厚生年金で月30万円以上を受け取れる人は、受給者全体のわずか0.12%。月15万円前後が「平均的な受給者像」であり、年金だけで老後の生活費をまかなうのは現実的ではありません。
国民年金・厚生年金ともに年齢別の受給額データを見ると、自分の立ち位置が明確になります。同時に、老後の支出を左右する医療・介護費の備えも欠かせません。
本記事では、最新データをもとにした年金受給額の実態と、老後で気になる医療費の賢い抑え方を合わせて解説します。
1. 厚生年金「月30万円以上」受給者はわずか0.12%
厚生年金は、現役時代の報酬と加入期間によって受給額が決まる仕組みです。収入が高く、長く勤めるほど老後の受給額も増えます。厚生労働省の令和6年度データをもとに分布を整理すると、次のような実態が浮かび上がります。
- 月10万円以上:81.0%(受給者の大多数)
- 月15万円以上:49.8%(約2人に1人)
- 月20万円以上:18.8%(5人に1人以下)
- 月30万円以上:0.12%(1000人中1〜2人)
月30万円以上を受け取れるのは、全受給者のなかで1000人に1〜2人。よほど長期間にわたって高収入を維持してきた方でなければ、到達しない水準です。
一方で、月15万円前後が「平均的な受給者像」であることも見えてきます。「年金だけで老後は安心」という前提は早い段階で手放し、不足分をどう補うかを具体的に考え始めることが重要です。
毎年誕生月に届く「ねんきん定期便」には、加入実績と将来の受給見込み額が記載されています。多くの方が封を開けずに放置しがちですが、老後の収支シミュレーションをするうえで欠かせない情報源です。「ねんきんネット」ならオンラインでいつでも確認できるので、まだ見ていない方はぜひ一度チェックしてみてください。
2. 国民年金の平均受給額を年代別に確認|60代・70代・80代の水準
自営業者や専業主婦(夫)など、会社員以外のすべての方が加入する国民年金は、老後収入の「土台」となる制度です。受給額は加入期間によって決まるため、人によって差はあるものの、世代ごとの平均値を把握しておくことで自分の立ち位置を確認できます。
2.1 【60歳代(60〜69歳)】国民年金の年金月額一覧表
- 60歳:4万5186円
- 61歳:4万6371円
- 62歳:4万7784円
- 63歳:4万7258円
- 64歳:4万7896円
- 65歳:6万1240円
- 66歳:6万1369円
- 67歳:6万1345円
- 68歳:6万1293円
- 69歳:6万978円
2.2 【70歳代(70〜79歳)】国民年金の年金月額一覧表
- 70歳:6万1011円
- 71歳:6万770円
- 72歳:6万234円
- 73歳:6万32円
- 74歳:5万9813円
- 75歳:5万9659円
- 76歳:5万9555円
- 77歳:5万9349円
- 78歳:5万9124円
- 79歳:5万8676円
2.3 【80歳代(80〜89歳)】国民年金の年金月額一覧表
- 80歳:5万8623円
- 81歳:5万8269円
- 82歳:5万8003円
- 83歳:5万7857円
- 84歳:5万9675円
- 85歳:5万9425円
- 86歳:5万9228円
- 87歳:5万9204円
- 88歳:5万8756円
- 89歳:5万8572円
70代以降は年齢が上がるにつれて受給額がわずかに低下する傾向があります。これは、高齢世代ほど現役時代の納付期間が短く、満額受給に届いていない方が多いことが背景にあります。
3. 厚生年金の平均はいくらか|年代別の受給額を比較
厚生年金は現役時代の報酬と加入期間が直接反映されるため、同じ年齢でも受給額の個人差が非常に大きい制度です。平均値はあくまで目安として参照しつつ、自分の受給見込み額と比較してみてください。
3.1 【60歳代(60〜69歳)】厚生年金の年金月額一覧表
- 60歳:9万9664円
- 61歳:10万4455円
- 62歳:10万9323円
- 63歳:6万8758円
- 64歳:8万3901円
- 65歳:14万9862円
- 66歳:15万2378円
- 67歳:15万2356円
- 68歳:15万2709円
- 69歳:15万1284円
3.2 【70歳代(70〜79歳)】厚生年金の年金月額一覧表
- 70歳:15万455円
- 71歳:14万8371円
- 72歳:14万6858円
- 73歳:14万5583円
- 74歳:14万7774円
- 75歳:15万1410円
- 76歳:15万1241円
- 77歳:15万962円
- 78歳:15万862円
- 79歳:15万3115円
3.3 【80歳代(80〜89歳)】厚生年金の年金月額一覧表
- 80歳:15万3729円
- 81歳:15万5460円
- 82歳:15万7744円
- 83歳:15万9994円
- 84歳:16万2555円
- 85歳:16万3947円
- 86歳:16万5577円
- 87歳:16万5557円
- 88歳:16万6200円
- 89歳:16万6767円
80代では年齢が上がるほど受給額が増加する傾向が見られます。
これは、高度経済成長期に長期間・高収入で働いた世代が含まれていることが背景のひとつとしてありそうです。
一方で70代前半の受給額が若干低めなのは、比較的早期に退職した世代や加入期間が短い層が影響していると考えられます。
将来の受給額を少しでも増やすためには、在職中の報酬を上げること、そして可能な限り長く厚生年金に加入し続けることが最も直接的な方法です。
4. 運動・かかりつけ医・薬代の3つを整えれば健康費用は賢く抑えられる
老後の支出で見落とされがちなのが、医療・介護にかかる費用です。年を重ねるほど通院や投薬の機会は増え、家計への影響は無視できなくなってきます。
しかし、日常の習慣と制度の上手な活用によって、その負担は大きく変えられます。お金をかけずに健康を守る視点を、早いうちから持っておくことが大切です。
4.1 毎日の運動習慣が「医療費ゼロ」への近道
「健康のために何かしなければ」と思いつつ、なかなか続かないのが運動習慣の難しさです。
しかし、高齢者の健康維持に必要なのは激しい運動ではありません。1日30分、週3〜4回のウォーキングだけで、血圧・血糖値・筋力に好影響をもたらすことが多くの研究で示されています。「息が少し弾む程度」のペースを目安に、近所を歩くだけで十分です。
見落とされがちなのが筋力低下のリスクです。転倒・骨折は、高齢者が要介護状態に陥る主要な原因のひとつ。スクワットや踵上げといった自重トレーニングは、自宅でテレビを見ながらでも実践できます。「薬では補えない予防効果」を運動に求める意識が、長期的な医療費削減につながります。
4.2 かかりつけ医は「何でも話せる相談相手」
体の不調は、自覚症状が出る前から少しずつ進行していることがあります。大病院は専門的な治療には優れていますが、日常的な健康管理の場としては必ずしも適していません。
近くのクリニックや内科を定期的に受診し、医師に自分の「平常の状態」を把握してもらうことが、異変の早期発見につながります。
診察をより充実させるコツは、受診前に気になることをメモしておくことです。「夜中に何度も目が覚める」「坂道で息が上がりやすくなった」など、些細に感じることでも積極的に伝えましょう。
また、複数の医療機関から処方されている薬がある場合は、「お薬手帳」を一冊にまとめてかかりつけ医か薬局で管理してもらうことで、飲み合わせのリスクを防ぐことができます。
4.3 ジェネリック医薬品と制度活用で薬代をカット
通院の頻度が増えると、気になってくるのが薬代の負担です。先発薬と同じ有効成分を持ちながら価格が抑えられているジェネリック医薬品(後発医薬品)への切り替えは、すぐに始められる節約策のひとつです。
処方箋を受け取った際に「ジェネリックに変えられますか?」と薬剤師に一言確認するだけで対応してもらえます。
制度面でも活用できるものがあります。年間の医療費が一定額を超えた場合に超過分が払い戻される「高額療養費制度」、そして年間10万円超の医療費を所得から差し引ける「医療費控除」です。いずれも領収書の保管が前提となるため、受診のたびに捨てずに取っておく習慣をつけましょう。
5. 高額年金の現実と医療費対策から考える老後生活の守り方
厚生年金で月30万円以上を受給している人はわずか0.12%と非常に限られており、多くの人は平均的な水準の中で生活をやりくりしているのが実態です。
だからこそ重要なのは、「収入を増やすこと」だけでなく「支出を抑える工夫」です。
特に医療費は年齢とともに増えやすい支出であり、運動習慣の定着やかかりつけ医の活用、ジェネリック医薬品の利用など、日常の選択によって大きく差が出ます。
4月の年金支給日は、自身の収入と支出のバランスを見直す絶好のタイミングです。
今の生活を維持するためにも、年金額の確認とあわせて、健康と家計の両面から対策を進めていきましょう。
参考資料
- 厚生労働省年金局「令和6年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」
- 日本年金機構「は行 報酬比例部分」
- 日本年金機構「大切なお知らせ、「ねんきん定期便」をお届けしています」
- 日本年金機構「ねんきんネット」
- 厚生労働省年金局「令和6年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」
- 東京都後期高齢者医療広域連合「ジェネリック医薬品を使いましょう」
柴田 充輝