4. 利益激減の真犯人は「米国の追加関税」か
スバルの主戦場がアメリカであるという前提を踏まえた上で、泉田氏は再び「なぜ利益が82%も減ったのか」という核心に迫ります。
ここで泉田氏が用いたのが、決算説明会資料にある「営業利益のウォーターフォールチャート」です。これは、前年の利益から今年の利益に至るまでに、どのような要因で利益が増減したのかを階段状に示したグラフです。
このチャートを見ると、前年同期の3692億円から今期の663億円へと利益が減少した最大の要因が「事業環境変化」という項目であり、ここで2607億円もの利益が失われていることが分かります。
そして、会社側が説明するその内訳こそが、今回の決算の最大のハイライトでした。
事業環境変化によるマイナス2607億円のうち、なんと2166億円が「米国追加関税影響」だったのです。
泉田氏も、スバル特有の弱点が顕在化したと指摘します。
自動車事業にほぼ特化し、かつアメリカで最も車が売れているスバルにとって、米国の関税引き上げは日本の自動車メーカーの中でも最も深刻なダメージとなります。
ここで重要になるのが、スバルの「生産と輸出の構造」です。アメリカで売る車をすべてアメリカで作っていれば、関税の影響は受けません。しかし、スバルの生産体制はそうなっていませんでした。
通期の見通しデータを見ると、海外での販売台数見通しが72.7万台であるのに対し、アメリカ工場での生産見通しは34.5万台にとどまっています。一方、日本国内での生産見通しは60万台です。
つまり、アメリカで販売する車のざっくり半分は現地で生産しているものの、残りの半分は日本で生産し、海を渡ってアメリカに輸出しているのです。この「日本からの輸出分」に対して重い追加関税が課せられた結果、利益が吹き飛んでしまったという構造です。
泉田氏は、この状況を機関投資家の冷徹な視点でこう総括します。
「グローバルで展開してると、一国の国や地域にベットして事業してることのリスク、特に消費大国として一番大きなアメリカで商売してることのリスクっていう風にはなっちゃったよね」
【動画で解説】スバル、利益激減の真犯人は「米国の追加関税」か
著者
金融・経済YouTubeチャンネル「イズミダイズム」
「イズミダイズム」は、株式会社モニクルリサーチが運営する金融・経済YouTubeチャンネルです。フィデリティ投信や日本生命でポートフォリオマネージャーや証券アナリストとしての勤務経験のある元機関投資家の泉田良輔が、プロの視点で金融や経済に関する様々なニュースの解説や、資産形成に役立つトピックをお届けします。新NISAの開始やインフレを背景に、個人の資産運用への関心が高まる中、機関投資家と個人投資家の「視点の違い」や、経済ニュースの裏側にある「構造」をロジカルに解説します。(最新更新日:2026年1月30日)
監修者
株式会社モニクルリサーチ
代表取締役/日本証券アナリスト協会認定アナリスト(CMA)
株式会社モニクルリサーチ代表取締役。その他に株式会社モニクル取締役COO、株式会社モニクルフィナンシャル取締役COOも務める。LIMO&ファイナンス編集長。東京科学大学大学院非常勤講師。日本証券アナリスト協会認定アナリスト(CMA)。慶應義塾大学大学院システムデザイン・マネジメント研究科修了(同研究科最優秀賞受賞)
1. 経歴
2013年に株式会社ナビゲータープラットフォーム(現:株式会社モニクルリサーチ)を原田慎司(現同社取締役)らとともに共同創業。2013年に個人投資家向け金融経済メディア「Longine(ロンジン)」を立ち上げ、編集長に就任。Longineの立ち上げの経緯はBloombergにおいて「体力勝負アナリスト辞めます、元外資マン個人に長期投資指南」として掲載され大きな反響を呼ぶ。投資情報のサブスクモデルを確立する。その後、株初心者向けネットメディア「株1」、2015年にはくらしとお金の経済メディア「LIMO」の前身となる「投信1」を立ち上げる。2026年6月に専門家と実務家が情報発信をする金融経済ニュースサイト「LIMO&ファイナンス」を立ち上げ編集長に就任。
それ以前は、日本生命・国際投資部で外国株式ファンドマネージャー、フィデリティ投信・調査部や運用部にて10年に渡ってインターネット、電機(半導体・民生・産業エレクトロニクス)、機械(ロボットやセンサー企業中心)といったテクノロジーセクターの証券アナリストや中小型株ファンドのアシスタント・ポートフォリオ・マネージャー(最年少で就任)として従事。
2. 専門・研究領域
慶応義塾大学商学部卒業。国際金融及びコーポレート・ガバナンスを専攻。アジア通貨危機、昭和金融恐慌などの金融パニックのメカニズムを金融政策や金融機関への規制の観点から研究。それらの内容は「昭和金融恐慌からの教訓 平成恐慌になにをどう生かすべきか」(三田商学研究学生論文集)として発表。
3. 著書
・『機関投資家だけが知っている「予想」のいらない株式投資』(ダイヤモンド社)
・『テクノロジーがすべてを塗り変える産業地図』(クロスメディア・パブリッシング)
・『銀行はこれからどうなるのか』(クロスメディア・パブリッシング)
・『Google vs トヨタ 「自動運転車」は始まりにすぎない』(KADOKAWA)
・『日本の電機産業 何が勝敗を分けるのか』(日本経済新聞出版社)
4. 寄稿や講演他
「日経BizGate」での連載「泉田良輔の新・産業鳥瞰図」や「現代ビジネス」、「東洋経済オンライン」、「プレジデント」などへの寄稿や対談も多数。対談記事例としては「【未来予想】ブロックチェーン革命が、「半沢直樹」の世界に終わりを告げる」や「【未来予想】アマゾンとビットコインが、次世代の「銀行」になる理由」(いずれもNewsPicks)、「米独に遅れる日本の自動運転、自動車も電機の二の舞に?」(週刊ダイヤモンド)。海外ジャーナリストからインタビューされることも多く、Financial TimesやThe Economist、Bloombergにおいて自動車や金融業界についての国内外産業動向コメントも発信している。
講演会や動画での情報発信も盛んに行っており、NewsPicksのTHE UPDATE、日経ビジネススクール、慶應丸の内キャンパス、慶應義塾SDM、アカデミーヒルズなどでも講義を行う。またNewsPicksのNewSchoolではプロジェクトリーダーとして「本当に初心者のための資産運用」を開催。
最終更新日:2026年6月26日