があります。

7. 年金だけで生活する高齢者世帯の割合は43.4%という現実

厚生労働省の「2024(令和6)年 国民生活基礎調査の概況」によると、公的年金を受け取っている高齢者世帯のうち、その収入のすべてを年金だけで賄えている世帯は43.4%という結果でした。

これは、半数以上の世帯が公的年金以外に何らかの収入を必要としている現実を示しています。

老後の生活を年金収入のみで成り立たせている世帯は、もはや少数派となりつつあると言えるでしょう。

総所得に占める公的年金・恩給の割合別 世帯構成7/7

総所得に占める公的年金・恩給の割合別 世帯構成

出所:厚生労働省「2024(令和6)年 国民生活基礎調査の概況」II 各種世帯の所得等の状況

  • 公的年金・恩給の割合が100%の世帯:43.4%
  • 公的年金・恩給の割合が80~100%未満の世帯:16.4%
  • 公的年金・恩給の割合が60~80%未満の世帯:15.2%
  • 公的年金・恩給の割合が40~60%未満の世帯:12.9%
  • 公的年金・恩給の割合が20~40%未満の世帯:8.2%
  • 公的年金・恩給の割合が20%未満の世帯:4.0%

年金の受給額には個人差があるものの、多くの高齢者世帯が「収入と支出のバランス」という課題に直面しています。

日々の生活費が年金収入を上回り、生活の維持すら難しくなるケースも決して珍しくありません。私的年金や預貯金といった備えが十分でない場合は、少しでも長く働いて収入を得たり、公的な生活支援制度を活用したりと、ご自身の状況に合わせた早めの対策が必要です。

8. まとめ:用意されたセーフティネットを「強力な盾」に

政府の経済対策が「次世代育成」へと舵を切る中、これまでのような住民税非課税世帯への一律の現金給付は見送られつつあります。

また、インフレが常態化する現代において、一時的な給付金に頼った生活設計には限界があるのも事実です。

だからこそ、今回ご紹介した社会保険料の軽減や教育費の無償化といった「恒久的な優遇措置」の有効活用が大切となります。これらは一度対象となれば長期にわたって固定費を押し下げてくれる、いわば「家計を守る強力な盾」と言えるでしょう。

私たちが今取るべき最大の自衛策は、一時的な給付金の有無に一喜一憂することではありません。

ご自身の所得がどの支援制度の対象となるのかを正しく把握し、用意されたセーフティネットを賢く使いこなしていきましょう。

参考資料