老後に一人暮らしをする場合、毎月どれくらいの生活費がかかるのでしょうか。総務省の家計調査では、65歳以上の単身無職世帯は月収約13万円に対し、支出は約16万円となり、平均で約3万円の赤字となる実態が示されています。春の足音が聞こえるこの季節、4月15日には年度最後の年金支給日も予定されています。

今回は統計データをもとに、シニア単身世帯の家計収支と2026年度の年金額の目安について解説します。

1. 「年金だけで暮らせる?」65歳以上単身世帯の家計は《月約3万円の赤字》

総務省統計局の「家計調査報告 家計収支編 2025年(令和7年)平均結果の概要」から、65歳以上の単身無職世帯のひと月の家計収支データを見ていきます。

1.1 65歳以上《単身》無職世帯ひと月の家計収支

毎月の実収入:13万1456円

■うち社会保障給付(主に年金):12万212円

毎月の支出:16万1435円

■うち消費支出:14万8445円

  • 食料:4万2545円
  • 住居:1万1416円
  • 光熱・水道:1万5565円
  • 家具・家事用品:6069円
  • 被服及び履物:3049円
  • 保健医療:8388円
  • 交通・通信:1万3601円
  • 教養娯楽:1万6132円
  • その他の消費支出:3万1681円
    • うち諸雑費:1万4052円
    • うち交際費:1万6956円
    • うち仕送り金:591円

■うち非消費支出:1万2990円

  • 直接税:7072円
  • 社会保険料:5912円

65歳以上《単身》無職世帯の家計は…

  • ひと月の赤字:2万9980円
  • エンゲル係数(消費支出に占める食料費の割合):28.6%
  • 平均消費性向(可処分所得に対する消費支出の割合):125.3%

老齢年金を受給して一人暮らしをするシニア世帯の家計は、どのような状況なのでしょうか。

この単身世帯のひと月の支出合計は16万1435円です。その内訳は、税金や社会保険料などの「非消費支出」が1万2990円、食費や住居費などの「消費支出」が14万8445円を占めます。

一方、ひと月の収入は13万1456円で、その約9割(12万212円)は主に公的年金です。

エンゲル係数は28.6%、平均消費性向は125.3%。結果的に、この単身世帯は毎月2万9980円の赤字を抱えています。

ただし、この家計収支データには注意すべき点があります。まず、支出に「介護費用」が含まれておらず、住居費も1万円台と低めです。健康状態や住居環境によっては、これらの費用がさらに上乗せされることも考慮する必要があるでしょう。

また、「非消費支出」が示す通り、老後の年金暮らしが始まっても、税金や社会保険料の支払いは生涯続きます。

多くのシニアがこれらの費用を年金から天引きで納めている現実も踏まえ、年金収入と日常生活費だけではなく、こうした、固定費も考慮した生活設計が大切となるでしょう。

2. 「国民年金の満額ついに7万円台に!」厚生年金も2.0%の引上げ!

現役時代の年金加入状況によって、老後の受給額は一人ひとり異なります。加えて、年金額は物価や現役世代の賃金動向を踏まえ、毎年改定がおこなわれます。

2026年度の年金額は前年度より国民年金(基礎年金)が1.9%、厚生年金(報酬比例部分)が2.0%引き上げられており、厚生労働省は以下の年金例を公表しています。

2.1 【2026年度】国民年金と厚生年金の年金額例

  • 国民年金(老齢基礎年金(満額):1人分):7万608円(+1308円)
  • 厚生年金(夫婦2人分):23万7279円(+4495円)

※昭和31年4月1日以前生まれの方の老齢基礎年金の満額は月額7万9408円(対前年度比+1300円)
※厚生年金は「男性の平均的な収入(平均標準報酬(賞与含む月額換算)45万5000円)」で40年間就業した場合に受け取り始める年金(老齢厚生年金と2人分の老齢基礎年金(満額))の給付水準

国民年金の年金保険料は全員一律ですが、厚生年金は会社員や公務員などが加入し、収入に応じた保険料を納めるため個人差が表れやすくなります。

3. 「みんなの年金額も気になる」男女5人の年金受給額の事例を見る!

働き方や生き方が多様化する今、「将来、自分はどのくらいの年金を受け取れるんだろう?」と気になっている人もいるでしょう。

厚生労働省は、今回の年金改定の発表と同時に、多様なライフコースに応じた年金額例も示しています。

ここでは、年金加入経歴を5つのパターン(男性2パターン、女性3パターン)に分類し、「2026年度に65歳になる人」を想定した年金額の概算が提示されています。

多様なライフコースに応じた年金額

出所:厚生労働省「令和8年度の年金額改定についてお知らせします」

3.1 パターン①:男性・厚生年金期間中心

年金月額:17万6793円

  • 平均厚生年金期間:39.8年
  • 平均収入:50万9000円※賞与含む月額換算。以下同じ。
  • 基礎年金:6万9951円
  • 厚生年金:10万6842円

3.2 パターン②:男性・国民年金(第1号被保険者)期間中心

年金月額:6万3513円

  • 平均厚生年金期間:7.6年
  • 平均収入:36万4000円
  • 基礎年金:4万8896円
  • 厚生年金:1万4617円

3.3 パターン③:女性・厚生年金期間中心

年金月額:13万4640円

  • 平均厚生年金期間:33.4年
  • 平均収入:35万6000円
  • 基礎年金:7万1881円
  • 厚生年金:6万2759円

3.4 パターン④:女性・国民年金(第1号被保険者)期間中心

年金月額:6万1771円

  • 平均厚生年金期間:6.5年
  • 平均収入:25万1000円
  • 基礎年金:5万3119円
  • 厚生年金:8652円

3.5 パターン⑤:女性・国民年金(第3号被保険者)期間中心

年金月額:7万8249円

  • 平均厚生年金期間:6.7年
  • 平均収入:26万3000円
  • 基礎年金:6万9016円
  • 厚生年金:9234円

上記のデータからは、厚生年金に長く加入し、かつ収入が高かった人ほど、老後の年金額は多くなる傾向があることが分かります。

現役時代に「国民年金の期間が中心だったか」「厚生年金の期間が中心だったか」により、老後の年金水準が大きく変わるわけですね。

働き盛りの現役世代にとって、いまの働き方や収入は、目前の家計だけではなく、遠い将来の年金額を左右する重要な要素となるのです。

4. まとめにかえて

今回は、65歳以上の単身無職世帯の家計収支と年金の目安について解説しました。調査結果では、月収約13万円に対して支出は約16万円となり、平均で約3万円の赤字となることが分かりました。収入の約9割が年金であることから、公的年金が生活の大きな柱になっていることも見えてきます。

また、現役時代の働き方や年金加入状況によって受給額が大きく変わる点も重要なポイントです。将来の生活を見据えて、自分の年金見込み額を確認しておくと安心です。あわせて、早い段階から貯蓄や支出の見直しを進めておくことも、安定した老後生活につながるでしょう。

参考資料

筒井 亮鳳