3月は年度末を迎え、老後資金や資産状況を見直すきっかけとなる時期です。近年は物価上昇が続き、年金だけに頼る生活に不安を感じるシニア世帯も増えています。
調査によると、70歳代の二人以上世帯における金融資産は、3000万円以上が25.2%を占める一方、まったく資産を持たない世帯も10.9%存在します。
平均値は一部の高資産世帯に引き上げられるため、実態を把握するには中央値(1178万円台)を参考にすることが重要です。老後の安心を築くために、NISAとiDeCoをどう活用すべきかを解説します。
1. 「70歳代・二人以上世帯」の平均貯蓄額と中央値を確認
J-FLEC(金融経済教育推進機構)「家計の金融行動に関する世論調査 2025年」をもとに、70歳代の二人以上世帯における金融資産の保有状況を見ると、その分布には顕著なばらつきがあることがわかります。
※なお、これから確認する金融資産保有額には、預貯金以外に株式や投資信託、生命保険なども含まれます。また、日常的な出し入れ・引落しに備えている普通預金残高は含まれません。
- 金融資産非保有:10.9%
- 100万円未満:4.5%
- 100〜200万円未満:5.1%
- 200〜300万円未満:3.7%
- 300〜400万円未満:3.9%
- 400〜500万円未満:2.9%
- 500〜700万円未満:6.4%
- 700〜1000万円未満:6.7%
- 1000〜1500万円未満:11.1%
- 1500〜2000万円未満:6.7%
- 2000〜3000万円未満:12.3%
- 3000万円以上:25.2%
- 無回答:0.6%
70歳代の平均値は2416万円ですが、中央値は1178万円となりました。
注目したいのは、分布の両極です。3000万円以上を保有する世帯が25.2%と最大のグループを形成している一方で、金融資産を「まったく持っていない」世帯も10.9%存在しています。
上位と下位の合計だけで約36%を占めており、70歳代の資産状況が一律ではないことを端的に示しています。
自分の世帯が今どのグループに位置しているかを冷静に把握したうえで、残りの老後期間に向けた資産計画を見直すことが重要です。
資産額の「平均値」は、一部の高資産世帯によって押し上げられるため、実態よりも高く見える傾向があります。自分の位置を正確につかむには「中央値」を参考にするのが適切です。
同調査における70歳代二人以上世帯の中央値は1178万円であり、「平均値=自分の目標額」と誤解しないよう注意しましょう。
2. NISAとiDeCoで老後に備える
公的年金は老後の収入の柱ではあるものの、それだけで充実した生活を維持し続けるのには限界があります。毎月の基礎的な生活費は年金で賄い、旅行・趣味・交際といった「ゆとり費用」は別途確保した資産から充てることで、老後の安心感につながります。
その資産形成を後押しする制度として積極的に活用したいのが、NISAとiDeCoです。
2.1 長期・分散投資に適したNISAのメリット
NISAは、投資によって得た運用益が非課税となる制度です。2024年から刷新された新NISAでは「つみたて投資枠」と「成長投資枠」の2種類が用意されており、年間最大360万円まで投資できます。
最大の特徴は非課税保有期間が無期限である点で、時間をかけてじっくり資産を育てたい方に適しています。投資信託から個別株まで幅広い商品を選べるうえ、急な出費の際にいつでも売却・引き出しができる流動性の高さも強みです。
2.2 掛金控除と受取時の優遇が魅力のiDeCo
iDeCoは、自分で掛金を積み立て・運用する私的年金の仕組みです。税制上の優遇が三段階で受けられる点が魅力で、掛金の全額が所得控除の対象になり、運用中の利益が非課税です。
さらに、受取時にも退職所得控除または公的年金等控除が適用されます。
特に現役世代にとっては、毎年の所得税・住民税を軽減できる節税効果が大きく、長期で積み立てるほど恩恵が増します。
ただし、原則として60歳まで引き出しができない点は念頭に置いておく必要があります。生活費の予備資金とは切り離して、純粋な老後専用資金として位置づけましょう。
両制度の使い分けとしては、資金の柔軟性を重視するならNISA、節税効果を最大化しながら老後資金を着実に積み上げたいならiDeCoが向いています。
両方を組み合わせることで、税優遇の恩恵を二重に享受しながら、効率よく資産形成を進めることが可能です。
「今から始めても意味がない」と感じる方もいるかもしれませんが、50代からでも10年以上の運用期間を確保できます。特にNISAは短期間でも非課税メリットを享受でき、iDeCoは掛金の所得控除効果が退職まで毎年続きます。「老後まで時間がない」ではなく、「今できることを今始める」という発想の転換が重要です。
3. 70代の資産格差時代|中央値から考えるNISA・iDeCo活用の重要性
70歳代・二人以上世帯の貯蓄状況を見ると、3000万円以上の資産を持つ世帯が一定数存在する一方で、貯蓄ゼロの世帯も約1割いるなど、資産の二極化が進んでいます。
中央値が1100万円台にとどまることからも、多くの世帯が「平均ほどの余裕はない」現実が浮き彫りになっています。
今後の老後生活では、年金に加えて自助努力による資産形成がますます重要になります。
資産形成にはNISAとiDeCoの併用が効果的で、柔軟に引き出したいならNISA、節税しながら老後資金を積み上げたいならiDeCoが向いています。
「今からでは遅い」と感じる方も、50代からなら10年以上の運用期間を確保できます。まずは少額からでも始め、「今できることを今やる」行動が老後の安心につながります。
まず「ねんきんネット」や資産管理ツールを使って、自分の世帯が70歳代の分布のどこに位置するかを冷静に確認しましょう。
平均値ではなく中央値を基準に現状を把握することが第一歩です。
参考資料
柴田 充輝