2. 景気に左右されない「推し活」の強み
バンダイナムコの事業の中で最も大きな売上を占めているのが、「ガンプラ」に代表されるプラモデルや、人気キャラクターのグッズを扱うトイホビー事業です。
こうした趣味に関する銘柄は世の中の景気動向からどのような影響を受けるのかという疑問が投げかけられると、泉田氏は次のように答えています。
「基本的に関係ないよね。だって景気悪くたってプラモデル作りたいと思うし、景気良かったら仕事で時間ないかもしれないけど息抜きでプラモデル作りたいと思うかもしれないし」
趣味や、近年「推し活」と呼ばれるような特定のキャラクターに対する消費者の熱量は、世の中の好況・不況に大きく左右されにくいという特徴があります。
もちろん、景気が過熱したからといって急激にプラモデルを買う量が倍増するわけではありません。しかし逆に言えば、不況時であっても「これだけは買いたい」という一定の需要が底堅く存在し続けるのです。
こうした安定した需要基盤が、同社の1兆円を超える巨大な売上を支える強力な土台となっています。
3. 圧倒的なキャッシュ創出力と高ROEの両立
泉田氏がバンダイナムコの財務を分析する中で、機関投資家としての視点から特に高く評価したのが、その「健全性」と「資本効率の高さ」です。
決算短信の貸借対照表(バランスシート)を読み解くと、同社が驚くほど「キャッシュリッチ(現金が豊富)」な企業であることがわかります。
具体的には、手元の現金および預金が約3867億円、さらに投資有価証券が約1576億円あり、合計で5000億円を超える潤沢な資金を保有しています。
その一方で、銀行からの借入金などの有利子負債はゼロです。このように、手元の現金が借金を上回っている状態を、投資の世界では「ネットキャッシュ」と呼びます。
一般的に、企業が現金をため込みすぎると、株主から預かった資本をどれだけ効率よく使って利益を上げているかを示す指標である「ROE(自己資本利益率)」が悪化する傾向があります。
現金を事業に投資せずに寝かせておくと、分母となる純資産ばかりが大きくなってしまうからです。
しかし、バンダイナムコの場合、純利益(通期予想1300億円)を純資産(約8500億円)で割って計算したROEは、約15%という高い水準を維持しています。
日本企業の平均的なROEが8〜9%程度であることを考えると、非常に優秀な数字です。
「現金吐き出したらもっとROE上がるし、吐き出さない状態でも十分高いから、あんまり投資家が強く言えない状態だね」
潤沢な資金を持ちながら、それを金融市場での運用益に頼るのではなく、あくまで本業の事業活動でしっかりと利益(第3四半期累計で営業利益1573億円)を生み出している。この「実業の強さ」が、バンダイナムコの財務の美しさを際立たせていると泉田氏は分析しています。
【動画】なぜバンダイナムコは強い?元機関投資家が業績好調の理由を解説
著者
金融・経済YouTubeチャンネル「イズミダイズム」
「イズミダイズム」は、株式会社モニクルリサーチが運営する金融・経済YouTubeチャンネルです。フィデリティ投信や日本生命でポートフォリオマネージャーや証券アナリストとしての勤務経験のある元機関投資家の泉田良輔が、プロの視点で金融や経済に関する様々なニュースの解説や、資産形成に役立つトピックをお届けします。新NISAの開始やインフレを背景に、個人の資産運用への関心が高まる中、機関投資家と個人投資家の「視点の違い」や、経済ニュースの裏側にある「構造」をロジカルに解説します。(最新更新日:2026年1月30日)
監修者
株式会社モニクルリサーチ
代表取締役/日本証券アナリスト協会認定アナリスト(CMA)
株式会社モニクルリサーチ代表取締役。その他に株式会社モニクル取締役COO、株式会社モニクルフィナンシャル取締役COOも務める。LIMO&ファイナンス編集長。東京科学大学大学院非常勤講師。日本証券アナリスト協会認定アナリスト(CMA)。慶應義塾大学大学院システムデザイン・マネジメント研究科修了(同研究科最優秀賞受賞)
1. 経歴
2013年に株式会社ナビゲータープラットフォーム(現:株式会社モニクルリサーチ)を原田慎司(現同社取締役)らとともに共同創業。2013年に個人投資家向け金融経済メディア「Longine(ロンジン)」を立ち上げ、編集長に就任。Longineの立ち上げの経緯はBloombergにおいて「体力勝負アナリスト辞めます、元外資マン個人に長期投資指南」として掲載され大きな反響を呼ぶ。投資情報のサブスクモデルを確立する。その後、株初心者向けネットメディア「株1」、2015年にはくらしとお金の経済メディア「LIMO」の前身となる「投信1」を立ち上げる。2026年6月に専門家と実務家が情報発信をする金融経済ニュースサイト「LIMO&ファイナンス」を立ち上げ編集長に就任。
それ以前は、日本生命・国際投資部で外国株式ファンドマネージャー、フィデリティ投信・調査部や運用部にて10年に渡ってインターネット、電機(半導体・民生・産業エレクトロニクス)、機械(ロボットやセンサー企業中心)といったテクノロジーセクターの証券アナリストや中小型株ファンドのアシスタント・ポートフォリオ・マネージャー(最年少で就任)として従事。
2. 専門・研究領域
慶応義塾大学商学部卒業。国際金融及びコーポレート・ガバナンスを専攻。アジア通貨危機、昭和金融恐慌などの金融パニックのメカニズムを金融政策や金融機関への規制の観点から研究。それらの内容は「昭和金融恐慌からの教訓 平成恐慌になにをどう生かすべきか」(三田商学研究学生論文集)として発表。
3. 著書
・『機関投資家だけが知っている「予想」のいらない株式投資』(ダイヤモンド社)
・『テクノロジーがすべてを塗り変える産業地図』(クロスメディア・パブリッシング)
・『銀行はこれからどうなるのか』(クロスメディア・パブリッシング)
・『Google vs トヨタ 「自動運転車」は始まりにすぎない』(KADOKAWA)
・『日本の電機産業 何が勝敗を分けるのか』(日本経済新聞出版社)
4. 寄稿や講演他
「日経BizGate」での連載「泉田良輔の新・産業鳥瞰図」や「現代ビジネス」、「東洋経済オンライン」、「プレジデント」などへの寄稿や対談も多数。対談記事例としては「【未来予想】ブロックチェーン革命が、「半沢直樹」の世界に終わりを告げる」や「【未来予想】アマゾンとビットコインが、次世代の「銀行」になる理由」(いずれもNewsPicks)、「米独に遅れる日本の自動運転、自動車も電機の二の舞に?」(週刊ダイヤモンド)。海外ジャーナリストからインタビューされることも多く、Financial TimesやThe Economist、Bloombergにおいて自動車や金融業界についての国内外産業動向コメントも発信している。
講演会や動画での情報発信も盛んに行っており、NewsPicksのTHE UPDATE、日経ビジネススクール、慶應丸の内キャンパス、慶應義塾SDM、アカデミーヒルズなどでも講義を行う。またNewsPicksのNewSchoolではプロジェクトリーダーとして「本当に初心者のための資産運用」を開催。
最終更新日:2026年6月26日