5. 今後の見通しと「分析しやすい」スバルの魅力
米国の追加関税という重い足かせをはめられたスバルですが、今後の見通しはどうなっているのでしょうか。
会社側が発表した通期の業績見通し(下方修正後)では、営業利益は1300億円と予想されています。そして、ここでも利益を押し下げる「事業環境変化」のマイナス2859億円のうち、米国の追加関税影響が2290億円を占めると試算されています。
泉田氏は、アメリカの工場の生産能力を急激に引き上げることは難しく、当面はこの関税の影響を受け続ける厳しいシナリオがメインになると分析しています。
しかし、泉田氏はスバルという企業を投資対象として見た場合、特有の「分かりやすさ」という魅力があるとも語ります。
複数の異なる事業を展開するコングロマリット企業(例えば日立製作所など)は、ある事業が良くても別の事業が悪ければ業績が相殺され、株価の動きを読むのが非常に困難です。
しかし、スバルはほぼ「自動車事業」一本であり、しかも「アメリカ市場」という明確な主戦場を持っています。
泉田氏はこのシンプルな事業構造について、投資家の心理を交えてこう解説します。
「よかったらすぐ投資家が反応できる。分析しやすいのですぐ株価が上がる。逆に今回みたいに悪いってなると、すぐ売られちゃうというデメリットがあります」
業績の良し悪しがそのまま株価に直結しやすいため、投資初心者にとっても決算書を読み解き、業績と株価の関係を学ぶのに非常に適した企業だと言えます。
最後に泉田氏は、今後のスバルの株価を左右する最大のターニングポイントについて言及しました。現在の関税政策は米国の政治動向(トランプ政権の意向)に強く依存しています。
「トランプさんじゃなくなればこの方針が変わる可能性もあるので、その時はこの会社の大きなターニングポイントかな」
もし将来的に関税が撤廃されるようなニュースが飛び込んでくれば、現在利益を圧迫している数千億円のマイナス要因が一気に消え去り、業績と株価が急回復するシナリオも十分に考えられます。
スバルの株価動向を追うことは、そのままアメリカの政治経済の動きを学ぶことにもつながるのです。
6. まとめ
今回は、YouTubeチャンネル「イズミダイズム」から、元機関投資家の泉田良輔氏によるスバル(SUBARU)の決算と株価分析をご紹介しました。
売上が横ばいであるにもかかわらず利益が激減した背景には、スバルがアメリカ市場に大きく依存し、かつ日本からの輸出比率が高いというビジネスモデルの構造がありました。そこに米国の追加関税が直撃したことが、現在の株価低迷の最大の要因です。
しかし、その事業構造のシンプルさゆえに、投資家にとってはニュースや外部環境の変化が業績にどう影響するかを予測しやすいというメリットもあります。
今後の米国の政治動向や関税政策のニュースが出た際、スバルの株価がどう反応するのかを観察することは、株式投資の生きた教材となるでしょう。
参考資料
※リンクは記事作成時点のものです。
著者
金融・経済YouTubeチャンネル「イズミダイズム」
「イズミダイズム」は、株式会社モニクルリサーチが運営する金融・経済YouTubeチャンネルです。フィデリティ投信や日本生命でポートフォリオマネージャーや証券アナリストとしての勤務経験のある元機関投資家の泉田良輔が、プロの視点で金融や経済に関する様々なニュースの解説や、資産形成に役立つトピックをお届けします。新NISAの開始やインフレを背景に、個人の資産運用への関心が高まる中、機関投資家と個人投資家の「視点の違い」や、経済ニュースの裏側にある「構造」をロジカルに解説します。(最新更新日:2026年1月30日)
監修者
株式会社モニクルリサーチ
代表取締役/日本証券アナリスト協会認定アナリスト(CMA)
株式会社モニクルリサーチ代表取締役。その他に株式会社モニクル取締役COO、株式会社モニクルフィナンシャル取締役COOも務める。東京科学大学大学院非常勤講師。日本証券アナリスト協会認定アナリスト(CMA)。慶應義塾大学大学院システムデザイン・マネジメント研究科修了(同研究科最優秀賞受賞)
1. 経歴
2013年に株式会社ナビゲータープラットフォーム(現:株式会社モニクルリサーチ)を原田慎司(現同社取締役)らとともに共同創業。2013年に個人投資家向け金融経済メディア「Longine(ロンジン)」を立ち上げ、編集長に就任。Longineの立ち上げの経緯はBloombergにおいて「体力勝負アナリスト辞めます、元外資マン個人に長期投資指南」として掲載され大きな反響を呼ぶ。投資情報のサブスクモデルを確立する。その後、株初心者向けネットメディア「株1」、2015年にはくらしとお金の経済メディア「LIMO」の前身となる「投信1」を立ち上げる。
それ以前は、日本生命・国際投資部で外国株式ファンドマネージャー、フィデリティ投信・調査部や運用部にて10年に渡ってインターネット、電機(半導体・民生・産業エレクトロニクス)、機械(ロボットやセンサー企業中心)といったテクノロジーセクターの証券アナリストや中小型株ファンドのアシスタント・ポートフォリオ・マネージャー(最年少で就任)として従事。
2. 専門・研究領域
慶応義塾大学商学部卒業。国際金融及びコーポレート・ガバナンスを専攻。アジア通貨危機、昭和金融恐慌などの金融パニックのメカニズムを金融政策や金融機関への規制の観点から研究。それらの内容は「昭和金融恐慌からの教訓 平成恐慌になにをどう生かすべきか」(三田商学研究学生論文集)として発表。
3. 著書
・『機関投資家だけが知っている「予想」のいらない株式投資』(ダイヤモンド社)
・『テクノロジーがすべてを塗り変える産業地図』(クロスメディア・パブリッシング)
・『銀行はこれからどうなるのか』(クロスメディア・パブリッシング)
・『Google vs トヨタ 「自動運転車」は始まりにすぎない』(KADOKAWA)
・『日本の電機産業 何が勝敗を分けるのか』(日本経済新聞出版社)
4. 寄稿や講演他
「日経BizGate」での連載「泉田良輔の新・産業鳥瞰図」や「現代ビジネス」、「東洋経済オンライン」、「プレジデント」などへの寄稿や対談も多数。対談記事例としては「【未来予想】ブロックチェーン革命が、「半沢直樹」の世界に終わりを告げる」や「【未来予想】アマゾンとビットコインが、次世代の「銀行」になる理由」(いずれもNewsPicks)、「米独に遅れる日本の自動運転、自動車も電機の二の舞に?」(週刊ダイヤモンド)。海外ジャーナリストからインタビューされることも多く、Financial TimesやThe Economist、Bloombergにおいて自動車や金融業界についての国内外産業動向コメントも発信している。
講演会や動画での情報発信も盛んに行っており、NewsPicksのTHE UPDATE、日経ビジネススクール、慶應丸の内キャンパス、慶應義塾SDM、アカデミーヒルズなどでも講義を行う。またNewsPicksのNewSchoolではプロジェクトリーダーとして「本当に初心者のための資産運用」を開催。
最終更新日:2026年2月21日