桜のつぼみも膨らみ始め、新しい年度を前に「これからの人生」をふと考える季節ですね。最近よく耳にする《終活》という言葉ですが、どのようなイメージがありますか。定年後の自由時間は現役時代の労働時間を遥かに凌ぐ「11万時間」もあります。この膨大な時間を自分らしく活き生きと過ごすために今回は令和の終活事情について解説します。
1. 《終活》の重要性。セカンドライフは「11万時間」の超ロングステージ
令和6年簡易生命表によると、65歳の平均余命は男性が19.47年、女性が24.38年。仮に定年後の22年間、1日14時間を自由時間とすると、その合計は11万2420時間に達します。
これは現役時代の総労働時間(約8万6000時間)を大きく上回る膨大な時間です。この時間を過ごすか、現代の終活の核となっています。
1.1 高齢者世帯の約65%が「ひとり」または「夫婦のみ」
厚生労働省「2024(令和6)年国民生活基礎調査の概況」によると、65歳以上の高齢者がいる世帯は全国で2760万4000世帯に上りますが、その内訳に現代の特徴が表れています。
- 一人暮らし(単独世帯):32.7%(903万1000世帯)
- 夫婦のみの世帯:31.8%(878万6000世帯)
この2つを合わせると、全体の約64.5%が子世代と離れ、自立して暮らしています。かつての三世代同居は少数派となり、もしもの時に「誰が気づき、誰が動くか」をあらかじめ決めておく必要性が高まっています。
2. 《終活》はネガティブ?世代で異なる「捉え方の温度差」
2025年7月18日にNPO法人ら・し・さ(終活アドバイザー協会)が公表した報告書「第2回終活意識全国調査」は、20歳〜89歳の男女を対象に全国で実施されたインターネットでの「終活」に関する意識調査です。
最近では「終活」という言葉が当たり前になりましたが、実は世代によってその捉え方には大きな「温度差」があるようです。
全体(男女・全年齢層)の割合
- 葬式や墓など「亡くなった後」のための準備:77.7%
- 人生の後半期を「生き生きと過ごす」ための準備:18.7%
- その他:1.3%
- わからない:2.3%
依然として約8割の人が「死」に関連するネガティブ、あるいは義務的な準備というイメージを持っています。この心理的なハードルが、「まだ先のこと」と先延ばしにしてしまう要因の一つかもしれません。
2.1 「死後の準備」から「人生を生き生きと過ごすための戦略」へ
しかし、注目すべきは「世代による意識の変化」です。データでは、年齢を重ねるほど「人生の後半期を生き生きと過ごすための準備」と捉えるポジティブな層の割合が高まる傾向にあります。
これは、実際にセカンドライフという「11万時間の自由時間」に直面する世代ほど、終活を単なる片付けではなく、「残りの人生を自分らしく、不安なく使い切るためのポジティブな戦略」であると本質的に理解しているからだと言えるでしょう。
3. 《終活》を支える。家族で共有「最新版《終活》確認リスト」と自治体支援
離れて暮らしていると、親の日常は意外と見えないものです。万が一に備え、以下の4点は「今のうち」にさりげなく共有しておきましょう。
①通院・服薬と「マイナ保険証」の状況
既往症やかかりつけ医の把握に加え、マイナ保険証の保管場所や暗証番号が確認できていると救急搬送時もスムーズです。
②貴重品とデジタル資産の管理場所
通帳や証書だけでなく、スマホで完結するネット銀行などの「目に見えない資産」も、元気なうちに所在を明確にしておきましょう。
③「もしも」の時に連絡してほしい人のリスト
親の交友関係は子には見えにくいため、本人の意向を尊重しながら、優先的に連絡すべき相手をリストアップしてもらいましょう。
④サブスクや継続利用サービスの把握
新聞や宅配、動画配信などの自動引き落とし契約を整理しておくことで、将来の解約漏れや無駄な支払いを防げます。
3.1 自治体の「終活支援」も強力なパートナーに
最近では、兵庫県高砂市のように葬儀や納骨の事前契約を市が支援したり、神奈川県横須賀市のように終活情報を市に登録して医療機関と共有できる制度を持つ自治体が増えています。
自分たちだけで抱え込まず、お住まいの地域の窓口でどのようなサポートがあるか一度確認してみるのがおすすめです。
4. まとめにかえて
今回は、最新の調査データをもとに、今をより良く生きるための「終活」について解説しました。終活は決して「人生の幕引き」を待つ作業ではありません。むしろ、これから訪れる11万時間という輝かしいセカンドライフを不安なく楽しむために必要な作業です。
高齢世帯の6割以上が少人数で暮らす今、早めの準備は、自分自身だけでなく離れて暮らす家族への「最高の思いやり」にもなります。「まだ早いかな?」と思う今こそが、実は最高の始めどきです。この春、これからの毎日をもっと活き生きと過ごすために、ご家族で明るく「未来の作戦会議」を始めてみてはいかがでしょうか。
参考資料
- 厚生労働省「令和6年 簡易生命表」
- 厚生労働省「2024(令和6)年国民生活基礎調査の概況」
- NPO法人ら・し・さ(終活アドバイザー協会)「第2回 終活意識全国調査 報告書(2024年調査・2025年公開)」
- 兵庫県高砂市「エンディングプラン・サポート事業」
- 神奈川県横須賀市「終活支援センター」
橋本 優理