後期高齢者医療制度は、75歳以上の人と、一定の障害があると認定された65~74歳の人が加入する公的医療保険で、75歳になるとそれまでの医療保険から自動的に切り替わる制度です。
2026年度(令和8年度)から、後期高齢者医療制度の保険料が引き上げられます。背景にあるのは、新たに導入される「子ども・子育て支援金」の加算です。すでに健康保険証の廃止やマイナ保険証への移行も進むなか、高齢世帯の家計や手続きにはどのような影響があるのでしょうか。本記事では、保険料の具体的な増加イメージとあわせて、制度変更のポイントをわかりやすく整理します。
1. 【後期高齢者医療】2026年度は保険料上限額「医療分+子育て支援分」いくらになる?
今回の改定で最も大きなトピックは、令和8年(2026年)4月から導入される「子ども・子育て支援金制度」です。
これは、社会全体で少子化対策を支えることを目的とした新しい仕組みです。これまで「医療費」として支払っていた後期高齢者医療保険料の中に、新たに「子ども・子育て支援納付金分」という項目が加わることになりました。
後期高齢者の方々も、現役世代とともに次世代を支える役割を担う形となり、これが実質的な「負担増」の主な要因となります。
1.1 「87万円超!」賦課限度額(保険料の上限)「2階建て」で大幅引き上げ
保険料の計算には、所得が高い方でも負担が際限なく増えないよう、年間の上限額である「賦課限度額」が設けられています。今回の改定では、この上限ラインも大幅に引き上げられます。
注目すべきは、上限額の構造が「医療分」と「支援金分」の2階建てに変わる点です。
- 現行(令和7年度まで):80万円
- 改定後(令和8年度から):合計87万1000円
→医療分の上限:85万円(5万円の引き上げ)
→子ども・子育て支援納付金分の上限:2万1000円(新設)
このように、医療費を賄うための「医療分」の上限そのものが5万円引き上げられた上に、さらに「子ども・子育て支援納付金分」が別枠で上乗せされる仕組みです。
所得の高い層にとっては、上限額が合計で7万1000円もアップすることになり、制度の枠組み自体がより重い負担を求める方向へ大きく動いています。
2. 【後期高齢者医療】具体的に保険料はいくら上がる?
では、実際の保険料はどの程度上がるのでしょうか。保険料は「全員一律の均等割」と「所得に応じた所得割」の合計で決まります。
2.1 平均的な保険料の増減額
東京都全体では、一人当たりの平均保険料は以下のように推移する見込みです。
- 令和6・7年度: 11万1356円
- 令和8・9年度: 12万7400円(+1万6044円の増)
2.2 年金収入別・年間保険料の負担増イメージ(試算)
東京都港区の試算例(公的年金収入のみの単身者で試算)を見てみましょう。ご自身の年金受給額に合わせて、令和8年度(2026年度)からの年間負担がどのように変化するかご確認ください。
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年金収入が153 万円(単身)の場合
現行(令和7年度):1万4100円→改定後(令和8年度〜):1万5200円
年間の増加額:1100円の負担増 -
年金収入が300万円(単身)の場合
現行(令和7年度):18万9400円 → 改定後(令和8年度〜):20万3600円
年間の増加額:1万4200円の負担増 -
年金収入が 600万円(単身)の場合
現行(令和7年度):43万2600円 → 改定後(令和8年度〜):45万8600円
年間の増加額:2万6000円の負担増
※上記の試算は、東京都港区における公的年金収入のみの単身世帯をモデルとした一例です 。所得控除の状況や、お住まいの自治体の軽減措置によって実際の金額は異なります。
3. 【後期高齢者医療】知っておきたい「給付」と「もしも」の時の知識
保険料の負担は増えますが、その分、医療費をサポートする給付制度も整っています。
3.1 後期高齢者医療の給付の中で主な内容
- 療養の給付:窓口で保険証(またはマイナ保険証)を提示すれば、1〜3割の自己負担で受診できます。
- 高額療養費:1ヶ月の自己負担が限度額を超えた場合、後から払い戻されます。
- 葬祭費:被保険者が亡くなった際、葬儀を行った方(喪主)に支給されます。
- 特別療養費:万が一、保険料の滞納などで「資格証明書」が交付された場合、窓口では一旦10割全額を支払う必要があります。その後、申請によって「特別療養費」として払い戻しを受ける形になります。
4. 【後期高齢者医療】資格確認書の暫定措置は2026年7月末まで
今回の記事では、2026年度から始まる後期高齢者医療制度の変更点と、それに伴う保険料アップの試算について解説しました。令和8年度(2026年度)からの後期高齢者医療制度は、新たに「子ども・子育て支援金」が加算されることで、多くの世帯で保険料が目に見えて上昇します 。家計への影響は無視できませんが、この負担は「次世代への贈りもの」として、子どもたちが安心して暮らせる社会づくりへダイレクトに繋がっています。
また、すでに従来の健康保険証は2025年7月末で有効期限を終えており、現在は「マイナ保険証」か、申請不要で無償交付された「資格確認書」のいずれかを使用して受診する仕組みに完全に移行しています。
この資格確認書が全加入者に申請不要で無償交付される暫定措置は、2026年7月末をもって終了する予定です。
そのため、2026年8月以降の運用については、今後自治体から届く案内を必ず確認し、継続して資格確認書が必要な場合の申請手順などを把握しておく必要があります。
【注意】「資格証明書」と「資格確認書」は別物です
よく似た名称ですが、マイナ保険証がない方に発行される「資格確認書」に対し、「資格証明書」は特別な事情なく保険料を滞納した際に交付されるものです。資格証明書の場合、窓口負担が一旦10割全額(後日申請で払い戻し)となるため、保険料の納付相談は早めに行うことが大切です。
参考資料
- 官報 第1630号「政令第四号 高齢者の医療の確保に関する法律施行令及び前期高齢者交付金及び後期高齢者医療の国庫負担金の算定等に関する政令の一部を改正する政令」
- 厚生労働省「後期高齢者医療の保険料の賦課限度額について」
- こども家庭庁「子ども・子育て支援金制度について」
- こども家庭庁「子ども・子育て支援金制度のQ&A」
- デジタル庁「8月以降順次切り替え!健康保険証の注意点は?(後期高齢者医療制度・国民健康保険の被保険者の方)」
- 政府広報オンライン「後期高齢者医療制度 医療費の窓口負担割合はどれくらい?」
- 東京都後期高齢者医療広域連合「保険料の決め方・賦課」
- 東京都後期高齢者医療広域連合「給付の内容」
- 東京都港区「令和8・9年度の後期高齢者医療制度保険料について」
村岸 理美