2. 65歳以上・二人以上無職世帯の平均貯蓄額と資産構成
次に、総務省の「家計調査報告(貯蓄・負債編)-2024年(令和6年)平均結果の概要-」を参考に、65歳以上の無職世帯(二人以上の世帯)が保有する貯蓄の平均額を見ていきます。
2019年から2024年にかけての推移と、資産の内訳に注目してみましょう。
2.1 貯蓄額の推移:2019年からの変化
総務省「家計調査報告(貯蓄・負債編)-2024年(令和6年)平均結果の概要-」によると、2024年時点での「世帯主が65歳以上の無職世帯」における平均貯蓄額は2560万円でした。
2019年からの5年間の推移は以下の通りです。
- 2019年:2218万円
- 2020年:2292万円
- 2021年:2342万円
- 2022年:2359万円
- 2023年:2504万円
- 2024年:2560万円
世帯主が65歳以上の無職世帯では、貯蓄額がこの5年間で300万円以上増加していることがわかります。次に、その資産構成の変化も見ていきましょう。
2.2 資産内訳の変化:2019年と2024年の比較
65歳以上の無職世帯(二人以上世帯)について、資産の内訳を2019年と2024年で比較します。
通貨性預貯金(普通預金など)
- 金額:+258万円(543万円→801万円)
定期性預貯金
※定額貯金、積立貯金、定期預金、定期積金など
- 金額:▲82万円(941万円→859万円)
生命保険など
※積立型の生命保険や損害保険、各種共済、簡易保険などが含まれます。掛け捨ての生命保険は対象外です。
- 金額:+25万円(369万円→394万円)
有価証券(株式など)
- 金額:+144万円(357万円→501万円)
金融機関外の預貯金
※社内預金や勤め先の共済組合への預金など
- 金額:▲2万円(8万円→6万円)
貯蓄総額の変動
- 金額:+342万円(2218万円→2560万円)
資産構成の変化からは、2つの大きなトレンドが見て取れます。
一つ目は「お金を預ける場所」の変化です。いつでも引き出せる「通貨性預貯金」が大幅に増加した一方で、「定期性預貯金」は減少しました。これは、超低金利が続く中で資産を固定するメリットが薄れ、流動性を重視する傾向が強まったためと考えられます。
二つ目は「貯蓄から投資へ」という大きな流れです。「有価証券」が4割以上も増えていることから、インフレへの備えや資産寿命を延ばす目的で、リスクを取りながらも積極的な資産運用を始めるシニア層が増えていることがうかがえます。
安全性の高い預貯金を確保しつつ、一部を投資に振り分けるなど、老後資産の管理において、単に「貯める」だけでなく「賢く育てて活用する」という視点が広がっているのかもしれません。
ただし、これらのデータはあくまで平均値です。実際の貯蓄状況は、退職金の有無や相続、家族の健康状態といった様々な要因によって大きく変わります。
現役時代の収入や貯蓄額に個人差があるように、老後の資産や年金額も人それぞれ異なるのが現実です。
