老後資金の柱となる退職金やiDeCo(個人型確定拠出年金)ですが、実は受け取るタイミング次第で手元に残る金額が大きく変わることをご存知でしょうか。2026年1月からは税制改正により、一時金の重複期間に関するルールが厳格化されるため、これまで以上に計画的な受取が求められます。

今回は、税負担を賢く抑えるために知っておきたい「退職所得控除」の仕組みと、注意すべき期間のルールについて詳しく解説します。

1. 【退職所得控除】勤続30年なら1500万円まで非課税!長く働くほど「お得」な仕組み

退職金にかかる税金は、他の所得と分離して計算されるため優遇されていますが、その鍵を握るのが「退職所得控除」です。これは、受け取った退職金から一定額を差し引ける非課税枠のようなもので、以下の式で計算されます。

退職所得控除額の計算の表1/2

退職所得控除額の計算の表

出所:国税庁「No.2732 退職手当等に対する源泉徴収」

1.1 勤続年数が20年以下の場合

40万円 × 勤続年数(最低80万円)

1.2 勤続年数が20年を超える場合

800万円 + 70万円 × (勤続年数 - 20年)

30年勤務した人であれば、受け取る退職金のうち1500万円分までは非課税枠(退職所得控除)として差し引くことが可能です。この控除額を差し引いた後の残額が、さらに「2分の1」にされた上で課税対象となります。

受け取る退職金からこの控除額を差し引いた残りの金額に対して課税されるため、長年勤務した人ほど控除枠が大きくなり有利になります。しかし、受取額が高額になるほど、この控除枠をいかに有効活用できるかが手取り額を大きく左右します。

2. 【退職所得控除】勤続30年で退職金2500万円の場合、「税額」はいくら?

退職金は他の所得と分離して計算され、勤続年数が長いほど「退職所得控除(非課税枠)」が大きくなるため有利です。

所得税及び復興特別所得税の源泉徴収税額の計算方法(令和7年分)2/2

所得税及び復興特別所得税の源泉徴収税額の計算方法(令和7年分)

出所:国税庁「退職金と税」

2.1 【計算例:勤続30年で退職金2500万円の場合】

ステップ1:控除額を引く

30年勤務の控除額は 800万円+70万円×(30年−20年)=1500万円 です。

2500万円−1500万円=1000万円 が残ります。

ステップ2:残った金額を「2分の1」にする

残った金額をさらに半分にする強力な優遇措置があります。1000万円×1/2=500万円 (これが課税対象額です)

ステップ3:税率をかけて「税額」を出す

500万円に所得税率(20%)を適用し、復興特別所得税を加えると源泉徴収税額は 58万4522円 となります。

所得税に加えて住民税も差し引かれますが、今回の計算例(退職金2500万円・勤続30年)の場合、別途約50万円が特別徴収される計算となります。実際の住民税額は、お住まいの地域や前年の所得状況等によっても変動するため、あくまで一つの目安として捉えておきましょう。

3. 【退職所得控除】2026年1月の改正で激変!「新10年ルール」と「19年ルール」とは?

iDeCoや企業型DCを一時金で先に受け取り、その後に会社の退職金を受け取る場合、かつては「5年」の間隔を空ければ、それぞれで退職所得控除を最大限に活用できました。

しかし、2026年1月より税制ルールが改正され、現在は「10年ルール」が適用されています。 2026年に入ってから一時金を受け取る方は、iDeCo等の受取から「10年以内」に退職金を受け取ると、重複期間の控除額が減額調整される対象となります。

かつての「5年」という感覚で計画を立てていた方は、今一度ご自身の受取スケジュールを見直し、控除額が削られないか確認することが極めて重要です。

3.1 「19年ルール」退職金が先なら20年待機?再利用ルールに要注意

先に会社の退職金を受け取り、後からiDeCo等を一時金で受け取る場合には、「19年ルール(受取年とその前19年以内の合計20年間を合算対象とする仕組み)」が適用されます。

このルールがあるため、先に受け取った退職金から「20年以上」の間隔を空けない限り、後から受け取るiDeCo側で退職所得控除を再利用することができません。今回の改正後もこの順序による年数の違いは残るため、特に退職金先行の方は注意が必要です。

4. 【退職所得控除】有利な受け取り計画のために早めの確認を

2026年からの新ルールでは、iDeCo先行時の間隔が「5年から10年」へ延び、受取タイミングの重要性が増します。まずは自身の勤続年数から控除額を把握し、一時金と年金形式の組み合わせも含めてシミュレーションしておきましょう。

制度を正しく理解し、必要に応じて専門家に相談しながら、最も手取りが多くなる受取計画を立ててください。

参考資料

村岸 理美