1. 業績堅調・手厚い還元でも株価が上がらない「しまむら」の謎
私たちの生活に身近なアパレルチェーンであるしまむらですが、株式市場からの評価という点では、少し意外な事実があります。
1.1 10年続くTOPIXのアンダーパフォーム
2016年からの株価チャートによると、しまむらの株価は日本の代表的な株価指数であるTOPIX(東証株価指数)の動きを大きく下回る「アンダーパフォーム」の状態が続いています。
泉田氏も「みんな知ってる会社だと思うけれども、株式市場での株価としてはあまり評価されていないっていう、そんな感じになりますかね」と指摘します。
2018年頃から約10年近くにわたって市場平均に遅れをとっているしまむらですが、業績が悪いわけでは決してありません。
2026年2月期の実績を見ると、
- 売上高は7000億3400万円(前期比+5.2%)
- 本業の儲けを示す営業利益は614億8300万円(同+3.8%)
- 最終的な儲けである当期純利益は444億6000万円(同+6.1%)
と、見事な増収増益を達成しているのです。
利益の伸び率こそ売上の伸び率を下回っていますが、極めて手堅い業績だと言えます。
1.2 100万円単位で開示される精緻な業績計画
泉田氏がこの決算短信の中で特に注目したのは、翌年度(2027年2月期)の業績計画の「出し方」です。
しまむらが発表した次期の計画は、
- 売上高:7291億9300万円(前期比+4.2%)
- 営業利益:668億4200万円(同+8.7%)
- 当期純利益:473億2100万円(同+6.4%)
となっています。ここで泉田氏がプロの視点として指摘したのは、計画値が「100万円単位」という非常に細かい粒度で開示されている点です。
多くの企業は、外部に発表する業績予想を「7300億円」や「670億円」のようにキリの良い数字に丸めるのが一般的です。
しかし、しまむらは社内の収益予想モデルから弾き出された数値を、そのまま発表していると泉田氏は推測します。
「逆に会社の中の収益予想がしっかりしてるんじゃないかな。普通はだいたい丸める。それを省いて、そのまま出してると思う。となると、会社の予想に結構自信があるっていうことだと思うね」
単価が低い商品を大量に扱うビジネスモデルだからこそ、緻密な計算と徹底したコスト管理が行われている。
この「丸めない数字」からは、しまむらという企業の堅実で実直な経営姿勢が透けて見えます。
【動画で解説】しまむら、店舗ビジネスで借金ゼロという異例の財務体質
著者
金融・経済YouTubeチャンネル「イズミダイズム」
「イズミダイズム」は、株式会社モニクルリサーチが運営する金融・経済YouTubeチャンネルです。フィデリティ投信や日本生命でポートフォリオマネージャーや証券アナリストとしての勤務経験のある元機関投資家の泉田良輔が、プロの視点で金融や経済に関する様々なニュースの解説や、資産形成に役立つトピックをお届けします。新NISAの開始やインフレを背景に、個人の資産運用への関心が高まる中、機関投資家と個人投資家の「視点の違い」や、経済ニュースの裏側にある「構造」をロジカルに解説します。(最新更新日:2026年1月30日)
監修者
株式会社モニクルリサーチ
代表取締役/日本証券アナリスト協会認定アナリスト(CMA)
株式会社モニクルリサーチ代表取締役。その他に株式会社モニクル取締役COO、株式会社モニクルフィナンシャル取締役COOも務める。LIMO&ファイナンス編集長。東京科学大学大学院非常勤講師。日本証券アナリスト協会認定アナリスト(CMA)。慶應義塾大学大学院システムデザイン・マネジメント研究科修了(同研究科最優秀賞受賞)
1. 経歴
2013年に株式会社ナビゲータープラットフォーム(現:株式会社モニクルリサーチ)を原田慎司(現同社取締役)らとともに共同創業。2013年に個人投資家向け金融経済メディア「Longine(ロンジン)」を立ち上げ、編集長に就任。Longineの立ち上げの経緯はBloombergにおいて「体力勝負アナリスト辞めます、元外資マン個人に長期投資指南」として掲載され大きな反響を呼ぶ。投資情報のサブスクモデルを確立する。その後、株初心者向けネットメディア「株1」、2015年にはくらしとお金の経済メディア「LIMO」の前身となる「投信1」を立ち上げる。2026年6月に専門家と実務家が情報発信をする金融経済ニュースサイト「LIMO&ファイナンス」を立ち上げ編集長に就任。
それ以前は、日本生命・国際投資部で外国株式ファンドマネージャー、フィデリティ投信・調査部や運用部にて10年に渡ってインターネット、電機(半導体・民生・産業エレクトロニクス)、機械(ロボットやセンサー企業中心)といったテクノロジーセクターの証券アナリストや中小型株ファンドのアシスタント・ポートフォリオ・マネージャー(最年少で就任)として従事。
2. 専門・研究領域
慶応義塾大学商学部卒業。国際金融及びコーポレート・ガバナンスを専攻。アジア通貨危機、昭和金融恐慌などの金融パニックのメカニズムを金融政策や金融機関への規制の観点から研究。それらの内容は「昭和金融恐慌からの教訓 平成恐慌になにをどう生かすべきか」(三田商学研究学生論文集)として発表。
3. 著書
・『機関投資家だけが知っている「予想」のいらない株式投資』(ダイヤモンド社)
・『テクノロジーがすべてを塗り変える産業地図』(クロスメディア・パブリッシング)
・『銀行はこれからどうなるのか』(クロスメディア・パブリッシング)
・『Google vs トヨタ 「自動運転車」は始まりにすぎない』(KADOKAWA)
・『日本の電機産業 何が勝敗を分けるのか』(日本経済新聞出版社)
4. 寄稿や講演他
「日経BizGate」での連載「泉田良輔の新・産業鳥瞰図」や「現代ビジネス」、「東洋経済オンライン」、「プレジデント」などへの寄稿や対談も多数。対談記事例としては「【未来予想】ブロックチェーン革命が、「半沢直樹」の世界に終わりを告げる」や「【未来予想】アマゾンとビットコインが、次世代の「銀行」になる理由」(いずれもNewsPicks)、「米独に遅れる日本の自動運転、自動車も電機の二の舞に?」(週刊ダイヤモンド)。海外ジャーナリストからインタビューされることも多く、Financial TimesやThe Economist、Bloombergにおいて自動車や金融業界についての国内外産業動向コメントも発信している。
講演会や動画での情報発信も盛んに行っており、NewsPicksのTHE UPDATE、日経ビジネススクール、慶應丸の内キャンパス、慶應義塾SDM、アカデミーヒルズなどでも講義を行う。またNewsPicksのNewSchoolではプロジェクトリーダーとして「本当に初心者のための資産運用」を開催。
最終更新日:2026年6月26日