2026年4月、食品や日用品など身の回りの多くの商品が値上げされました。物価上昇の波が続いている現在、不安に感じるのが老後の暮らしについてです。

ここでは、60〜70歳代の貯蓄状況や現役時代に行ってきた老後対策について、元銀行員の筆者が解説します。

1. 【60~70歳代の貯蓄】およそ4人に1人「3000万円以上」資産を保有

J-FLECの「家計の金融行動に関する世論調査(2025年)二人以上世帯」(金融資産非保有世帯も含む)によると、60歳代の金融資産保有額は平均2683万円、70歳代は2416万円です。この金融資産保有額には、預貯金以外に株式や投資信託、生命保険なども含まれます。また、日常的な出し入れ・引落しに備えている普通預金残高は含まれません。

さらに資産分布を見てみると、3000万円以上の資産を保有している世帯の割合は、60歳代で27.2%、70歳代で25.2%にのぼっており、4人に1人以上が3000万円以上の資産を持っていることが分かります。

一般的に、老後資金の目安が2000万円といわれていることを踏まえると、3000万円以上の資産がある世帯はまさに「悠々自適の老後」といえるでしょう。

2. 【元銀行員が解説】老後も「悠々自適」な暮らしを実現するための対策5選!

筆者は銀行員として多くのお客様と接してきましたが、こうした悠々自適の老後を送る方から「現役時代にやってきた老後対策」についての話を聞く機会も多くありました。

ここでは、その中から5つの老後対策を紹介していきましょう。

2.1 老後対策①高金利時代に預貯金を積み上げた

現在の60~70歳代は、高金利の恩恵を受けられた世代でもあります。この世代が20~30歳代だった1990年前後は、定期預金(1年)の金利が最大6.08%にも達していました。

100万円を1年間預けておくだけでも約6万円の利子がつきますので、ただ預金に預けておくだけでも効率よく資産形成ができたのです。

筆者も銀行員時代にお客様から「昔は銀行に預けておくだけで資産が増えた。給料日やボーナス日は職場に銀行員が集金に来てくれるので、必ず定期預金にしていたんだよ。」と教えていただくことがありました。低金利の現在からすると信じられないような金利水準ですが、まさに資産形成層である若年層のときに高金利の恩恵を受けられたことは大きなメリットといえるでしょう。

2.2 老後対策②高い住宅ローン金利でも計画的にマネープランを立てた

とはいえ、預金金利が高いということは、同時にローンの金利が高い環境でもあります。

現在の60〜70歳代がマイホームを購入した時期と重なる1990年代初頭において、住宅ローンの変動金利の基準となる短期プライムレートは8%台にも達していました。

現在の短期プライムレートは2%台ですので、いかに当時の金利負担が大きいかが分かるでしょう。

こうした大きな返済負担を抱えながら資産を築くためには、計画的にマネープランを立てて実行することが欠かせません。「資産運用で増やしたお金で繰上げ返済をする」など、なるべく金利の負担を抑える工夫をしてきた人も多いといえます。

2.3 老後対策③収入が増えても生活水準を上げなかった

1980年代後半〜1990年代初頭のバブル期には、多くの企業で賃上げやボーナスの増加が続きました。この時期に収入が増えた分をそのまま消費に回さず、貯蓄に充て続けた世帯が、結果的に大きな資産を積み上げています。

収入が増えるとつい浪費が増えがちになってしまうものですが、堅実に貯蓄に回せるかどうかが資産を築ける人とそうでない人の大きな違いといえます。

2.4 老後対策④相場の波に左右されず、長期で資産を保有し続けた

現在の60〜70歳代は、バブル崩壊やアジア通貨危機、リーマンショックなど、複数の大きな経済危機を経験した世代です。

筆者は銀行員時代に「もう資産運用はリーマンショックで懲りたんだよ」といった声をよく聞きましたが、結果的にまとまった資産を多く築いている方はそうした局面でもコツコツと投資を続けてきた方でもあります。

「資産運用の基本は長期投資」といわれるように、資産運用を成功させるためには目の前の相場の波に左右されない姿勢が重要だといえるでしょう。

2.5 老後対策⑤若いころから運動の習慣を身につけている

お金の話からはガラッと変わりますが、悠々自適の老後生活を送る方たちの多くが日頃から運動習慣を身につけている傾向にありました。

現在の60〜70歳代が若かった1970年代にはテニスブームが到来し、大学や職場のサークル活動としてテニスを楽しんだ世代です。また1980年代後半から90年代前半のバブル期にはスキーブームが社会現象となり、週末には友人とゲレンデに向かう光景も珍しくありませんでした。

こうしたスポーツへの親しみが、若いころから体を動かす習慣として根付いた面もあったと考えられます。

健康な体を保つことは、医療費や介護費用の抑制にもつながります。老後の支出のなかで大きな割合を占めるのが医療・介護費用であり、健康寿命を延ばすことは資産を守ることにもつながるといえるでしょう。

3. 【老後資金のゆとり】現役時代から「日々の積み重ね」が大切

現在の60~70歳代は、社会人になってからバブル崩壊やアジア通貨危機、リーマンショックなどさまざまな経済危機を経験してきた世代です。

そうした波に振り回されずにコツコツと計画的に資産形成に取り組んできた人が、現在まとまった資産を築くことに成功しているといえるでしょう。

現在とは経済環境が大きく異なるものの、マネープランを立てることや長期の資産形成に取り組むことの重要性はいつの時代も変わりません。ゆとりあるセカンドライフを迎えるためにも、まずは無理のない範囲で老後資金の形成を始めてみましょう。

参考資料

椿 慧理