新年度のスタートが近づき、家計の見直しや将来の備えを意識する方が増える時期になりました。
物価上昇や社会保険料の負担増が続くなか、国の調査や金融機関のデータからは、現役世代・シニア世代ともに家計の実態が大きく変化していることが読み取れます。
とりわけ、40〜50歳代では貯蓄額の差が広がり、老後を迎える65歳以上の世帯では毎月の生活費にゆとりがないケースも目立ちます。
一方で、こうした状況を踏まえ、政府もNISA(少額投資非課税制度)の拡充など資産形成を後押しする制度整備を進めています。
本記事では、最新データから現役期〜老後の家計の実態をまとめ、これから備えるためのヒントをわかりやすく紹介します。
自分の家計を見つめ直し、将来に向けてできる準備を考えるきっかけとしてご活用ください。
1. 【40歳代~70歳代】平均貯蓄額はいくら?
まずは、J-FLEC(金融経済教育推進機構)「家計の金融行動に関する世論調査 2025年」から、40歳代~70歳代の金融資産保有額(金融資産を保有していない世帯を含む)を見てみましょう。
1.1 40歳代~70歳代「二人以上世帯」の貯蓄事情|平均値と中央値から見える実態
- 40歳代:平均値1486万円、中央値500万円
- 50歳代:平均値1908万円、中央値700万円
- 60歳代:平均値2683万円、中央値1400万円
- 70歳代:平均値2416万円、中央値1178万円
平均値だけを見ると、どの年代も1000万円以上の貯蓄を確保し、老後も比較的安定して暮らせるように思えます。
しかし中央値を見ると、実際の資産水準はそこまで高くありません。
特に40~50歳代では、半数以上の世帯が1000万円に満たない金融資産で生活している可能性が高い点が不安材料です。
また、70歳代で中央値が減少していることは、老後の資金不足が現実化しつつあることを示唆します。
長寿化・医療費増・物価上昇をふまえると、貯蓄が十分とは言い切れません。
1.2 手取り収入からの貯蓄割合は何%?
続いて、同調査から「年間手取り収入を金融資産に振り分けた世帯の割合」と、「手取り収入のうちどの程度を貯蓄に回しているのか」を確認します。
「年間手取り収入を、金融資産に振り分けた世帯の割合」※金融資産保有世帯
- 20歳代:59.0%
- 30歳代:50.2%
- 40歳代:46.0%
- 50歳代:41.9%
- 60歳代:33.0%
- 70歳代:24.0%
「年間の手取り収入のうち、35%以上を貯蓄に回している割合」※金融資産保有世帯
年間手取り収入を金融資産に振り分けた20歳代~70歳代の世帯において、手取り収入のうち35%以上を貯蓄に回している割合がもっとも多くなっています。
- 20歳代:34.3%
- 30歳代:23.0%
- 40歳代:20.7%
- 50歳代:15.8%
- 60歳代:9.3%
- 70歳代:8.1%
調査結果によると、40~50歳代の現役世代では、手取り収入の一部を貯蓄に回した世帯は半数に届いていません。
教育費・住宅ローン・生活費などの負担が重なり、思うように貯蓄まで手が回らない家庭が多いことがうかがえます。
一方、60歳代以降は収入源が年金中心となるため、貯蓄に回せる割合がさらに低下する傾向が見受けられます。
現役時代に比べて収入が減るうえ、医療費や生活費の負担がむしろ増えやすく、貯蓄に余裕を持たせるのが難しくなっているためです。
では、65歳以上のシニア世帯では、どのくらいの生活費が必要になるのでしょうか。
2. 【65歳以上・無職夫婦世帯】「1カ月の平均生活費」はいくら?内訳もチェック!
総務省統計局の「家計調査報告〔家計収支編〕2024年(令和6年)平均結果の概要」によると、65歳以上・無職世帯の家計収支は以下のようになっています。
2.1 65歳以上・無職夫婦世帯「1カ月の平均的な家計収支」
- 実収入:25万2818円
- 消費支出:25万6521円
- 非消費支出:3万356円
- 不足分:3万4058円
2.2 支出の内訳
- 食料:7万6352円
- 住居:1万6432円
- 光熱・水道:2万1919円
- 家具・家事用品:1万2265円
- 被服及び履物:5590円
- 保健医療:1万8383円
- 交通・通信:2万7768円
- 教育:0円
- 教養娯楽:2万5377円
- その他の消費支出:5万2433円
- 非消費支出:3万356円
65歳以上の無職世帯では、生活費にあたる消費支出が25万6521円、税金や社会保険料などを含む非消費支出が3万356円となっています。
つまり、支出の合計は28万6877円に達し、実収入(25万2818円)との差で月平均約3万円の赤字が発生している状況です。
この不足分は、多くの世帯が貯蓄や退職金などの金融資産を取り崩すことで補っているのが実情です。ただし、長寿化が進む現在では、老後期間が20年、30年に及ぶケースも珍しくありません。
そのため、単純に毎月3万円を取り崩す生活が続くとすれば、30年間で約1080万円が必要となり、十分な備えがなければ老後資金が底をつくリスクもあります。
現役世代でも家計余力が大きく分かれているところを見ると、「積み立てができるかどうか」で将来の資産差が広がっていく段階にあると言えるでしょう。
3. 早めの準備がカギ!NISAを活用した積立投資のメリットとは?
老後に向けた資産づくりでは、「いつ始めるか」が大きな差を生みます。
特にNISAは、長期の積立投資と非常に相性が良く、早く始めるほど時間を味方につけやすい制度です。
ここでは、NISAを活用した積立投資の主なメリットを解説します。
3.1 非課税で運用できるため、資産が育ちやすい
通常、株式や投資信託の運用益には20.315%の税金がかかりますが、NISAでは利益が非課税になります。
長期にわたり積み立てる場合、税負担の有無は最終的な資産額に大きく影響します。
税金を気にせず資産を育てられる点は、NISA最大のメリットといえるでしょう。
3.2 少額から無理なく始められる
NISAは毎月数百円~数千円ずつでも積み立て可能です。
大きな元手がなくても始められるため、「まずは少額でスタートし、余裕が出たら増やす」といった柔軟な運用ができます。
特に長期投資では、金額より「継続」が成果を左右します。
3.3 時間を味方につけることで、複利効果を活かせる
積立投資は、運用益が再び利益を生む「複利」の力を活かしやすい仕組みです。
複利は期間が長いほど効果が大きくなるため、できるだけ早い段階で始めるほど有利になります。
20年、30年と積み立てを続けることで、元本以上の成長を期待しやすくなります。
3.4 価格変動リスクを平準化しやすい
積立投資では、相場が高いときは少なく、安いときは多く買う仕組みになるため、購入単価が平均化されます。
タイミングを見極める必要がなく、投資初心者でも続けやすいのが特徴です。
3.5 金融庁が基準を定めた商品が中心で安心感がある
「つみたて投資枠」では、金融庁が「長期・積立・分散投資」に適した投資信託を選別しています。
信託報酬等の運用コストが低く、長期運用向けの商品が中心のため、着実に資産形成を進めやすい点も魅力です。
4. 50歳から65歳まで「毎月5万円」を積立投資した場合のシミュレーション【利回り別】
積立投資のイメージが湧きやすいよう、50歳から65歳までの15年間、毎月5万円を積み立てたケースを利回り別(1~5%)にシミュレーションしてみました。
老後に向けた準備期間が短くても、積立投資の継続がどの程度の資産形成につながるのか確認してみましょう。
※本シミュレーションは、実際の運用結果を保証するものではありません。
4.1 【運用利回り1~5%】積立投資シミュレーション
- 利回り1%の場合:970万円
- 利回り2%の場合:1047万円
- 利回り3%の場合:1131万円
- 利回り4%の場合:1223万円
- 利回り5%の場合:1324万円
※うち投資元本900万円
利回りが1%違うだけでも、15年後の資産額に大きな差が生じています。
その理由は、前述のとおり長期間にわたる「複利」の効果によるものです。
特に利回り3〜5%のケースでは、元本900万円に対し200〜400万円以上の利益が上乗せされており、積立投資のメリットがよく表れています。
一方で、利回りが高くなるほど値動きの幅が大きくなり、元本割れのリスクも高まる点には注意が必要です。
自分の年齢・資産状況・リスク許容度をふまえ、無理のない範囲で投資計画を立てることが大切です。
5. まとめ
40歳代・50歳代の貯蓄状況を見ると、平均値と中央値の差が大きく、現役世代の間で資産格差が広がっていることが分かります。
さらに、65歳以上の無職夫婦世帯では平均で毎月約3万円の赤字が続いており、老後も安定した生活を維持するには、現役期からの準備が不可欠です。
とりわけ、老後の資金不足は長寿化の進展により深刻化しやすく、30年間で1000万円超を取り崩す可能性もあります。
こうした背景から、働いている今こそ「どれだけ備えられるか」が将来の安心につながります。
老後の不安を減らすためにも、まずは現状を知り、NISAを活用した資産形成も視野に入れて準備を始めていきましょう。



