4. 「自分ごと」として考える、本当に必要な老後資金の総額
ここまで算出した「夫婦世帯で約1226万円」「単身世帯で約1001万円」という金額は、かつての「2000万円問題」と同様に、あくまで平均的なモデル世帯を基にした目安です。
実際に必要となる老後資金は、居住形態、家族構成、働き方、ライフスタイルなど、個々の状況によって大きく変動します。
また、これらの試算は、通院費や薬代といった日常的な医療費は含んでいますが、高額な入院・手術費用や介護費用など、老後の家計を大きく圧迫する可能性のある特別な支出は含まれていない点に注意が必要です。
4.1 見落とせない「介護費用」という大きな支出
公的年金や健康保険制度があっても、老後の生活における大きな不安要素となるのが介護費用です。
公益財団法人 生命保険文化センターが公表した「2024(令和6)年度 生命保険に関する全国実態調査」によると、介護を経験した世帯が実際に要した費用の平均は以下のようになっています。
- 一時費用(住宅改修など):平均47万円
- 月額介護費用:平均9万円
- 平均介護期間:55カ月(4年7月)
これらのデータから、1人あたりの介護費用の総額を計算すると、約540万円(47万円+9万円× 55カ月)に上ります。
4.2 生活費+介護費+予備資金で再計算、2000万円は現実的な目標か?
先ほど算出した夫婦世帯の生活費不足分(約1226万円)に、夫婦どちらか一方の介護費用(約540万円)を加えると、合計は約1766万円です。
さらに、自宅の修繕や家電の買い替え、冠婚葬祭といった突発的な出費に備えるための緊急予備資金として、年間10万円を30年間、合計300万円確保すると仮定します。
- 合計必要資金:
1766万円(生活費・介護費)+ 300万円(緊急予備資金など)= 2066万円
この試算結果を見ると、「2000万円」という金額は、決して贅沢な暮らしを想定したものではなく、介護リスクや予期せぬ出費までを考慮した、現実的な目標額の一つと言えるのではないでしょうか。